📝 この記事のポイント
- スーパーのレジで並んでいた時、前の人のカゴの中身が気になってしまった。
- これはもう、人間の性みたいなもんだと思う。
- 私の前の女性は、カゴいっぱいの野菜と、なぜか栄養ドリンクの箱を二つも買っていた。
スーパーのレジで並んでいた時、前の人のカゴの中身が気になってしまった。
これはもう、人間の性みたいなもんだと思う。
私の前の女性は、カゴいっぱいの野菜と、なぜか栄養ドリンクの箱を二つも買っていた。
「おお、健康志向からの、ちょっと疲れてる?
」と勝手にストーリーを作り上げてしまうのは、私の悪い癖だ。
そして、レジの店員さんが、カゴの底から出てきたペットボトルのお茶をスキャンし忘れて、「あっ」と声を上げた瞬間、私も「あっ」と心の中でつられて声を出してしまった。
いや、なんで私が連帯責任を感じてるんだ、と自分にツッコミを入れる。
平和な日曜の午後だ。
そんな他人のカゴを観察している間に、私の脳裏をふとよぎったのが、先日自宅で発生した「Wi-Fi、まさかの沈黙」事件のことだった。
それは、ある平日の夜、猫のモカが私の膝の上でグースカ寝ている、いつもの平和な時間だった。
動画配信サービスで海外ドラマでも観ようかな、とテレビをつけたら、クルクルと丸いアイコンが延々と回っている。
あれ?
これはいつものロード時間じゃないな。
なんか、嫌な予感。
スマホでニュースアプリを開こうとしても、やっぱりクルクル。
これはまずい。
Wi-Fiが死んでる……!
うちの猫は「ネットなんてなくても人生楽しめるにゃ」みたいな顔してるけど、私の生活はWi-Fiなしには成立しないのだ。
普段ならルーターの電源を抜き差しすれば復活するのに、今回はうんともすんとも言わない。
LEDランプは全部消灯している。
え、マジ?
完全に息をしてないじゃないか。
焦りまくって、とりあえず契約しているプロバイダのサポートセンターに電話してみるものの、なかなか繋がらない。
そりゃそうだ、みんな困ってるんだから。
やっと繋がったと思ったら、「ルーターの型番をお伝えいただけますか?
」と聞かれ、そこからがまた一苦労だ。
ルーターなんて、普段はテレビ台の裏のホコリまみれの場所に鎮座してるじゃないか。
あんなところ、猫のモカでさえ近寄らない聖域だ。
ホコリと格闘しながら、ようやく型番を確認し、オペレーターさんに伝えた。
すると、「お客様、その機種は、かなり前のものですね……」と、なんだか含みのある言い方をされてしまった。
「エレコムさんの公式サイトによると、Wi-Fiルーターの寿命は最長で6年と言われています。
お客様のルーターは、もうどれくらいお使いですか?
」
その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中で、カチカチと計算機が高速で回り始めた。
えっと、このルーターを設置したのは、確か今の部屋に引っ越してきた時だから……。
あれ?
今の部屋に引っ越してきたのは、もう8年くらい前じゃないか?
まさか。
そんなはずはない。
いや、でも、そういえばモカがまだ子猫だった頃、ルーターのケーブルをかじって、私が慌てて保護シートを巻いた記憶がある。
そのモカも、もう7歳だ。
ということは……。
まさかの8年選手!
いや、もしかしたらもっと長いかもしれない。
もしかしたら、前の前の部屋から連れてきたのかもしれない。
そう考えると、エレコムさんが「最長で6年」と言っているものを、平然と8年、いや、それ以上使い倒していたことになる。
「お客様、新しいルーターへの交換をご検討されてはいかがでしょうか」と、オペレーターさんがやんわりと勧めてくるのも納得だ。
むしろ、「よくぞここまで耐え抜きました!
」と、我が家のルーターを労ってあげたい気持ちにすらなった。
いや、待てよ。
そういえば、ここ最近、動画が途中で止まったり、読み込みに時間がかかったり、スマホの通信がやたら遅いと感じることが増えていた気がする。
そうか、あれはルーターの悲鳴だったのか。
人間で言えば、もうとっくに定年退職して、余生をエンジョイしているはずの年齢なのに、うちのルーターはブラック企業さながらにこき使われていたのだ。
ごめんよ、ルーター。
無知な飼い主でごめん。
いや、飼い主って言うのもなんか違うか。
しかし、家電製品って、壊れる直前まで文句一つ言わずに働き続けるじゃない?
壊れて初めて「あ、そういえば調子悪かったかも」って気づく。
その健気さが、また胸を打つというか、なんというか。
たとえば、うちの冷蔵庫。
もうかれこれ10年選手なんだけど、最近、扉のゴムパッキンがちょっと緩い気がするんだよね。
閉めたつもりでも、半ドアになってて、朝起きたらモカが冷蔵庫の前に仁王立ちしてて、「開いてるにゃ」って顔してる、みたいなことがあったりする。
あれも、きっと冷蔵庫が「もう休みたい……」って言ってるサインなんだろうな。
でも、買い替えるとなると、また大きな出費だし、どうせなら引っ越しのタイミングで……とか考えて、結局ズルズル使い続けてしまう。
そうやって、家電たちに無理をさせているのは、他ならぬ私なのだ。
本当にごめん。
この「壊れるまで気づかない」現象って、人間関係でもない?
たとえば、会社の同僚。
いつもニコニコしてて、どんな頼みごとでも快く引き受けてくれる人がいるとする。
でも、ある日突然、「私、今月で辞めます」って言われて、初めて「あれ?
もしかして無理させてた?
」って気づく、みたいな。
いや、全然違うか。
でも、そういうことって、ある気がする。
みんな、ギリギリまで頑張っちゃうんだよね。
そして、私はそれに気づけない、鈍感な人間なのだ。
結局、新しいWi-Fiルーターは、翌日にはネットショップでポチっていた。
届いた新しいルーターは、なんだか未来的なデザインで、薄くて軽くて、前のと比べるとまるで別物だ。
「最近のルーターってこんなに進化してるの!
」と、浦島太郎状態だった私。
設置も思ったより簡単で、あっという間に家の中に高速Wi-Fiの電波が満ち満ちた。
「おおお!
速い!
サクサク動く!
」
感動して思わず叫んでしまったら、モカが「うるさいにゃ」とばかりに私の足元からプイッと立ち去って行った。
ごめんね、モカ。
でも、これで君の最新猫動画も、途中で止まることなく見れるよ!
……って、モカは自分の動画に興味はないか。
新しいルーターが来て、我が家のネット環境は劇的に改善された。
動画は高画質でスムーズに再生されるし、スマホの読み込みも爆速だ。
ああ、これが本来の快適さだったのか、と。
今までどれだけストレスを抱えていたんだろう、と。
まるで、ずっと曇り空だった世界に、急に晴れ間が差したような気分だった。
この一件以来、私はちょっとだけ、家電製品への意識が変わった気がする。
いや、変わったことにしたい。
スーパーで新しいフライパンを見かけると、「うちのフライパン、もう焦げ付くようになってきたな……」とか、洗濯機がいつもより大きな音を立てると、「そろそろ限界なのかな……」とか、妙に敏感になってしまう。
そして、その度に「エレコムさんが言ってた6年って、もしかしたら他の家電にも当てはまるんじゃ!
」とか、勝手に壮大な法則を見出した気分になる。
いやいや、そんなわけないだろ。
家電の寿命なんて、使い方や製品によって全然違うんだから。
でも、まあ、ちょっと気にするくらいがちょうどいいのかもしれない。
人間だって、定期的に健康診断に行くように、家電もたまにはメンテナンスしてあげたり、新しいものに交換してあげたりする必要があるんだな、と改めて思った次第だ。
そういえば、あのスーパーの女性は、栄養ドリンクを箱買いしてたけど、もしかしたらあの人も、家で何か「寿命」を迎えているものと格闘してたのかもしれない。
冷蔵庫のパッキンとか、洗濯機の脱水音とか、はたまたテレビのリモコンが効かなくなったとか。
そして、その疲れを癒すために、栄養ドリンクを箱買いしたのかもしれない。
レジで並ぶたびに、他人のカゴの中身を見て勝手にドラマを創作する私。
でも、そうやって想像力を働かせると、なんだか知らない人にも親近感が湧くし、ちょっとだけ世界が面白く見える気がする。
私も、新しいルーターの恩恵を受けながら、今日もまた、エレコムさんが「最長で6年」と言っているものを、一体どこまで使い倒せるのか、次の限界に挑戦し続けてしまうのだろうか。
いや、さすがにもう少し気を遣おう。
とりあえず、このエッセイを書き終わったら、モカの最新猫動画でも見ながら、新しいルーターを労ってあげようと思う。
ありがとう、エレコムさん。
そして、今まで本当にご苦労様でした、我が家の先代ルーター。
君のことは忘れないよ。
たぶん。
💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。
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