香水と住民票と私のどうでもいいこだわり

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📝 この記事のポイント

  • 電車で隣に座った人の香水が強烈で、途中下車して車両を変えた。
  • もうね、鼻腔を突き抜けるどころか、脳みそを直接鷲掴みにされるような香りの暴力ですよ。
  • 私、結構な鈍感力には自信がある方なんだけど、あれは無理だった。

電車で隣に座った人の香水が強烈で、途中下車して車両を変えた。

もうね、鼻腔を突き抜けるどころか、脳みそを直接鷲掴みにされるような香りの暴力ですよ。

あれはもはや凶器。

私、結構な鈍感力には自信がある方なんだけど、あれは無理だった。

乗り合わせたのが朝の通勤時間帯だったから、車両を変えるのも一苦労なんだよね。

ギューギュー詰めの車内で、すまん、すまん、と背中を丸めながら移動する自分の姿を想像すると、なんだか滑稽で、少しだけ哀れに思えたりもする。

なんでこんな目に、と心の中で呟きながら、ようやく空いているドアを見つけて別の車両へ。

ふう、と息を吐き出すと、そこはまだ人間らしい空気が流れていた。

この香水の件、実は以前にもあったんだ。

その時はそこまで強烈じゃなかったから耐え忍んだんだけど、降りてからもしばらく鼻の奥に香りがこびりついてて、なんか一日中、その人の存在を背後に感じているようで気持ち悪かった。

家に帰って、妻にその話をしたら「あんた、敏感すぎじゃない?

」って笑われたんだけど、いやいや、これは敏感とかそういうレベルの話じゃないでしょう、と。

あれは個人の好みの範疇を超えたテロですよ、テロ。

で、その時ふと思ったんだ。

もし、ストーカーとかに追いかけられて、こんな風に香水で存在を認識されたらどうするんだろう、って。

いや、別に私がストーカーに狙われるような特殊な人物なわけじゃないよ?

ただ、そういう想像が頭をよぎったんだ。

ほら、エッセイストって、どうでもいいことを深掘りするのが仕事みたいなもんでしょう?

いや、仕事って言うとちょっと語弊があるかな。

趣味?

生きがい?

まあ、どっちでもいいや。

で、この「ストーカーに追われる」という、ほとんどSFの世界のようなシチュエーションを考えてみたときに、まず思いついたのが「引っ越し」だよね。

住む場所を変える。

これはもう、物理的に距離を置くための基本中の基本。

でもさ、引っ越しって、めちゃくちゃお金がかかるじゃない?

敷金礼金、仲介手数料、引っ越し費用、新しい家具家電を揃える費用……。

考えるだけで目眩がする。

しかも、単身赴任中の身としては、今の住まいも期間限定というか、会社が手配してくれてる物件だったりするから、勝手にホイホイ引っ越すわけにもいかない。

いや、仮に自費で引っ越せたとしても、新しい住まいを探す時間、荷造りの手間、電気ガス水道の契約変更、ネット回線の移転手続き……。

ああ、もう想像するだけで疲れてきた。

さらに、職場も変えなきゃいけない場合もあるだろう。

これもまた大変だ。

転職活動って、履歴書書いて、職務経歴書を整えて、面接を受けて。

今の年でそれをやるとなると、もう気力体力ともにすり減っちゃうよね。

特に私みたいに、週末だけ家族の元に帰る単身赴任組だと、平日の生活圏と週末の生活圏が違うから、より一層大変だ。

会社に事情を話して異動させてもらうにしても、希望通りの部署に行けるとは限らないし、そもそも異動願いが通るかどうかも怪しい。

いや、ストーカー被害にあったから異動させてください、なんて言ったら、周りの目も気になるし、変な噂が立ったりするかもしれない。

ああ、もう嫌だ。

それで、ふと「住民票閲覧制限」という言葉を思い出したんだ。

テレビのニュースとかで耳にしたことがあった気がする。

確か、DV被害とかストーカー被害にあった人が、住民票を第三者から見られないようにする制度だったはず。

これはちょっと調べてみる価値があるかもしれない、と思ったんだ。

普段から、ちょっとした疑問が頭に浮かぶと、すぐにスマホで検索する癖があるんだよね。

まあ、結局は猫の面白動画とか、今日の夕食の献立とかに脱線しちゃうんだけどさ。

でも、今回はちょっと真剣に調べてみた。

役所のホームページとか、専門の相談窓口のサイトをいくつか見てみたんだ。

なるほど、やはりDVやストーカー、児童虐待といった被害を受けている人が対象になるらしい。

住民票の写しや戸籍の附票の写しが、加害者に交付されるのを制限できる、と。

申請には警察署や配偶者暴力相談支援センターなどの意見書が必要になる場合もあるとのこと。

ふむふむ。

これはかなり厳重な措置なんだな、と感心した。

被害者を守るための、まさに最終手段というか、切り札のような制度だ。

でもさ、これってあくまで「住民票」の話なんだよね。

住民票が閲覧制限されても、実際に被害者が引っ越しや転職で生じる金銭的、心理的負担は変わらないわけだ。

引っ越し費用は自腹、転職先の仕事探しも自分で、人間関係を再構築するストレスも全部自分で抱え込む。

これはどう考えても、被害者にとってはものすごいペインだよな、って思ったんだ。

命を守るためには、それくらいやるしかない、というのは理解できる。

でも、そのために全てを犠牲にするような状況って、なんだか納得がいかないというか、やるせない気持ちになる。

ここで私のどうでもいいこだわりが顔を出すんだけど、私はね、レシートをね、必ず財布の同じポケットに入れる人なんだ。

そして、週に一度、週末に家族の元へ帰った時に、まとめて家計簿アプリに打ち込む。

これがね、ずれてしまうと、どうも気持ちが悪いんだ。

もし、ストーカー被害で引っ越しを余儀なくされて、新しい街で新しいスーパーに通うことになったら、レシートの出し入れのリズムが狂ってしまうじゃないか。

いや、もちろん命の危険とレシートの入れ方のこだわりを比べるなんて馬鹿げてる、というのは分かってるんだけど、そういう、些細な、どうでもいいような日常のルーティンが崩れることへの不安っていうのも、案外バカにできないものなんだよね。

人間って、そういう小さなことでバランスを保ってる部分があると思うんだ。

だから、思ったんだ。

もし、こういう被害に遭って、引っ越しや転職を強いられた場合に、金銭的な保障もあればいいのに、と。

いや、もちろん、そんなことを言うと「甘えだ」とか「税金の無駄遣い」とか言う人もいるかもしれない。

でもさ、命を守るために、住み慣れた場所を離れて、職も変えて、全く新しい生活をゼロから築き直すって、並大抵のことじゃないだろう。

その精神的、経済的な負担を少しでも軽減できるような仕組みがあったら、それは被害者にとってどれだけ大きな助けになるだろう、って。

もちろん、そんな制度を作るのは簡単じゃないだろうし、悪用する輩も出てくるかもしれない。

でも、もしも自分がそんな状況に陥ったら、たぶん、今の私は立ち直れないだろうな、と本気で思うんだ。

単身赴任で慣れない土地で暮らしているだけでも、たまに心細くなるのに、そんな大きな変更を強いられたら、きっと途方に暮れてしまう。

結局のところ、香水の匂いが強烈だったことから始まった、私の妄想じみた疑問は、住民票の閲覧制限という、ちょっとした知識にたどり着いたわけだけど、私の生活は何も変わらない。

単身赴任先の小さなアパートで、週末の家族との再会を楽しみに、今日もスーパーで今日の夕食の材料を選ぶ。

レシートはいつものポケットに。

たまに、ちょっと変わった調味料を見つけては「これ、家族も喜ぶかな?

」なんて考えながらカゴに入れる。

もし、この調味料で失敗しても、それはそれで週末の食卓での笑い話になるだろう。

この前、スーパーで見つけた「食べるラー油味の柿の種」っていうのがあってさ、あれ、なかなか面白かったんだよね。

最初は「え、柿の種でラー油?

」って思ったんだけど、食べてみたら意外とイケる。

ちょっと辛くて、でも後を引く感じ。

あれも最初は、私の「いつもの柿の種」というこだわりを裏切るものだったわけだけど、結果的には新しい発見だった。

人生も、そういうもんかもしれないね。

予期せぬ変化が、意外と良い方向に向かうこともある。

まあ、ストーカー被害は、どう考えても良い方向には向かわないけどさ。

でも、なんだかんだ言っても、私の日常は平和だ。

来週も、週末には家族の元に帰って、いつもの食卓を囲む。

妻は「また変なもの買ってきたの?

」なんて言いながらも、私の買ってきた「食べるラー油味の柿の種」をポリポリ食べるんだろうな。

そんな、ささやかな幸せがある限り、私は今日を頑張れる。

そして、もしまた電車で強烈な香水に出会ってしまったら、今度はためらわずに、一駅手前で降りて、次の電車を待つことにしよう。

だって、鼻腔を鷲掴みにされたまま一日を過ごすなんて、冗談じゃないからね。

それくらいは、自分のために許してあげてもいいだろう。

そう、私のどうでもいいこだわりが、私の平和な日常を守っている、のかも、しれない。

いや、きっとそうだ。

きっと、そうなんだ。

うん。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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