📝 この記事のポイント
- 電車で隣に座った人の香水が強烈で、途中下車して車両を変えた。
- ジャスミン? いや、もっと重い、なんだろう、動物園の夜みたいな、いや違うな、もっとこう、真夏の海岸で熟れすぎたマンゴーが落ちて腐敗してるような、いや、それはそれで匂いとしては嫌いじゃないんだけども、とにかく頭痛がするレベルのパンチ力。
- あれはきっと、その人の存在感を十二分にアピールするための、ある種の武器なんだろうな。
電車で隣に座った人の香水が強烈で、途中下車して車両を変えた。
あれ、なんだったんだろう、あの匂い。
ジャスミン?
いや、もっと重い、なんだろう、動物園の夜みたいな、いや違うな、もっとこう、真夏の海岸で熟れすぎたマンゴーが落ちて腐敗してるような、いや、それはそれで匂いとしては嫌いじゃないんだけども、とにかく頭痛がするレベルのパンチ力。
あれはきっと、その人の存在感を十二分にアピールするための、ある種の武器なんだろうな。
まあ、僕みたいな単身赴任のおじさんには縁のない話だけど。
そもそも僕は、週末に家族に会う時以外は、自分の存在感を意識することなんて、そうそうない。
せいぜい、スーパーのレジで小銭が足りなくて「あ、千円札で」って言う時くらいか。
あの瞬間の「申し訳ない」という感情は、もうちょっと何とかならないものか。
事前に小銭を確認すれば済む話なんだけど、ついね。
そんな僕が、先日、休憩時間に何とはなしに古いパソコンの画面を眺めていた時のこと。
最近、どうにも気分が乗らなくて、週末に帰省しても、息子が持ってくるゲームのキャラを「ああ、また新しいの増えたね」と適当に相槌を打つだけで、いまいち会話が弾まないんだよね。
昔は、息子が描いたポケモンの絵に「お、この技はなんだ?
」とか、もっと前のめりで話してた気がするんだけど、最近はすっかり枯れてしまったというか。
いや、枯れるというのもちょっと違うな。
なんか、こう、新しいことへの好奇心が、加齢とともに、カピカピに乾燥したミカンの皮みたいになって、ポロポロと剥がれ落ちていく感覚?
で、そんな状態を少しでも改善できないかと、何の脈絡もなく「日本の伝統文化 かっこいい」なんて、小学生みたいなキーワードで検索してみたんだ。
そしたら、まあ、色々な流派の武術とか、能とか狂言とか、茶道とか出てくるわけだけど、その中で目を引いたのが「天心流兵法」という古武術の動画だった。
いや、もうね、動きが美しいのなんの。
刀を構える姿勢、流れるような体捌き、一切の無駄がない。
僕は昔から時代劇が好きで、特に殺陣のシーンなんかは、一時停止しては「おお、この構え、理にかなってる!
」とか、一人でブツブツ言ってるような人間だったから、もうね、画面に釘付け。
しかも、その天心流の公式アカウントが、なんでも「絵の参考にどうぞ」と、動きの途中のコマを切り取った画像を何枚も投稿しているらしいじゃないか。
しかも、ちゃんと「トレースもご自由に」とまで書いてある。
これには驚いたね。
普通、ああいう伝統芸能とか武術って、門外不出とか、技の盗用はご法度みたいな、ちょっと閉鎖的なイメージがあったからさ。
それがですよ、現代の絵描きさんたちのために、わざわざ「どうぞ、使ってください」って。
こういう懐の深さ、いいよね。
僕は絵描きじゃないけど、これは素晴らしいことだと思ったんだ。
だって、アニメや漫画で剣術のシーンを描く人たちって、実際に刀を振った経験なんて、ほとんどないだろうから。
想像だけで描くと、どうしても動きに不自然さが出たり、説得力に欠けたりする。
そこに、本物の動きを参考にした画像が提供されるわけだから、そりゃあ絵描きさんたちも大喜びだろうよ。
Twitter(いや、今はXか。
どうも慣れないんだよね、あの呼び方。
昔ながらの「ついったー」って言っちゃう)なんかでも、「これは神!
」とか「構図の勉強になる!
」みたいな声が多数上がってるのを見て、なんか僕まで嬉しくなっちゃった。
で、その古武術の動画を何度か見返しているうちに、もう一つ気になったことがあったんだ。
そう、写真の中にいる、和装の海外イケオジのこと。
これがまた、めちゃくちゃ絵になるんだよね。
刀を構える姿も様になっているし、何より顔立ちが凛々しい。
日本人じゃない人が、日本の伝統的な武術を真剣に修めている姿って、なんでこんなに魅力的なんだろうね。
僕なんか、近所のスーパーで売ってる半額の唐揚げを買いに行くのに、ちょっといい和風の柄の甚平を着て行ったら、それだけで浮いちゃいそうだよ。
いや、甚平はダメか。
夏祭り限定だよな、やっぱり。
思えば、僕も若い頃、空手道場に一年くらい通ったことがあったっけ。
いや、通ったというよりは、体験入門を繰り返して、結局道着を買う前に辞めちゃったんだけど。
あの頃は、もっとこう、肉体的な強さとか、精神的な鍛錬とか、そういうものに漠然とした憧れがあったんだよね。
でも、いざ道場に行ってみると、先輩たちの気迫に圧倒されて、なんかもう、僕のガラスのハートでは耐えられないな、と。
しかも、稽古中に変な音でお腹が鳴ったらどうしよう、とか、そういうくだらないことばかり考えてしまって。
結局、僕の武道経験は、ファミコンの「ストリートファイターII」でリュウを使いこなした、という一点に集約されるんだけど。
いや、あれは武道じゃないか。
ゲームだ。
話を戻すと、この和装の海外イケオジ、いったい何者なんだろう?
って、これもまた気になって調べてみたんだ。
そしたら、どうやら天心流兵法の海外支部で指導をしている方らしい。
すごいよね。
異国の地で、日本の伝統文化を教えるって。
しかも、見た目もこんなに格好いいんだから、生徒さんたちもモチベーション上がるだろうなあ。
僕ももし、週末に家族に会えない寂しさを紛らわせるために、何か新しいことを始めようとするなら、こういう人が教えてくれる道場があったら、ちょっとはやる気が出るかもしれない。
いや、でも、あの香水の件じゃないけど、僕、匂いに敏感だから、もし道場が汗臭かったら続かないかもなあ。
いや、武道だから汗臭いのは当然か。
僕のこだわり、なんかちょっとズレてるかもしれない。
でもさ、こうやって、普段だったら絶対に出会わないような世界に触れるのって、なんか面白いよね。
まさか、電車の香水強烈事件から、日本の古武術、そして和装の海外イケオジにまで思考が飛躍するとは、自分でも予想外だった。
こういう、日常の小さなきっかけから、芋づる式に色々な情報が繋がっていく感覚。
それが、僕にとってのささやかな冒険なんだろうな。
結局、僕は絵を描くわけでもないし、古武術を始めるわけでもないんだけど、この一連の出来事を通して、ちょっとだけ、世の中の新しい一面を覗けたような気がするんだ。
息子とのゲームの会話が弾まない原因も、もしかしたら僕が新しいものに触れていないからかもしれない、なんてね。
で、週末。
久しぶりに息子と話す機会があったから、「なあ、最近のゲームのキャラって、刀の動きとか、リアルなの?
」って聞いてみたんだ。
そしたら、息子はスマホをいじりながら「うん、最近はモーションキャプチャーとか使ってるから、結構リアルだよ」と一言。
なんだか、僕の感動した古武術の話とは、ちょっとズレた返事だったけど、まあ、そんなもんだよね。
結局、僕の生活は何も変わらない。
単身赴任の部屋で、また同じようにスーパーの半額惣菜を温めて食べる日々が続く。
でも、心なしか、その唐揚げが、ちょっとだけ古武術の動きのように、キレがあるように見えたんだ。
いや、見えなかったな。
いつも通りだった。
でも、それでいいんだ。
きっと。
💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。
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