知っているのか雷電、しまむらの枕が私の部屋にやってきた話

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📝 この記事のポイント

  • 公園のベンチで休憩していたら、鳩に囲まれてパニックになった。
  • 平和の象徴とか言うけれど、あの数の羽音と、やたらと見つめてくる赤い目を見ていると、どうにもこうにも居心地が悪い。
  • いや、悪いどころか、餌も持っていないのに数羽が肩に止まろうとしてきた時は、もう終わりだと思った。

公園のベンチで休憩していたら、鳩に囲まれてパニックになった。

平和の象徴とか言うけれど、あの数の羽音と、やたらと見つめてくる赤い目を見ていると、どうにもこうにも居心地が悪い。

いや、悪いどころか、餌も持っていないのに数羽が肩に止まろうとしてきた時は、もう終わりだと思った。

これ、私、鳩の餌食になるやつ?

みたいな。

幸い、全身を激しく揺さぶることで事なきを得たけれど、新社会人、初めての一人暮らし、いきなり公園で鳩に襲われるなんて、私の新生活、一体どうなるんだと、途端に不安になった。

まあ、そんな大げさな話じゃなくて、ただの鳩恐怖症が発動しただけなんだけど。

とりあえず、鳩から逃げるように最寄りの商業施設に駆け込んだ。

そう、しまむらだ。

特に何か買う予定があったわけじゃない。

ただ、エアコンの効いた広い空間で、冷静さを取り戻したかっただけ。

店内をぶらぶら歩きながら、ああ、そういえば最近、ちょっとしたクッションが欲しいな、なんてことをぼんやり考えていた。

新しい部屋、まだ殺風景で、なんかこう、アクセントになるようなものがあればいいのに、と。

そんな時、目に入ったのが、キャラクターコラボ商品のコーナーだった。

そこには、おなじみの人気アニメキャラから、まさかのレトロゲームのキャラまで、ありとあらゆる枕やクッションが並んでいた。

私は特にオタクというわけではないけれど、たまにこういう掘り出し物に出会うと、ちょっと心が躍る。

まあ、どうせ、ありきたりなキャラクターが満面の笑みを浮かべている枕とか、流行りのアニメのロゴがデカデカとプリントされたクッションとかだろう、と、半ば冷めた目で見ていた。

そういうのって、だいたいがファン向けのアイテムで、デザイン性とか、部屋に馴染むかとか、そういうのは二の次なんだよね。

だから、その、まさかの物体を目にした時、正直、目を疑った。

いや、二度見した。

三度見くらいしたかもしれない。

そこにあったのは、まさかの「魁!!男塾」のコラボ枕だったのだ。

しかも、ただのコラボじゃない。

「知っているのか雷電」と、でかでかと書かれた文字。

そして、その横には、雷電の顔面が、これでもかとばかりに、迫力満点にプリントされている。

しかも、顔のしわ一本一本、汗の一滴一滴までが、忠実に再現されている。

「マジか……」と、思わず声が出た。

いや、これは、なんというか、すごい。

すごいけれど、誰が買うんだ、これ。

部屋に置く?

ベッドに?

まさかリビングに置いたりはしないよね?

私は思わず、その枕を手に取ってしまった。

すると、別の棚には「きさまら!

男塾名物 油風呂の熱さを知らぬと見える!

」と叫ぶ富樫の枕が。

さらにその隣には、「わしが男塾塾長 江田島平八である!

」と、おなじみのセリフとともに、仁王立ちする江田島塾長の枕まであるではないか。

しかも、その江田島塾長の枕、顔のドアップで、背景には「男塾」のロゴが燃え盛るように描かれている。

これ、寝る時に使ったら、毎晩、塾長に睨まれているような気分になるんじゃないか。

いや、むしろ、塾長に見守られている、とでも言うべきか。

しかし、なぜよりによって、「魁!!男塾」なのだろう。

しかも、名場面ばかりをチョイスしているあたりに、作り手の熱意を感じざるを得ない。

その熱意が、若干、いや、かなり、空回りしているような気もするけれど。

私はその時、ふと、自分の部屋を思い出した。

大学を卒業して、初めての一人暮らし。

引っ越してきたばかりの部屋は、まだ家具も必要最低限で、白い壁紙が虚しく広がっている。

そんな殺風景な部屋に、この「知っているのか雷電」枕がもし転がっていたら、一体どうなるだろう。

想像してみる。

朝起きて、ベッドから起き上がろうとしたら、枕元に雷電の顔面。

きっと、目が覚めるどころか、二度と眠れなくなる気がする。

いや、違う。

これは、逆にアリかもしれない、と、なぜかその時、そう思ってしまったのだ。

私の部屋は、とにかくシンプルだ。

インテリアに凝るタイプでもないし、ごちゃごちゃしたものは好きじゃない。

だからこそ、一つくらい、異質なものがぽつんとあっても、それはそれで面白いんじゃないか。

しかも、この「男塾」の枕、なんというか、その圧倒的な存在感が、逆に部屋の調和を乱すことで、かえって、ある種の芸術作品のような趣を醸し出すのではないか。

そう、これは、アートだ。

と、まあ、我ながらかなりのこじつけなんだけど、そんな屁理屈を自分に言い聞かせながら、私は「知っているのか雷電」の枕をカゴに入れた。

さらに、富樫の「油風呂」枕も、なんとなく衝動的に追加してしまった。

だって、雷電だけじゃ寂しいじゃない?

男塾といえば、友情と根性。

一人だけじゃ、なんだか物足りない気がしたのだ。

レジに並ぶ。

私の前には、可愛らしいキャラクターのTシャツを何枚も抱えたママさん。

後ろには、流行りのキャラクターのヘアアクセサリーを選ぶ女子高生。

その中で、私だけが、満面の笑みの雷電と、汗だくの富樫を抱えている。

店員さんが、やや困惑したような、いや、むしろ「マジかこいつ」みたいな視線を向けているような気がした。

もちろん、私の気のせいかもしれない。

でも、その時、私はなぜか、ちょっとだけ誇らしいような、でも、やっぱり恥ずかしいような、複雑な感情に襲われた。

家に帰って、早速、枕をベッドに置いてみた。

うん、予想通り、部屋の雰囲気をぶち壊している。

でも、それがいい。

白いシーツの上に、どでかく鎮座する雷電の顔面。

その横には、眉間にしわを寄せた富樫。

なんというか、そこだけ異空間だ。

部屋全体は無印良品とかニトリとか、そういうシンプルな家具でまとめているのに、ベッドだけ、突然の男塾。

友達が遊びに来たら、きっと爆笑するだろう。

いや、ドン引きするかもしれない。

でも、私はこの枕たちが気に入った。

彼らは、私の殺風景な部屋に、圧倒的な生命力を与えてくれた。

そして、毎朝、雷電の顔を見て起きるたびに、「知っているのか雷電、今日も一日頑張るんだ」と、心の中で呟いてしまう。

いや、もちろん、声には出さないけどね。

趣味って、本当に不思議だ。

昔は、流行りのものに飛びついては、すぐに飽きて、また新しいものを追いかけていたような気がする。

高校生の頃なんて、毎月のように雑誌を読んで、これいいな、あれいいな、って、次から次へと欲しいものが変わっていた。

でも、この男塾枕に出会って、なんかこう、自分の「好き」の基準が、ちょっとだけ変わった気がする。

流行とか、誰かにどう見られるかとか、そういうのじゃなくて、ただ純粋に、自分が面白いと思ったもの、心を揺さぶられたものを選ぶ、みたいな。

まあ、だからといって、これから私の部屋が男塾グッズで埋め尽くされるかというと、それはまた別の話なんだけど。

でも、この枕たちを見ていると、時々、フッと笑いがこみ上げてくる。

それは、鳩に襲われてパニックになった公園での、ちょっとした出来事から始まった、ちっぽけな、でも私にとっては、結構大きな、新生活のアクセントになった出来事だった。

いつか、この枕たちが汚れてしまったら、またしまむらに買いに行こう。

その時、もし「魁!!男塾」の新作コラボ枕が出ていたら、私はきっとまた、迷わずカゴに入れるだろう。

今度は、きっと、あの人気キャラ、虎丸の枕とかが出てたら嬉しいな。

いや、待てよ。

「てめえら!

死ぬのはごめんだぜ!

」って叫んでる虎丸の枕があったら、逆に寝心地が悪くなるような気もする。

まあ、それはそれで、ある意味、最高なんだけどね。

そんなことを考えながら、私は今日も、雷電と富樫に見守られながら、眠りにつくのだ。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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