キーが合わない詐欺電話と、僕らのシェアハウス飯の話

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📝 この記事のポイント

  • カラオケで十八番を歌ったら、キーが合わなくて途中でリセットした。
  • いや、正確には、入れたはずの曲が別の曲になっていて、イントロの最初の一音が鳴った瞬間に「あ、これ違うわ」って気付いたんだ。
  • 画面に映し出された知らない曲名と、まるで僕の心情を嘲笑うかのようなアップテンポなメロディに、思わず苦笑い。

カラオケで十八番を歌ったら、キーが合わなくて途中でリセットした。

いや、正確には、入れたはずの曲が別の曲になっていて、イントロの最初の一音が鳴った瞬間に「あ、これ違うわ」って気付いたんだ。

画面に映し出された知らない曲名と、まるで僕の心情を嘲笑うかのようなアップテンポなメロディに、思わず苦笑い。

人生もたまにこういう「キーが合わない」瞬間、あるよね。

僕の十八番はしっとり系のバラードだから、いきなりサンバのリズムが来たらそりゃリセットだ。

週末の昼下がり、シェアハウスのリビングで僕は冷凍チャーハンを温めていた。

昨晩、当番制の夕食でSさんが作ったミートソースパスタが思いのほか大量に余っていて、それも温め直そうか迷いつつ、結局「冷凍チャーハンの方が手軽じゃん」という怠惰な結論に落ち着いた。

こういう時、シェアハウスだと誰かが「僕、食べるよ」とか「それ、明日の弁当にしようかな」って言ってくれるから、食料廃棄の罪悪感が薄まるのはいいところ。

今日は誰もいなかったけど。

電子レンジの「チーン」という間抜けな音と同時に、僕の古い固定電話が鳴り始めた。

固定電話なんて、実家か、怪しいセールスか、どっちかだ。

大抵は後者。

「はい、もしもし?

」と、やや気だるげに受話器を取る。

すると、向こうから流暢な日本語で男性の声。

「NTTの〇〇と申します。

お客様にご利用中の回線について、大変重要なご連絡がございます。

」いきなり「NTT」って言われると、脊髄反射で「何か問題あったっけ?

」と身構えちゃうのは、きっと僕だけじゃないはず。

この手の電話は、大抵「ご利用料金が未払いなので〜」とか「セキュリティ強化のため〜」とか、いかにもそれらしい理由を並べてくるのが常套手段だ。

でも、今日の相手はちょっと違った。

僕が「はあ、そうですか」と生返事をすると、彼はさらに畳み掛ける。

「つきましては、お客様の個人情報を確認させていただきたく、いくつか質問がございます。

」個人情報か、はいはい。

「まず、お客様のお名前をフルネームで教えていただけますでしょうか?

」と来た。

僕は心の中で「いや、NTTが電話かけてきてるのに、こっちの名前知らないってどういうこと?

」とツッコミを入れた。

でも、そこはグッとこらえて、「えーっと、どちら様にお繋ぎでしょうか?

」と逆に質問をぶつけてみる。

すると相手は「NTTの〇〇でございます」と再び名乗る。

いや、名前じゃなくて、僕の名前を知らないのにどうして「お客様」って言えるんだ?

そこからしてもう、論理が破綻している。

この時点で詐欺の香りしかしない。

僕の鼻が、冷蔵庫の奥で腐りかけの野菜を嗅ぎ分けるように、不審な匂いをキャッチした。

さらに追い討ちをかけるように、「お客様の生年月日も確認させていただけますでしょうか?

」と来た。

ここで僕はもう確信した。

「ああ、これはお粗末な詐欺だな」と。

NTTを名乗るなら、少なくとも契約者の名前くらい把握してるのが当然じゃないか。

まるで、僕がキッチンで「今日の晩ご飯どうする?

」って聞かれて、「えーっと、君は誰だっけ?

」って答えるくらい頓珍狂な話だ。

いや、僕が作った方がまだ筋が通ってるかもしれない。

だって当番制だし。

この間、僕が当番で鶏むね肉を大量に買ってきて、唐揚げを作ろうとしてたのに、間違えてオーブンで焼いてしまって「これ、鶏肉のソテーだっけ?

」ってなった時くらいの混乱度合い。

僕は冷凍チャーハンを皿に盛り付けながら、電話の相手にちょっとした意地悪をしてみた。

「あの、NTTさんなら、僕の名前とか生年月日とか、全部把握してるんじゃないですか?

それを教えてくださいよ、先に。

」すると相手は一瞬ひるんだ様子で、「そちらの情報は、お客様ご本人確認のために、再度お伺いしているものでございまして…」と、どこかで聞いたようなテンプレ回答を繰り出した。

いやいや、それ、僕を騙すための方便でしょ。

まるで、シェアハウスの冷蔵庫にいつの間にか紛れ込んだ、賞味期限切れのプリンに「これはまだ食べられます」って書いてあるようなものだ。

誰も信用しないって。

あまりにもお粗末な手口に、僕はなんだか脱力してしまって、思わず笑ってしまった。

「すみません、ちょっと面白くなっちゃって」と正直に言うと、相手は少し沈黙した後、「お客様、真剣にお話ししております」と、わずかに語気を強めた。

いや、真剣なのはわかるけど、もうちょっとマシなシナリオを用意してこいよ、と心の中で呟く。

僕が普段、当番で料理を作る時だって、レシピサイトを3つくらい比較検討して、これなら失敗しないだろうって確信してから調理に取り掛かるのに。

いきなり鍋に水も入れずにパスタを茹でようとするくらい、準備不足じゃないか。

結局、僕は「大変申し訳ないのですが、私はそのような情報をお伝えすることはできません」と丁寧にお断りして、電話を切った。

受話器を置いた後、少しだけモヤモヤした感情が残ったけれど、それよりも「まさか、こんなに稚拙な手口があるなんて」という驚きの方が大きかった。

まるで、コンビニで買ったおにぎりの具材表示が「米」としか書いてないくらいの大雑把さ。

いや、おにぎりだったら米はわかるか。

例えば、「魚介類」としか書いてないシーフードミックスくらいの大雑把さ。

いや、これもちょっと違うな。

もっとこう、明らかに「おかしい」とわかるような、そんな感じ。

この手の電話って、普段は「すみません、結構です」と機械的に切ってしまうことが多いんだけど、今日はちょっと付き合ってみて、思わぬ発見があった。

「詐欺師も大変なんだな」という、ちょっとした同情。

いや、同情はしないけど、彼らがどんな研修を受けて、どんなマニュアルで動いているのか、少しだけ興味が湧いた。

まるで、シェアハウスの当番飯で、Kさんが「これ、僕が考えたオリジナルレシピなんだ!

」ってドヤ顔で出してきた、見た目は真っ黒だけど意外と美味しい謎の料理を前にした時くらいの探究心。

彼のレシピ、いまだに聞いたことないけど。

この一件で、僕は自分の情報リテラシーが少しだけ上がった気がした。

いや、もともとそんなに低くなかったはずなんだけど、改めて「怪しいものには怪しいと声を出す勇気」みたいなものを再認識した、とでも言おうか。

まるで、冷蔵庫の奥で発見した謎の食材が、実はまだ食べられるものだった、みたいな発見。

いや、今回は食べられなかったけど。

この間、スーパーで特売になっていた鶏もも肉を手に取りながら、ふと思ったんだ。

僕らが日々の生活で「これは信用できる」「これは怪しい」と判断する基準って、一体どこにあるんだろうって。

商品のパッケージデザインだったり、店員さんの説明の仕方だったり、あるいは口コミだったり。

電話の相手の声のトーンや、話の筋道。

そういう細部の積み重ねで、僕たちは無意識のうちに判断を下している。

あのNTTを名乗る男も、もう少しだけ、話の「筋」を通す努力をしてくれていたら、もしかしたら僕ももう少しだけ、彼の話を聞いてあげたかもしれない。

いや、聞かないけど。

結局、冷凍チャーハンは美味しかった。

ミートソースパスタは、やっぱり明日に回そう。

きっとみんなも、こういう「うーん、なんかおかしいな」って直感が働くこと、あるよね?

そして、それを信じて正解だった経験、たくさんあるんじゃないかな。

僕らが生きているこの世界は、美味しいものと同じくらい、怪しいもので溢れている。

そして、その怪しさに気づく嗅覚こそが、僕たちの日常を守る、一番の武器なのかもしれない。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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