休日の昼下がり、ソファと猫と、ミッキーの秘密の話

📝 この記事のポイント

  • 休日の昼下がり、ソファで寝転んでいたら猫に顔を踏まれて目が覚めた。
  • 猫は悪びれる様子もなく、私の顔の上でふんふんと鼻を鳴らし、そのまま膝の上に着地した。
  • この家で一番偉いのは猫だ、と夫はいつも言っているけれど、あながち間違いではない。

休日の昼下がり、ソファで寝転んでいたら猫に顔を踏まれて目が覚めた。

猫の肉球は想像以上に硬い。

しかも、爪が少しだけ出ていた気がする。

猫は悪びれる様子もなく、私の顔の上でふんふんと鼻を鳴らし、そのまま膝の上に着地した。

この家で一番偉いのは猫だ、と夫はいつも言っているけれど、あながち間違いではない。

ぼんやりと天井を眺めていると、朝のコーヒーを飲むのを忘れていたことに気づいた。

猫を膝に乗せたまま、ゆっくりと体を起こす。

リビングの窓からは、まだ少しだけ傾いた西日が差し込んでいて、床の一部を明るく照らしていた。

埃がキラキラと舞っているのが見える。

見なかったことにしよう、と心に決めて、コーヒーを淹れることにした。

湯を沸かしながら、ふと冷蔵庫に貼ってあるマグネットに目が留まった。

それは、数年前に友達と行ったディズニーランドのお土産だ。

ミッキーマウスの顔の形をした、ごく普通のマグネット。

でも、その隣には、やけに存在感を放つ、別のマグネットが貼ってある。

それは、なぜか購入してしまった、ミッキーの耳の形をしたカチューシャを小さくしたようなマグネットだった。

あの時の衝動買いを思い出す。

「ねえ、ディズニーの小ネタ教えてよ!


数ヶ月前、学生時代からの友人、ユウカとランチをした時のことだ。

彼女は生粋のディズニー好きで、行くたびに新しいグッズを買っては私に見せびらかす。

その日は、たまたま私が以前行った時の話になって、「せっかくだから、なんか小ネタ教えてよ」と、突然のリクエストが飛んできた。

私は別に、ディズニーの熱狂的なファンというわけではない。

年に一度行けばいい方で、アトラクションに乗るよりも、パーク内の雰囲気を楽しんだり、チュロスを食べたりする方が好きだ。

小ネタなんて、そんなに持ち合わせているわけがない。

「えー、小ネタ?

何だろうね。

キャストさんの名札に書いてある名前は、本名じゃないことが多い、とか?


「知ってるし!

もっとディープなやつ!


ユウカは、私をじっと見つめながら、期待に満ちた瞳で次の言葉を待っている。

困ったな、と思いながら、頭の中を高速で回転させる。

何かあっただろうか。

そういえば、昔、夫がどこかで仕入れてきた話を私に披露してくれたことがあったような。

確か、夫が言っていたのは、ミッキーマウスの指差しポーズのことだ。

ミッキーが何かを指差す時、人差し指一本ではなく、基本的に親指と人差し指の二本で指差すらしい。

これは、アメリカでは人差し指一本で指差すのが失礼にあたるという文化があるから、とか。

あとは、ミッキーに四本指しかないから、人差し指一本だとちょっと寂しく見える、とか、諸説あるらしい。

「ミッキーが指差す時って、人差し指と親指の二本で指差してるんだって。

人差し指一本で指差すと、アメリカではちょっと失礼にあたるらしいよ?


そう言うと、ユウカは目を丸くして、「え、そうなの!

」と驚いていた。

「あとね、ミッキーの身長は諸説あるけど、だいたい2メートルくらいらしいよ」
「それ、ミッキーの着ぐるみの中の人の身長じゃない?


「あ、そっか」
我ながら、間の抜けた返答だったと思う。

ユウカはケラケラと笑いながら、「でも、二本指のやつは知らなかった!

今度から注意して見てみよう!

」と喜んでくれた。

よかった、ギリギリセーフ。

そんなことを思い出しながらコーヒーを啜っていると、ふと、あの時の衝動買いの品が目に入る。

冷蔵庫に貼ってあるマグネットではなく、もう一つの、実物大のミッキーの耳のカチューシャだ。

あれは、数年前、友達と行ったディズニーランドで、開園してものの5分で買ってしまったものだった。

その日は、朝から雨が降っていた。

私たちはレインコートを羽織り、足元はビニール製のブーツカバーで防備していた。

パーク内は、それでも多くの人で賑わっていたけれど、みんな少しだけ肩をすくめて歩いているようだった。

そんな中、私はショップの軒先で、キラキラと輝くミッキーの耳のカチューシャに目を奪われた。

スパンコールがびっしり敷き詰められた、ピンク色のカチューシャ。

その時は、なぜかそれが、雨降るパークで、唯一無二の輝きを放っているように見えたのだ。

「これ、可愛い!

買っちゃおっかな!


隣にいた友人が、少し呆れたような顔で私を見た。

「え、もう?

まだ何もアトラクション乗ってないよ?

しかも、それ、本当に使う?


その友人の言葉を無視して、私はレジへと向かった。

値段は、確か1600円くらいだったと思う。

まあ、決して安くはないけれど、この高揚感には代えられない、と、その時は本気で思っていた。

結局、そのカチューシャは、その日一日、私の頭の上で輝くことはなかった。

雨で濡れるのが嫌だったし、レインコートのフードをかぶると、耳が邪魔になったからだ。

アトラクションに乗る時も外さなければならないし、チュロスを食べる時も、なんだか邪魔だった。

結局、家に帰ってきて、袋から出したのは、一度だけ。

鏡の前でつけてみたけれど、どうも似合わない。

私の顔の形には、あまりにも可愛らしすぎるデザインだった。

「あー、やっぱり買うんじゃなかったな」
と、その時初めて後悔した。

衝動買いの典型的な失敗例だ。

しかし、不思議なことに、私はそのカチューシャを捨てることができなかった。

クローゼットの奥にしまい込むこともせず、部屋の隅のフックに、なんとなく引っ掛けてある。

普段は目に入らない場所だけれど、たまに掃除をする時などに、ふと目に留まる。

そのたびに、「ああ、また無駄なものを買ってしまったな」と、軽く自己嫌悪に陥る。

でも、同時に、あの雨の日のパークで、ピンク色のスパンコールがキラキラと輝いて見えた瞬間の、あのなんとも言えない高揚感を思い出すのだ。

数ヶ月前、ユウカとランチをした後、私はまたディズニーランドに行く機会があった。

夫と二人で、ゆっくりと過ごす休日だった。

その日も、特に何かを買うつもりはなかったのだけれど、パーク内をぶらぶら歩いていると、またしても、可愛らしいカチューシャが目に入ってしまった。

今度は、ミニーマウスのリボンがついた、シンプルな水玉模様のものだ。

一瞬、「また買っちゃうかも」という衝動に駆られたけれど、あのピンクのスパンコールカチューシャの二の舞になるのは嫌だと思い、ぐっとこらえた。

「でも、やっぱり可愛いよね」と、私が呟くと、夫が「おそろいで買っちゃう?

」と、悪魔の囁きをしてきた。

「いやいや、ダメでしょ。

家に使ってないのあるし」
そう言いながら、私は少しだけ名残惜しそうに、そのカチューシャを見つめていた。

結局、その時は買わずに済んだけれど、もし夫がもう少し強く勧めていたら、どうなっていたかは分からない。

そんな私だけれど、冒頭で話したユウカには、今度会う時に、もう一つ小ネタを教えてあげようと思っている。

それは、パーク内で売られているポップコーンのバケットのことだ。

あのバケットは、実は洗って再利用できるらしい。

しかも、次にパークに行った時に、そのバケットを持って行けば、中身のポップコーンだけを割引価格で補充してくれる、というものだ。

私もこれを知ったのは最近で、夫がどこからか仕入れてきた情報だった。

「え、そうなの!

今まで使い捨てだと思ってた!


と、私もユウカと同じように驚いたものだ。

この話は、きっと彼女も知らないだろう。

そして、この小ネタを聞いたユウカが、目を輝かせながら「今度行ったら、絶対バケット持って行ってみる!

」と言うだろう姿が、目に浮かぶようだ。

コーヒーを飲み干して、カップをシンクに置く。

猫はまだ膝の上で丸くなって寝ている。

部屋の隅に引っかかったままのピンクのスパンコールカチューシャは、相変わらずそこにいる。

あの衝動買いは、確かに失敗だったかもしれない。

けれど、こうして思い出すたびに、あの日の雨のパークの光景や、友達と話した時間、そして、ちょっとだけ得意げに小ネタを披露する自分を思い出させてくれる。

結局、私は、きっとこれからも、こういう小さな失敗を繰り返すのだろう。

無駄だとわかっていても、心のどこかで惹かれてしまうものがある。

そして、それを手に入れた瞬間の、あの根拠のない高揚感。

それでいいのだ、と思う。

人生は、そういう小さな、無駄な、けれど愛おしい瞬間でできているのかもしれない。

猫は、私がゆっくりと立ち上がると、不満そうな顔で「ニャー」と鳴いた。

その声を聞いて、私はまた、くすっと笑ってしまった。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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