メルカリの闇鍋オークション、過去の自分と殴り合った話

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📝 この記事のポイント

  • どういう仕組みで片方だけが異次元に旅立つのだろう。
  • ドラム式洗濯機と乾燥機を過信しすぎた結果、我が家の靴下たちは次々と片割れを失っていく。
  • まるで運命の赤い糸がプツリと切れてしまうかのように。

洗濯物を干していたら、靴下の片方がない。

これで今月3枚目である。

どういう仕組みで片方だけが異次元に旅立つのだろう。

ドラム式洗濯機と乾燥機を過信しすぎた結果、我が家の靴下たちは次々と片割れを失っていく。

まるで運命の赤い糸がプツリと切れてしまうかのように。

いや、赤い糸ならまだしも、ただのゴムと綿の合成繊維なんだが。

「パパ、また靴下ないの?」

小学四年生の娘が、足元に転がっている私の靴下を見てため息をついた。その視線は、まるで宇宙飛行士が迷い込んだ地球外生命体を見るような冷ややかさだ。いや、君のパパだよ。生命体ではあるけど。

「うーん、今回はどこ行ったんだろうねぇ」

と白々しく答える私に、小学二年生の息子が追い打ちをかける。

「もう捨てるしかないじゃん。片っぽだけじゃ使えないし」

容赦ない。

彼らの言うことはもっともだ。

しかし、この「片っぽだけじゃ使えない」という前提が、私の心のどこかにチクっと刺さる。

そう、使えない。

使えないのだ。

だからと言って、まだ履ける相方を捨ててしまうのは忍びない。

いつかひょっこり現れるかもしれない、そんな淡い期待を抱いて、私は靴下を「片割れボックス」なるカゴに放り込む。

このボックスの中には、すでに十数足の片割れたちが、再会を夢見て眠っている。

まるで、失われた文明の遺跡のように。

その日、私は失われた靴下たちの代わりに、何か新しいものを手に入れたいという衝動に駆られた。

そう、衝動買いだ。

正確には、衝動「落札」なのだけど。

最近、メルカリのオークション機能がやけに気になる。

これまでフリマアプリは、もっぱら不要になった子どものおもちゃや、妻がサイズアウトした洋服を売る専門だった。

見る専、買う専というのは、ちょっと敷居が高かったのだ。

特に、オークションは未知の領域。

ヤフオク!

で昔、ゲームソフトを競り落とした経験はあるものの、あのピリピリした終盤戦の記憶が蘇って、なかなか手を出せずにいた。

しかし、先日、たまたま目にしたヴィンテージの木製おもちゃのセットが、私の心を鷲掴みにした。

これは息子が喜びそうだ。

いや、私が欲しい。

きっと私が。

ノスタルジーってやつだ。

昭和レトロを謳うそのおもちゃは、私の幼少期を彷彿とさせた。

開始価格は800円。

これなら、と軽い気持ちで入札ボタンを押した。

その時は仕事の休憩時間で、まさかそこから数時間にわたる激戦が繰り広げられることになるとは夢にも思っていなかった。

ヤフオク!

のように終了時刻が明確に決まっているわけではないメルカリのオークション。

なんとなく「そろそろかな?

」と思ってアプリを開くと、誰かが私より少し上の価格で入札している。

ムキーッ!

となる。

いや、ムキーッじゃないだろ、と理性では思うものの、指は勝手に「入札」をタップしていた。

昼休み、帰りの電車の中、夕食後、そして子どもたちが寝静まった後。

私はスマホを握りしめ、まるで自分と誰かが、見えない糸で結ばれた綱引きをしているかのような感覚に陥っていた。

相手はまるで私と同じ思考回路を持っているかのように、私が少し値を上げれば、相手もまた少し上げる。

まるで、鏡合わせの存在と対峙しているかのようだ。

「パパ、何してるの? 目が赤いよ」

夜中にトイレに起きた娘に言われた一言で、ハッと我に返った。

時刻は午前1時を回っている。

妻は隣で安らかな寝息を立てている。

私は、何をやっているんだ。

たかが数千円のおもちゃのために、こんな深夜まで神経をすり減らしているなんて。

まるで、人生の重大な選択を迫られているかのような集中力だった。

結局、その晩は2,500円まで値を上げ、もう疲れた、と諦めて眠りについた。

翌朝、ドキドキしながらアプリを開くと、なんと私が最高額入札者になっていた。

ホッとしたのも束の間、購入手続きをしようとすると、こんなメッセージが。

「落札されました。おめでとうございます!」

いや、知ってるよ。私が落札したんだから。そう思って、取引画面に進もうとすると、

「あなたは、入札した商品が落札されました。購入手続きに進んでください。」

あれ? 落札されたのは私なのに、なんでこんな他人事みたいなメッセージなんだ? しかも、落札価格は、私が最終的に入札した2,500円ではなく、その前に私がつけた2,300円になっていた。

「え、なんで?」

思わず声に出してしまった。寝ぼけ眼の妻が、

「何が? また靴下?」

と心配そうな顔で聞いてくる。違う、違うんだ。もっと深刻な事態なんだ。いや、深刻ではない。しかし、私のプライドが傷ついている。

よくよく調べてみると、メルカリのオークションはヤフオク!

とはシステムが違うらしい。

ヤフオク!

は終了時刻が来て最高額をつけた人が落札。

メルカリは、開始から24時間以内に最高額をつけた人が落札、そして、その最高額は、一つ前の入札額+最低入札単位で決まる、というものだった。

つまり、私が2,500円で入札した時、一つ前の入札が2,300円だったから、落札価格は2,300円になった、ということだ。

「はぁ〜〜〜〜〜っ!?」

これ、数時間前の自分とバトルしてただけじゃん!

無駄に200円も値を上げて、自分で自分の首を絞めてただけじゃん!

まるで、自分が投げたブーメランが、自分の頭にクリーンヒットしたような衝撃だった。

いや、ブーメランならまだ戻ってくるけど、これは戻ってこない。

ただただ、過去の自分の入札額を更新し続けただけ。

自分で自分を焦らせ、自分で自分を追い詰めていたのだ。

まさに、自作自演の茶番。

「あーあ、パパって本当にドジだね」

朝食を食べていた娘が、私の説明を聞いて、呆れたように言った。その言葉が、私の胸に深く突き刺さる。いや、ドジではない。これは、情報収集不足だ。リサーチが足りなかったのだ。

「仕方ないだろ。ヤフオク!の癖が抜けなかったんだよ」

と、子どもたちに言い訳をしてみるものの、彼らは「ふーん」という、全く関心のない返事しか返してこない。妻は、私が夜中にブツブツ言っていたことを思い出したのか、苦笑いしている。

この一件以来、私はメルカリのオークションに少しだけトラウマを抱えている。

いや、少しどころではない。

あの、数時間前の自分との熱い戦いを思い出すと、胃のあたりがキュッとなる。

もし、あの時、もう一人別の入札者がいたら、一体どこまで値が上がっていたのだろう。

想像すると、ゾッとする。

でも、この失敗から学んだことは多い。

まず、フリマアプリのルールはちゃんと読むこと。

そして、深夜のスマホ操作は控えること。

特に、オークションは熱くなりやすいから要注意だ。

カフェでゆっくりコーヒーを飲みながら、冷静な判断で入札する。

それが大人の嗜みというものだろう。

「次からは、ちゃんとルールを確認するからな!」

と、家族に宣言してみた。息子は「ふーん」と、またしても興味なさげだ。娘は、私の手元にあるスマホを指さして、

「パパ、そのスマホでルールって読むんでしょ? ちゃんと読んでる?」

と、鋭いツッコミを入れてきた。ああ、耳が痛い。全くもってその通り。いや、まさかスマホでスマホのルールを読む羽目になるとは、人生ってやつは本当に奥深い。

結局、落札した木製おもちゃは、子どもたちに大好評だった。

特に息子は、古い木の匂いを嗅ぎながら、目を輝かせている。

その笑顔を見ていると、まあ、200円くらい無駄にしたっていいか、という気持ちにもなる。

いや、本当に無駄だったのか?

あの数時間にわたる自分とのバトルは、無駄ではなかったのかもしれない。

少なくとも、こうしてエッセイのネタにはなったのだから。

そう、人生、無駄なことなんて一つもない。

そう思わないと、やってられない。

次にオークションに参加する時は、きっとまた同じ過ちを繰り返すのだろう。

いや、繰り返さない。

きっと。

たぶん。

だって、人間だもの。

学習する生き物だから。

そう、きっと学習するはずだ。

でも、あのギリギリの攻防、熱い駆け引き、ちょっとだけ癖になるのも事実なんだよなぁ。

また深夜、目が血走っている私がいるかもしれない。

その時は、きっと妻がそっと私のスマホを取り上げてくれるだろう。

そう、信じたい。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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