銀だこ問題と、単身赴任者の妙なこだわり

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📝 この記事のポイント

  • 書店で立ち読みしていたら、知らない人に話しかけられて焦った。
  • 休日の昼下がり、誰もいないだろうと高を括っていたビジネス書コーナーで、完全に意識を飛ばして「あー、この会社だったら私も働けそう」とか脳内で呟いていたところに、「あの、すみません、その本、面白いですか? 」と背後からヌッと声がして、思わず「ひゃい! 」とかいう変な声が出た。
  • その本は別に面白くも何ともなかったし、むしろページ数が多すぎて「これ、本当に実践できる人いるのか? 」と疑問に感じていたところだったんだけど、咄嗟に「ええ、まあ、なかなか…」と歯切れの悪い返事をしてしまった。

書店で立ち読みしていたら、知らない人に話しかけられて焦った。

いや、焦ったどころじゃない。

心臓が飛び出るかと思った。

休日の昼下がり、誰もいないだろうと高を括っていたビジネス書コーナーで、完全に意識を飛ばして「あー、この会社だったら私も働けそう」とか脳内で呟いていたところに、「あの、すみません、その本、面白いですか?

」と背後からヌッと声がして、思わず「ひゃい!

」とかいう変な声が出た。

いや、ひゃいって何。

その本は別に面白くも何ともなかったし、むしろページ数が多すぎて「これ、本当に実践できる人いるのか?

」と疑問に感じていたところだったんだけど、咄嗟に「ええ、まあ、なかなか…」と歯切れの悪い返事をしてしまった。

するとその人は「そうですか」とだけ言って、特に何も買わずに立ち去っていった。

何だったんだ、あの時間。

私の貴重な思考を中断してまで聞く必要があったのか。

いや、きっとあの人も暇だったんだろう。

あるいは、私があまりにも真剣な顔でビジネス書を読んでいるように見えたのかもしれない。

どう考えても、私の顔は「今日の晩飯は何にしようかな、そういえば冷蔵庫に豆腐が余ってたっけ」みたいな顔をしていたはずなんだけど。

そんなしょうもない出来事から始まった週末だったんだけど、ふと、その「今日の晩飯」問題に直面した時に、あることを思い出した。

最近、職場の先輩と飲んでいた時に盛り上がった「銀だこはたこ焼きじゃない問題」だ。

先輩はゴリゴリの関西人で、私も転勤で初めて関西に来た身。

先輩曰く、「銀だこはたこ焼きやない、銀だこという別の料理や」と熱弁していた。

私は「いやいや、たこ焼きはたこ焼きでしょ?

」と反論したんだけど、「違う。

あれはカリカリすぎてたこ焼きの魂を失っとる。

たこ焼きはもっとフワフワで、出汁が効いてて、中がとろーりしてなんぼや」と譲らない。

最終的には「お前はたこ焼きの何を知っとるんや!

」と、まるで私がたこ焼き文化を冒涜したかのような剣幕で怒られてしまった。

いや、知らんがな。

たこ焼きの魂って何。

そんなこと言われても、私は単身赴任先で、たまに仕事帰りに銀だこを買って帰るのが密かな楽しみだったりする。

熱々のたこ焼きをハフハフしながらビールを流し込む。

最高じゃないか。

あれがたこ焼きじゃなくて何だというのだ。

でも、そう言われてしまうと、なんだかモヤモヤするのも事実。

たこ焼きの定義とは一体何なのか。

そんなことを考えていたら、もう晩飯のことはどこかへ行ってしまった。

私はこういう、どうでもいい些細なことが気になり始めると、もう止まらない。

一度スイッチが入ると、それが頭の中をぐるぐる巡って、もう他のことが手につかなくなる。

昔からそうだ。

小学生の時も、給食で出た牛乳の賞味期限が「本日中」なのを見て、「これって午前中まで?

それとも夜の12時まで?

どっちなんだ!

」と真剣に悩んで、担任の先生に質問して、「いいから早く飲みなさい」と呆れられたことがある。

あの時も、結局答えは出なかったけど、牛乳はちゃんと飲んだ。

きっと、私の人生はそんな疑問と、未解決のまま流されていく日常の連続なんだろう。

そんなわけで、例の「銀だこ問題」について、ちょっと真剣に考えてみることにした。

いや、真剣って言っても、別に論文を書くわけじゃない。

ただ、自分の中で納得できる着地点を見つけたいだけだ。

関西の先輩が言ってること、確かに一理あるような気もする。

関西で食べた本場のたこ焼きは、確かに銀だことは別物だった。

外はカリッとではなく、全体的にとろりとしていて、一口食べると口の中に熱い出汁がじゅわーっと広がる。

あれはあれで、とんでもなく美味い。

正直、初めて食べた時は感動した。

「これが本物のたこ焼きか…!

」と、まるで桃源郷にでも迷い込んだかのような気分だった。

いや、言いすぎか。

でも、それくらい衝撃だったのは確かだ。

そこで、私はふと思った。

「これって、他の料理にも当てはまるんじゃないか?

」と。

例えば、餃子だ。

焼き餃子と揚げ餃子。

いや、ちょっと違うな。

焼き餃子は、皮をパリッと焼いたもので、たこ焼きでいう銀だこ的な存在かもしれない。

そして、水餃子は、皮がモチモチで、餡の旨味がダイレクトに伝わる。

これは、関西風たこ焼きに近いんじゃないか?

いや、でも水餃子と焼き餃子って、そもそも調理法が違うだけで、根本は同じ「餃子」だ。

揚げ餃子もそうだ。

どれも「餃子」という括りの中にある。

じゃあ、もっと適切な例えはないものか。

私の頭の中のデータベースを検索してみる。

データベースと言っても、私の脳みそに蓄積された単なる食い物の記憶の集合体だけど。

ムニエルと焼き魚、これはどうだろう。

ムニエルは小麦粉をまぶしてバターで焼く。

焼き魚は塩を振って焼く。

確かに違う料理として認識されている。

でも、どちらも「魚を焼く」という点は共通している。

あるいは、蕎麦とラーメン。

いや、これもちょっと違う。

麺料理という括りでは同じだけど、味付けも出汁も麺も全く別物だ。

これは「たこ焼き」と「銀だこ」どころの話じゃない。

根本的に別の料理だ。

考えすぎて、なんだか頭が混乱してきた。

例えが難しい。

関西の先輩が言う「銀だこはたこ焼きじゃない」という主張の根底には、「自分たちが育んできたたこ焼きこそが正統派であり、それ以外のものは亜流である」という、ある種の関西至上主義があるのではないか、と私は密かに分析している。

いや、分析っていうと大袈裟だけど。

でも、そういう「うちの地元のものが一番」っていう感覚、日本全国津々浦々、どこにでもある気がする。

例えば、うどん。

讃岐うどんにしても、名古屋のきしめんにしても、博多のごぼ天うどんにしても、それぞれが自分の地域のうどんこそが至高だと思ってるはずだ。

でも、それって、別に悪いことじゃないと思うんだ。

むしろ、それぞれの地域に根ざした食文化が多様に発展していく上で、ものすごく大事なことなんじゃないか。

みんなが「これが一番!

」って言ってるからこそ、切磋琢磨して、より美味しいものが生まれていく。

銀だこも、ある意味で、たこ焼きというジャンルの中で新しい価値を生み出したと言える。

カリカリで、中のとろーりとは違う食感。

あれはあれで、ひとつの完成された料理だ。

結局のところ、「銀だこはたこ焼きではない」という主張は、ある種の「こだわり」の表れなのだ。

それはまるで、私の「書店で話しかけられると心臓が飛び出る」という、誰にも理解されないかもしれない些細なこだわりのようなものだ。

いや、全然違うか。

でも、まあ、そういうことにしておこう。

あの先輩も、きっと銀だこが嫌いなわけじゃないんだ。

きっと、本場のたこ焼きを愛するがゆえに、他のたこ焼きを「たこ焼き」と認めることに抵抗があるだけなんだろう。

それはそれで、私は理解できる。

なぜなら、私自身、単身赴任先のスーパーで売っている「〇〇牛乳」が、実家で飲んでいた牛乳と微妙に味が違う気がして、なんだか落ち着かない、という、どうでもいいこだわりを持っているからだ。

いや、実際、本当に味が違うのかどうかは、成分表を見比べたわけじゃないから分からない。

でも、なんか違う気がするんだ。

そして、この「なんか違う」という感覚が、私にとっては結構重要なのだ。

結局、「銀だこはたこ焼きなのか否か」という問題に、明確な答えは出なかった。

いや、出ないだろう。

だって、それは個人の感覚や、育ってきた環境によって変わるものだから。

私が銀だこを「たこ焼き」として美味しく食べ続けることに、何の問題もない。

先輩が銀だこを「銀だこという別の料理」として認識することにも、何の問題もない。

ただ、もし次に先輩に会うことがあったら、「銀だこも美味しいですよね!

」と満面の笑みで言ってみようと思う。

きっと、先輩は「そうやろ?

だからあれはたこ焼きとちゃうんや」と、さらに熱く語り出すんだろうけど。

いや、それもまた一興だ。

結局、その日の晩飯は、冷蔵庫の豆腐と、スーパーで半額になっていた鶏むね肉で、適当に炒め物を作って食べた。

別に銀だこを食べたわけでも、たこ焼きを食べたわけでもない。

私の日常は、こんな風に、壮大な疑問を抱えつつも、結局は目の前の現実と、単身赴任先の寂しい食卓に戻っていくのだ。

それが、まあ、私の人生なんだろうな。

うん。

悪くない。

いや、ちょっと寂しいか。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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