名鉄百貨店で運命の絵画に出会ってしまった猫飼いの話

essay_1772470259570

📝 この記事のポイント

  • 図書館で借りた本の返却期限が過ぎていて、延滞金を払う羽目になった。
  • まさか、たった一日の遅れで百円取られるとはね。
  • 駅前のコンビニでフリスクが買える、あの百円だよ。

図書館で借りた本の返却期限が過ぎていて、延滞金を払う羽目になった。

まさか、たった一日の遅れで百円取られるとはね。

百円て。

駅前のコンビニでフリスクが買える、あの百円だよ。

別にフリスクが今すぐ欲しいわけじゃないけど、なんかこう、損した気分になるじゃない?

いや、そもそも借りた私が悪いんだけどさ。

返却ポストに突っ込めばいいだけなのに、なぜか「ちゃんとカウンターで返したい」っていう謎のこだわりがあって、結局いつもギリギリか、こうして延滞。

これはもう病気だ。

きっと。

そんな百円の痛手を抱えながら、私は意気消沈して名鉄百貨店に向かっていた。

閉店セール。

あの名鉄百貨店が閉店するなんて、ちょっと信じられない。

名古屋生まれ名古屋育ちの私としては、なんかこう、自分の記憶の一部がもぎ取られるような、そんな寂しさがあるんだよね。

小さい頃、おもちゃ売り場でねだり倒してプラレールを買ってもらった記憶とか、あとおばあちゃんに連れられて、最上階のレストランでお子様ランチを食べた記憶とか。

お子様ランチの旗、あれってなんであんなにときめくんだろうね。

今でもたまに、スーパーの冷凍食品コーナーで「お子様ランチセット」みたいなのを見かけると、無性に買いたくなるもん。

いや、買わないけど。

さすがに30代で一人暮らし、猫二匹と暮らす女が、お子様ランチの旗を立てて食べるのは、ちょっと寂しすぎるかなって。

いや、別に誰に見られるわけでもないから、いいのか。

どうなんだろう。

そんなことをぼんやり考えながら、百貨店の美術画廊にたどり着いた。

閉店セールだからって、まさか美術品まで安くなるわけじゃないだろうな、と半信半疑で足を踏み入れたのが運の尽きだった。

だって、そこにあったんだもん。

私の心を鷲掴みにする、一枚の絵画が。

描かれていたのは、猫。

それも、うちの猫たちにそっくりな、少し目つきの悪い茶トラと、ぽっちゃりしたキジトラ。

いや、そっくりっていうか、もはや彼らを描いたとしか思えない。

毛並みの質感とか、しっぽの丸まり方とか、窓辺でうとうとしているあの気だるい雰囲気とか、全部が全部、うちのポチとタマだ。

額縁も控えめだけど上品で、この絵がうちのリビングの壁に飾られているところを想像したら、もう、震えが止まらなかった。

「これは……運命だ」

思わず声に出してしまった。

周りのお客さんたちがギョッとした顔で私を見たけど、そんなことどうでもいい。

私は今、運命と出会ってしまったのだから。

値段を確かめたら、まあ、それなりのお値段。

いや、それなりどころか、私の月収の半分くらい。

正直、絵画にそんな大金を払ったことはない。

いや、そもそも絵画なんて一枚も持っていない。

賃貸マンションの壁に、よくわからない抽象画とか飾ってたら、なんかこう、気取ってるみたいで嫌じゃない?

っていうか、壁に穴開けられないし。

でも、これは違う。

これは、ポチとタマなのだ。

いや、違うけど。

でも、うちの子たちなのだ。

いや、違うんだけどさ。

その日はさすがに即決できなくて、頭を抱えながら帰宅した。

家に帰ったら、当のポチとタマが「おかえりー」と言わんばかりに足元にすり寄ってきた。

ああ、お前たち、お前たちの絵が、名鉄百貨店にいたよ。

しかも、とんでもない値段だったよ。

この子たちのためなら、何でもしてあげたい。

でも、絵を買うのは違うような気もする。

いや、でも、あの絵は本当に、本当に素敵だったんだ。

もう一度見に行こう。

そう心に決めて、翌日、私は再び名鉄百貨店へ向かった。

そして、また悩む。

悩んで悩んで、結局その日も買えずに帰ってきた。

どうしよう、どうしよう。

もう、この絵のことしか考えられない。

在宅でパソコンに向かっていても、ふとした瞬間にあの絵が脳裏に浮かぶ。

うちの猫たちが隣で寝ていても、どこか上の空。

ご飯を食べていても、洗濯物を畳んでいても、お風呂に入っていても、あの猫たちの視線が私を追いかけてくるような気がしてならない。

幻覚かな。

いや、幻覚だろうな。

これはもう、誰かに相談するしかない。

そう思って、私は会社の同僚(と呼んでいいのか、週に一度オンラインで会議するだけの仲だけど)や、大学時代の友人たちにメッセージを送った。

「名鉄百貨店で、うちの猫そっくりな絵を見つけちゃって、買いたいんだけど、めちゃくちゃ高くて悩んでる」と。

すると、アドバイスが続々と届いた。

A子からは「え、それって運命でしょ!

買っちゃいなよ!

絵ってさ、一生ものだよ?

ご飯何回分とかで考えちゃダメだよ!

」と、まるで自分のことのように興奮したメッセージ。

いや、ご飯何回分で考えない方が難しいよ。

うちの子たちはカリカリとチュールしか食べないけど、私の食費はそれなりにかかるんだから。

B男からは「ちょっと待って、本当にその絵、ちゃんとした画家の作品なの?

百貨店とはいえ、閉店セールってさ、ああいうところにも変なもの紛れてたりするからね。

贋作とか、よくあるじゃん。

ちゃんと調べてからにしなよ」と、冷静かつ疑り深いメッセージ。

いや、B男、あなたは一体何を疑ってるんだ。

そもそも贋作だったらどうするんだ。

返金してくれるのか。

というか、贋作だったとしても、私が気に入ったならそれでいいじゃん、という気持ちもあるけど、たしかに高額だし、ちょっと気にはなる。

C美からは「わかる!

私も昔、旅先で一目惚れした陶器があって、でもすごく高くて悩んだの。

結局買わずに帰ってきたんだけど、今でも後悔してる。

だから、もし本当に欲しいなら、後悔しないように買った方がいいと思うよ。

なんなら、私が半分出すから、一緒に買わない?

そしたら、私が半分所有するから、たまにうちに貸してね。

うちの猫たちも喜ぶと思う!

」と、まさかの共同購入提案。

いや、C美。

君の猫は白猫で、うちの猫は茶トラとキジトラだよ。

それに、絵画の共同所有って、なんだかすごくややこしくない?

誰の家に飾るのかとか、喧嘩になりそう。

D太からは「うーん、高額な買い物って、勢いが大事だよ。

一日考えて買わなかったら、もうそれは『そこまで欲しくない』ってことじゃないかな?

本当に欲しかったら、もうとっくに買ってるはずだよ。

冷静になった方がいい」と、まるで仙人のような悟りを開いたメッセージ。

いや、D太、あんたは何を言っているんだ。

たしかに衝動買いは危険だけど、高額なものこそ慎重になるべきだろう。

それに、私は冷静になんてなれてないんだよ!

みんなのアドバイスを総合すると、「買え!

」と「買うな!

」と「ちゃんと調べろ!

」と「一緒に買おう!

」の四者択一。

いや、全然まとまってないじゃん。

でも、こうして誰かに話を聞いてもらうだけで、なんだか少しだけ心が整理された気がした。

よし、もう一度見に行こう。

そして、今度は店員さんに聞いてみよう。

そう決意して、私は三度目の名鉄百貨店へ向かった。

閉店セールも終盤に差し掛かり、店内はさらに活気に満ちている。

美術画廊も、前回よりも人が多い気がする。

私の運命の絵画、まだあるかな。

ドキドキしながら目的の場所へ向かうと、そこには……なんと、絵画がない。

え?

嘘でしょ?

まさか、売り切れ?

誰かに買われちゃったの?

私の運命が、誰かの手に渡ってしまったの?

私は焦って、近くにいた店員さんに声をかけた。

「あの、すみません、猫の絵、ありませんか?

店員さんはにこやかに答えてくれた。「ああ、あの絵ですね。大変申し訳ございません。あちらは本日、売約済みとなりました。昨日、男性のお客様がご購入されました」

ガーン。

ショック。

あまりのショックに、私はその場で膝から崩れ落ちそうになった。

いや、崩れ落ちなかったけど。

寸でのところで踏みとどまったけど。

昨日、男性のお客様が。

ということは、D太のアドバイスは正しかったのか。

「一日考えて買わなかったら、もうそれは『そこまで欲しくない』ってことじゃないかな?

」いや、そんなことはない。

私は欲しかった。

欲しかったんだよ、D太。

でも、これで良かったのかもしれない。

あの絵は、私の家に飾られるべき絵ではなかったのだ。

きっと、もっとふさわしい場所があったのだろう。

それに、あの絵を買うためのお金は、うちのポチとタマのために使うべきだ。

高級なウェットフードとか、新しい爪とぎとか、あとは、猫用の自動給餌器とかもいいな。

最近、私がうっかり寝坊すると、ポチが起こしに来るんだよね。

いや、起こしに来るっていうか、顔を舐めてくるんだけど、その舌がザラザラしてて結構痛いんだ。

あれは「ご飯くれ!

」っていうサインなんだろうな。

あの自動給餌器があれば、私が寝坊しても大丈夫だし、ポチの舌攻撃も回避できる。

そう考えると、絵画を諦めて良かったのかもしれない。

結局、私は百貨店で何も買わずに帰路についた。

延滞金を払ってフリスクを買い損ねた百円といい、運命の絵画といい、なんか今日は色々とタイミングが合わない日だったな。

でも、家に帰れば、ポチとタマが「おかえりー」と足元にすり寄ってくる。

彼らの存在が、何よりも私にとっての宝物だ。

結局、あの絵画は買えなかったけど、私は図書館に延滞金を払い、名鉄百貨店の美術画廊で運命の猫の絵画に出会い、そして多くの友人たちからアドバイスをもらい、最終的には猫たちのための自動給餌器の購入を検討し始めた。

この一連の出来事を通して、私はある小さな発見をした。

それは、たとえ高額な買い物をしなくても、日常の些細な出来事や人とのやり取りの中に、たくさんの感情や気づきが詰まっているということ。

そして、猫はかわいい。

いや、これは発見じゃなくて、最初から知ってたことか。

でも、改めて、猫は本当にかわいい。

そういえば、図書館の延滞金、まさか百円だと思わなくて、財布から小銭を全部出して数えたら、百円玉がなくて五十円玉と十円玉の組み合わせで払ったんだよね。

なんか、それもまた、ちょっとした敗北感だった。

いや、別にどうでもいいんだけどさ。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

目次

📚 あわせて読みたい

 AIピック AI知恵袋ちゃん
AI知恵袋ちゃん
価格以上の価値がありそう!
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次