京極ムロさんの「圧」に負けて、庭のトマトが赤くなる話

📝 この記事のポイント

  • 夜中にトイレに起きたら、廊下で猫と鉢合わせして両者固まった。
  • お互い「まさかこんなところで」とでも言いたげな顔で睨み合い、最終的に私が「あらあら」と声を出すまで、数秒間は彫刻のようだった。
  • うちの猫、ミケランジェロは、夜の闇に紛れて堂々とパトロールしているつもりなんだろうけど、真っ暗な中で光る目は、正直ちょっと怖い。

夜中にトイレに起きたら、廊下で猫と鉢合わせして両者固まった。

お互い「まさかこんなところで」とでも言いたげな顔で睨み合い、最終的に私が「あらあら」と声を出すまで、数秒間は彫刻のようだった。

うちの猫、ミケランジェロは、夜の闇に紛れて堂々とパトロールしているつもりなんだろうけど、真っ暗な中で光る目は、正直ちょっと怖い。

人間も猫も、誰にも見られたくない顔ってあるものね。

そんなドキドキの夜を過ごした翌日、私はNetflixで「九条の大罪」というドラマを観始めた。

ムロツヨシさん主演の弁護士ドラマで、評判が良いのは聞いていた。

ムロさんって、バラエティ番組でのあの親しみやすい笑顔や、コメディでのちょっと抜けた役柄の印象が強かったから、どんな弁護士を演じるんだろうと、期待半分、不安半分だったんだよね。

弁護士役って、知的なイメージとか、ちょっと冷徹な雰囲気とか、そういうのが求められがちじゃない?

私なんか、テレビドラマで弁護士が出てくると、つい「うちの向かいの小池さんちの息子さんも弁護士さんになったんだってねえ」なんて、全然関係ないことを考えちゃったりするのよ。

最初の数話は、まあ、よくある弁護士ドラマかな、なんて思って見ていた。

ムロさんも、いつものムロさんとはちょっと違うけど、そこまでガラッと印象が変わるわけでもないし、なんだかんだで正義のために頑張る弁護士なのかな、なんて、ちょっと甘く見ていたところがあったかもしれない。

人間、期待しすぎると、かえって肩透かしを食らうことだってあるものね。

日曜日の朝に、張り切ってパン屋さんまで歩いて行ったのに、目当てのクリームパンだけ売り切れてた、みたいな。

そんなちょっとした失望と似たような感覚で、なんとなく観続けていたの。

でもね、ある日、事件が起きたの。

ドラマも中盤に差し掛かった頃だったかな。

ムロさん演じる九条弁護士が、とある依頼人の前で、それまでとは全く違う表情を見せたのよ。

表情、というよりは、雰囲気かな。

全身から、とんでもない「圧」が放出されているのが、画面越しでもひしひしと伝わってくるの。

あの、なんていうか、普段のおちゃらけたムロツヨシさんの影が全くなくて、そこにいたのは、もう、「圧倒的【圧】の京極」とでも呼びたくなるような、不穏で、冷酷で、それでいて底知れない深淵を覗き込むような、そんな存在だったのよ。

私は思わず「ひええっ!

」って声が出ちゃって、座っていたソファから腰が浮いたもの。

本当にね、リアルに腰を抜かしたのよ。

これまで、ムロさんに対して持っていたイメージが、ガッシャーン!

と音を立てて崩れ去った瞬間だった。

期待していた「いつものムロさんの延長線上の演技」とは全く違うものが目の前に現れて、一瞬、本当に息をするのを忘れるくらいだった。

こういう「裏切られた!

」っていう感覚って、人生には時々あるけど、たいていは悪い意味で使われるじゃない?

スーパーで「今だけ!

半額!

」って書いてあるから飛びついたら、消費期限が今日までだったとかね。

でも、このムロさんの演技は、良い意味での裏切り。

とんでもなく良い裏切りだったの。

それからはもう、ムロツヨシさんを見る目が180度変わっちゃった。

あの人、こんな演技もできるんだ、こんな引き出しがあったんだって。

ドラマを観終わった後も、しばらくはその「圧」が頭から離れなくて、庭に出ても、ついムロさんの顔がちらつくのよ。

太陽の光を浴びて、ぐんぐん伸びるトマトの苗を見ながら、「このトマトも、ムロさんの『圧』に負けて、早く赤くなっちゃうんじゃないかしら」なんて、くだらないことを考えて、一人でニヤニヤしちゃった。

そういえば、近所の田中さんちの奥さんも、似たようなこと言ってたわね。

「ねえ奥さん、ムロツヨシさんって、あんなにすごかったのね!

私、今までコメディの人だと思ってたから、もうびっくりしちゃって!

」って、道で会うたびに熱弁を振るうのよ。

田中さんの奥さん、いつもは世間話で「今年の梅干し、どうだった?

」とか「あそこのスーパー、今日卵安かったわよ」みたいな話しかしないのに、ムロツヨシさんの話になると、急に饒舌になるから面白いわよね。

人間って、ある一点に関しては、急に熱くなったりするから、油断できないわ。

私もそうだけど。

こういう、それまでのイメージをひっくり返されるような出来事って、日常の中にも案外たくさんあるものだわね。

たとえば、うちの孫が、普段は「ばあば、これ何?

」とか「これどうするの?

」って、なんでもかんでも聞いてくる甘えん坊なのに、突然、難しい図鑑を抱えて、「ばあば、この恐竜の名前、知ってる?

」って、大人顔負けの知識をひけらかし始める時とか。

ああ、この子も、いつか私を驚かせるような、とんでもない大人になるのかしら、なんて思ったりするのよね。

庭の隅で、いつもはあまり目立たない雑草が、雨上がりの翌日に突然、背を伸ばして鮮やかな花を咲かせていたりするのも、それに近い感覚かもしれないわ。

まさか、あの目立たない草から、こんなに美しい色が出てくるなんて、って。

そういう予想外の美しさや、秘められた力に気づかされると、なんだか心が洗われるような気がするの。

結局のところ、人生って、そういう「期待を良い意味で裏切られる」瞬間が、最高に面白いのかもしれないわね。

もちろん、期待通りに事が進むのも安心感があって良いんだけど、時には、私たちの想像の遥か上をいくような出来事が起こるからこそ、毎日が新鮮で、飽きないんじゃないかしら。

ムロツヨシさんの「圧倒的【圧】」に腰を抜かした夜も、庭のトマトがぐんぐん育つのを見て、ふふっと笑ってしまう昼下がりも、すべてが私の日常を彩る、大切なワンシーンなのよね。

あの「九条の大罪」を観てから、うちの猫を見る目もちょっと変わったのよ。

夜中に廊下で鉢合わせした時だって、もしかしたら、あの子も私に、何か「圧倒的【圧】」を伝えようとしていたのかもしれないわ。

私が寝静まった後、真っ暗なリビングで、ひっそりと、でもとんでもない存在感を放ちながら、獲物を狙う獣のような目で、あのドラマのムロさんみたいに、ジッと獲物…じゃなかった、私の寝顔を見つめていたのかも。

そう考えると、夜中にトイレに起きるのも、ちょっとスリリングで悪くないわね。

人生、そんなもんよ。

何が飛び出すかわからないから、面白いんだもの。

今度、田中さんの奥さんに会ったら、「あのムロさんの演技って、うちの猫が夜中に見せる『圧倒的【圧】』に似てると思いませんか?

」って聞いてみようかしら。

きっと、「まあ奥さん、それ面白いわね!

」って、また盛り上がっちゃうに違いないわ。

近所付き合いって、そういう、ちょっとしたおかしな発見を共有するのも、楽しいものよね。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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