フェリー航路への妄想と、延滞金と、猫の毛と私のこだわり

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📝 この記事のポイント

  • 図書館で借りた本の返却期限が過ぎていて、延滞金を払う羽目になった。
  • いやもう、これは私の日常の一部と化しているのかもしれない。
  • 毎回、返却カウンターで「あ、すみません……」と気まずい笑顔を浮かべる私に、図書館司書の方はもはや何も言わない。

図書館で借りた本の返却期限が過ぎていて、延滞金を払う羽目になった。

いやもう、これは私の日常の一部と化しているのかもしれない。

毎回、返却カウンターで「あ、すみません……」と気まずい笑顔を浮かべる私に、図書館司書の方はもはや何も言わない。

無言でタブレットを操作し、金額を提示してくれる。

なんかもう、通じ合ってる感すらある。

ある意味、常連客だ。

そう、私は図書館の「常連延滞客」なのだ。

誇れることでは決してないが、まあ、そういうことだ。

今回延滞したのは、北海道旅行ガイドと、北欧デザインのインテリア本。

特に北欧の方は、ページをめくるたびに「はー、これが理想の暮らし……」とため息しか出ない、眩しすぎる世界が広がっていて、もう、その眩しさに目を細めすぎて、結局ほとんど読まずに期限を迎えてしまった。

ねえ、猫の毛が舞い散る我が家と、白樺の木とミニマルな家具に囲まれた北欧の暮らし、どうしたら繋がるわけ?

無理ゲーすぎる。

でも、借りた本は最後まで読まなくても、借りる行為自体がもう、自分の向上心のアピール、みたいなところがあるじゃない。

だから、これはこれでいいのだ。

多分。

延滞金を払いながら、ふと「北海道かぁ」と思った。

いつか、車で北海道を一周したいという夢がある。

壮大すぎる夢、というか、もはや妄想の域に近い。

だって考えてみてほしい。

福岡から北海道まで車で行くって、どういうこと?

本州を縦断するだけで、私の車の走行距離がヤバいことになる。

そして、本州から北海道へはフェリーに乗るしかない。

普通に考えたら、敦賀とか新潟とか、日本海側の港から乗船するのがセオリーだろう。

いや、太平洋側なら大洗とか仙台とかもあるけれど、九州から行くなら日本海側が最短ルートだ。

でも、ここにも問題がある。

九州から敦賀までだって、車で走ると結構な距離なのだ。

下手したら、それだけで一日終わっちゃう。

いや、終わっちゃうどころか、途中でもう、疲労困憊で宿を取る羽目になるだろう。

そうなると、フェリーに乗る前にすでに一泊。

北海道に着くまでに何泊するんだ?

という話になる。

これじゃあ、せっかくの車の旅なのに、肝心の運転が苦行になってしまう。

そこで、いつも私の脳内で繰り広げられるのが、「福岡港から北海道の日本海側へ直通フェリー航路があったら、どれだけ助かるだろうか」という妄想だ。

これはもう、九州の車持ちの人間なら、一度は考えることなのではないだろうか。

いや、考えてない?

私だけ?

いやいや、そんなはずはない。

だって、ものすごく需要があるはずだ。

ある日、猫たちがカリカリを食べる音を聞きながら、ぼんやりとこの妄想を巡らせていた。

うちの猫、カリカリを食べるのが異様にうまい。

カチャカチャと音を立てながら、一粒残らず平らげる。

その横で、「いいなー、君たちはそんなに悩みがなくて……」と呟きながら、私はパソコンを開いた。

「福岡 北海道 フェリー 直行」と検索する。

もちろん、Google先生は私の妄想を打ち砕く。

直行便なんて、ない。

ああ、知ってた。

知ってたけど、なんかこう、もしやの奇跡を期待してしまうのが人間というものだ。

でも、ちょっと待てよ、と私は思った。

まさか、過去にも一度もなかった、なんてことはないだろうか?

いや、昔は色々な航路があったはずだ。

そう思い直し、今度は「福岡 北海道 フェリー 過去」で検索してみた。

すると、おお、あったのだ!

なんと、舞鶴(京都)から小樽(北海道)へのフェリー航路が、過去に福岡(博多)港にも寄港していた時期があったらしい。

そう、あの新日本海フェリーが!

「うわー、まじかよ!

」と、思わず声が出た。

猫たちが一斉にこちらを見て、「なんか騒がしいな、この女」みたいな顔をしている。

ごめんごめん、ちょっと興奮した。

いや、これは興奮ものだ。

舞鶴・小樽航路が、博多に寄港していたなんて!

それも、私が生まれるずっと前の話ではなく、比較的最近、2000年代初頭まで運行していたというのだ。

なんてことだ。

私がもう少し早く生まれていたら、もしくは、もう少し早く車を持っていたら、この夢のような航路を利用できたかもしれないのだ。

その当時の時刻表や運賃を調べてみた。

博多から小樽まで、所要時間は約30時間。

運賃は、車一台込みで数万円。

もちろん、部屋のグレードによってピンキリだけど、それでも、本州を縦断して敦賀まで行く労力とガソリン代、そして一泊分の宿泊費を考えたら、断然アリな選択肢だったはずだ。

夜に出航して、翌々日の朝に小樽に着く。

フェリーの中で一泊二日を過ごす間に、遠い北海道までワープできる。

これほど素晴らしい旅の始まりが、他にあるだろうか?

ない。

「ああ、なんて惜しいことをしたんだ、人類は!

」と、私は猫たちに向かって熱弁をふるった。

猫たちは、私のヒートアップぶりに、さすがにちょっと引き気味だ。

一匹は尻尾をパタパタさせながら、もう一匹は顔を洗い始めた。

多分、「また始まったよ」と思っているのだろう。

でもさ、なんでなくなっちゃったんだろうね、この航路。

調べてみると、どうやら利用者の減少と燃料費の高騰が主な原因だったらしい。

そりゃあ、そうだよな。

高速道路網も整備されて、飛行機もLCCが登場して、移動手段が多様化した現代において、30時間もかけてフェリーに乗るというのは、なかなか選択肢に入りにくいのかもしれない。

時間をお金で買う時代、なんて言われるけれど、まさにその流れに逆らえなかった、ということなのだろう。

でも、私は思うのだ。

フェリーの旅って、飛行機や新幹線とは違う、独特の魅力があるじゃないか。

船に揺られながら、広い海を眺めて、たまにはデッキに出て潮風に当たって。

夜には満点の星空を見上げて、朝には水平線から昇る朝日を拝む。

そういう、移動そのものを楽しむ旅のスタイルって、今だからこそ見直されてもいいんじゃないか、って。

特に、キャンピングカーとかで旅をする人たちにとっては、車ごと移動できるフェリーは、絶対に需要があるはずだ。

だって、考えてもみてほしい。

せっかく北海道で美味しいものを食べたいと思っても、飛行機で行ったらレンタカーを借りなきゃいけない。

レンタカーを借りたら、また返却の手間もあるし、何より、自分の車で旅するのと、借り物の車で旅するのって、気分が全然違うのだ。

自分の車なら、使い慣れた装備もあるし、なんなら荷物も多めに積んでいける。

スーパーで買いだめしたお土産も、気にせず詰め込める。

そういう自由度が、車旅の醍醐味なんだから。

結局、私の北海道車旅の夢は、福岡港からの直通フェリー航路がない以上、まだしばらくは妄想のままだろう。

いや、いつか、本州縦断の苦行を乗り越えて、敦賀からフェリーに乗る日が来るかもしれない。

いや、来ないかもしれない。

私の「いつか」は、だいたい「いつか」のままで終わることが多い。

例えば、猫のために買った高級おもちゃも、最初は夢中になるくせに、三日もすれば見向きもしなくなる。

私の「いつか」も、それと同じくらい気まぐれだ。

でも、そうやって、ありもしない航路に思いを馳せたり、過去の歴史を掘り起こしては「ああ、惜しい!

」と嘆いたりする時間が、意外と楽しいのだ。

日常の小さな疑問から、ちょっとした調べ物をして、へぇ、そうだったんだ!

という発見がある。

でも、だからといって、私の生活が劇的に変わるわけではない。

今日も猫たちはカリカリを食べ、私は延滞金を払い、そして、明日もまた、特に何も変わらない日常が続いていく。

ただ、一つだけ、私の些細なこだわりが揺るがないのは、いつか北海道に行くときは、絶対にフェリーで車ごと上陸したい、ということだ。

たとえ、それがどんなに遠回りな道のりになろうとも、どんなに時間がかかろうとも、絶対に自分の車で行く。

これはもう、譲れない。

たとえ、その道中で何回も宿を取ることになろうとも、途中で「やっぱり飛行機にすればよかった」と後悔することになろうとも。

だって、自分の車で、自分のペースで旅をするって決めたんだもの。

そこで、一番合理的な方法を選んだら、それはもう、私の旅じゃない気がするのだ。

そんなことを考えながら、私は再び北海道のガイドブックを手に取り、今度は延滞しないように、今日中に読み終えようと心に誓った。

もちろん、その誓いがどれだけ守られるかは、猫のみぞ知る、といったところだろうけどね。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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