📝 この記事のポイント
- 朝、出勤前に冷蔵庫を開けたら、賞味期限切れの食材が4つも並んでいた。
- 先週奮発して買った国産豚バラ肉、使いかけのフレッシュハーブ、半端に残ったパスタソース、そしていつかの特売で買った豆腐。
- 一人暮らしの冷蔵庫は、よく見ると「いつか使うかも」という淡い期待を裏切られた食材たちの墓場と化している。
朝、出勤前に冷蔵庫を開けたら、賞味期限切れの食材が4つも並んでいた。
先週奮発して買った国産豚バラ肉、使いかけのフレッシュハーブ、半端に残ったパスタソース、そしていつかの特売で買った豆腐。
一人暮らしの冷蔵庫は、よく見ると「いつか使うかも」という淡い期待を裏切られた食材たちの墓場と化している。
ああ、またやってしまった。
料理にハマってからは、スーパーに行くとついつい色々買い込んでしまう癖がある。
週末に凝った料理を作るんだ、と意気込んで材料を揃えるのだけど、平日の夜ともなると、仕事で疲れて帰ってきて、結局は簡単な炒め物か、最悪コンビニ弁当で済ませてしまうこともしばしば。
冷蔵庫の中の食材は、まるで「お前、結局作らなかったな」と責めているようだ。
特に豚バラ肉は、見るからに「昨日使うはずだっただろう」という顔をしていて、心の中でごめんなさいと謝った。
そういう日は、なんだか一日中、自分が約束を守れないダメ人間であるかのような気分になってしまう。
別に誰かと交わした約束じゃない。
自分自身との、ささやかな約束なんだけどね。
そんな自己嫌悪のモヤモヤを抱えながら、僕は半ば義務のように、朝食のinゼリーを摂取する。
これだけは、どんなに忙しい朝でも、どんなに気分が沈んでいても、欠かさないルーティンだ。
ピーチ味、マスカット味、たまにプロテイン。
味の種類は気分で変えるけれど、そのとろりとした喉越しと、胃に優しく染み渡る感覚は、僕の朝に欠かせない。
だから、何気なくスマホを眺めていた時に飛び込んできた、inゼリーのサイダー味に関するニュースには、正直、目を疑った。
あれはたしか、数週間前のことだっただろうか。
仕事中にふと、ぼんやりとTwitter、いや、Xか。
まあ、とにかく、あのアプリを見ていた時のことだ。
友人が「inゼリーってなんでサイダー味出さないんだろうな。
出たら面白いのに」とつぶやいていたのを見て、僕もつい、軽い気持ちで書き込んでしまったんだ。
「inゼリーがサイダーを作ってそれを買ったらインサイダー取引になるな」って。
別に、深い意味があったわけじゃない。
ただのダジャレだ。
頭の中でパッと閃いた言葉遊びを、そのまま投稿しただけ。
僕のフォロワーなんて、せいぜい数十人程度だし、ほとんどが学生時代の友人や仕事関係の人間だから、別に誰かの目に留まるわけでもないだろう、と。
そう思っていたんだ、あの時までは。
ところが、数日後のことだ。
僕の投稿に、見慣れない通知がずらりと並んでいた。
何事かと思って開いてみたら、なんと、あのinゼリーの公式アカウントが、僕のダジャレ投稿に反応しているではないか。
「……まさか……まさかです…」という、ちょっと困惑した絵文字つきの返信。
そして、その数日後には、「皆様のアイデアをいただき、inゼリーサイダー味、近日発売決定!
」という、正式な発表がされたんだ。
僕の投稿が直接の原因かどうかは分からないけれど、あの投稿が、少なからず話題作りに一役買っていたのは間違いない。
まさか、こんなことになるとは。
僕の頭の中で生まれた、ほんの些細な言葉遊びが、まさかあのinゼリーを動かす(かもしれない)なんて。
戸惑いはもちろんあった。
嬉しい気持ち半分、なんだかいたたまれない気持ち半分。
でも、それよりも大きかったのは、純粋な驚きと、これから発売されるサイダー味inゼリーへの期待だった。
それからというもの、僕はinゼリーの発売情報を、以前にも増して熱心に追いかけるようになった。
スーパーのドリンクコーナーを通るたびに、目を皿のようにして新しいパッケージを探した。
新商品コーナーのチェックは、もはや日課。
まるで、自分の子供が初めて舞台に立つ日を待ち望む親のような、そんな大袈裟な気持ちにさえなっていたのかもしれない。
そして、ついにその日が来た。
近所のスーパーで、見慣れない水色のパッケージを発見した時のこと。
僕は思わず、声を上げそうになった。
まるで宝物を見つけた子供のように、そっと手に取り、カゴに入れた。
もちろん、一つだけじゃない。
いくつかまとめて購入し、ウキウキとした気持ちで家に帰ったんだ。
冷蔵庫に並んだサイダー味inゼリーは、まるで僕の人生に新しい風を吹き込んでくれたかのようだった。
初めて飲んだ時の、あの爽やかな口当たりと、喉の奥に広がる微炭酸のような感覚は、これまでのinゼリーにはない新鮮な驚きだった。
ピーチの甘さでもなく、マスカットの爽やかさとも違う、どこか懐かしい、あの駄菓子屋で飲んだサイダーのような味がした。
それ以来、僕の朝のルーティンは少しだけ変化した。
日替わりで味が変わるinゼリーのラインナップに、サイダー味が加わったんだ。
たまに、冷蔵庫の中で賞味期限切れの食材を見つけて自己嫌悪に陥る日もあるけれど、サイダー味inゼリーを飲みながら、「まあ、こんな僕でも、世の中にちょっとは貢献できたのかもしれないな」なんて、根拠のない自信を持ってみたりする。
考えてみれば、冷蔵庫の食材を無駄にしないという自分との約束も、ダジャレがきっかけで新商品が生まれるという、奇妙な出来事も、結局は同じようなものなのかもしれない。
どちらも、僕の日常に潜む、ささやかな気づきや、ほんの少しのきっかけから生まれる。
そして、それが時に、僕をちょっとだけ幸せにしてくれる。
ああ、今朝も冷蔵庫には、いつかの特売で買った豚こま肉が、少しだけ萎れた顔をして僕を見ている。
でも、大丈夫。
今日はサイダー味inゼリーを飲んだから、きっと夜にはちゃんと、美味しい生姜焼きに変身させてあげるからね。
たぶん。
いや、きっと。
💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。
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