📝 この記事のポイント
- 書店で立ち読みしていたら、知らない人に話しかけられて焦った。
- 休日の午後、人気のない郷土史コーナーで、背表紙を眺めながら「これはちょっと古いな、いやでもこの装丁はいい」なんて独り言を呟いていたところに、いきなり「あの、これ面白いですよね? 」って、左隣からヌッと顔が出てきたらさ。
- 相手は地元の70代くらいのおじいさんで、悪気はなさそうだったけど、僕は基本的にコミュ力がないので、とっさに「あ、あはは、そうですね」としか言えなかった。
書店で立ち読みしていたら、知らない人に話しかけられて焦った。
いや、焦るでしょ。
休日の午後、人気のない郷土史コーナーで、背表紙を眺めながら「これはちょっと古いな、いやでもこの装丁はいい」なんて独り言を呟いていたところに、いきなり「あの、これ面白いですよね?
」って、左隣からヌッと顔が出てきたらさ。
反射的に「ヒィッ」て声が出た。
ごめん、声出ちゃった。
相手は地元の70代くらいのおじいさんで、悪気はなさそうだったけど、僕は基本的にコミュ力がないので、とっさに「あ、あはは、そうですね」としか言えなかった。
郷土史に興味があるわけでもなかったんだけど、なんとなくバツが悪くてその本を買ってしまった。
まんまと乗せられた感がある。
でもまあ、これも何かの縁か。
転勤族で単身赴任中の身としては、こんな些細な出来事も日常のスパイスになる、と無理やりポジティブに変換して、レジで800円を払った。
沖縄に赴任してきて半年。
そろそろ慣れてきた、と言いたいところだけど、実はまだそんなに。
なんていうか、生活のペースが本土とはちょっと違う。
特に感じるのが、コンビニの品揃え。
僕のささやかな楽しみの一つが、仕事帰りにコンビニに寄って、その日の夕食のお供を探すことだ。
別に酒豪なわけじゃない。
むしろ下戸に近い。
でも、一人暮らしの自炊生活って、どうしても献立がマンネリ化するし、気分転上げるためには何かこう、特別なものが欲しくなる。
で、沖縄のファミリーマート。
これがまた、独特なんだよね。
入り口入ってすぐのところに、ドンと鎮座しているんですよ、「酒人ストロング」ってやつが。
もうね、名前からしてヤバい。
缶のデザインも、なんかこう、強そうな武士がドーンと描かれていて、いかにも「これ飲んだら一発でぶっ飛ぶぞ」みたいなオーラを放っている。
アルコール度数は9%とか12%とか、もうね、ストロング系のお約束をきっちり踏襲している。
「酒人」って漢字もまたいい。
酒を飲む人、じゃなくて、酒の「人」だからね。
酒が人格を持ったのか?
それとも、これを飲むと酒そのものになるのか?
想像するだけで震える。
僕が飲んだら間違いなく即死だろうな。
いや、飲んだことはないんだけど。
見るたびに「これ、どんな人が買うんだろう?
」って、小さな疑問が頭をよぎる。
なんかこう、仕事で大変なことがあって、もう何もかも忘れたい!
っていう人が手に取るのかなとか、いやいや、そんな切羽詰まった状況じゃなくて、むしろ「今日の晩酌はこれに限るぜ!
」って、日常的にストロングを愛する強靭な胃袋の持ち主もいるのかもしれない。
想像は膨らむばかりだ。
でもね、本当にヤバいのは、実はその隣に並ぶ泡盛のシリーズなんだよね。
一合瓶とか、小さいグラスに注がれて売られてるやつ。
あれが僕の好奇心をくすぐる。
だって、ほとんどの泡盛が40度以上なんだぜ?
ストロングチューハイが9%とか12%で「うわ、強い!
」ってビビってるのに、泡盛は平気でその3倍、4倍のアルコールを携えて、しかも「今日の晩酌にどうぞ」みたいな顔して並んでるんだから。
もうね、なんか異文化交流してる気分になる。
僕は基本的に、知らない土地に行くと、その土地の食べ物や飲み物を試してみる派だ。
だって、せっかく来たんだから、その地の文化に触れないと損じゃない?
で、沖縄に来てから、スーパーで初めて泡盛を買ってみたことがある。
もちろん、最初から40度以上なんて怖すぎて手が出ないから、25度くらいの初心者向けをチョイス。
ちっちゃい瓶のやつ。
確か、300円くらいだったかな。
で、家に帰って、意気揚々と氷を入れたグラスに注いでみたわけ。
一口飲んで、思った。
「あれ、これ、なんか薄い?
」って。
いや、25度だから別に薄いわけじゃないんだけど、なんかこう、想像してた「泡盛!
」っていう強烈な個性みたいなものがなくて、拍子抜けしちゃったんだよね。
期待値が高すぎたせいもあるかもしれない。
だってさ、沖縄の酒って言ったら、なんかこう、もっと独特な匂いがして、口の中がカーッと熱くなるような、そんなイメージがあったんだもん。
でも、飲んでみたら意外とあっさり。
焼酎にちょっと似てるかな、くらいの感覚だった。
それがきっかけで、ちょっと泡盛について調べてみたくなったんだ。
ネットで「泡盛 飲み方」「泡盛 種類」とかで検索してみる。
そしたら、これが奥深い。
まず、泡盛ってのはタイ米を原料にして、黒麹菌で造られるんだって。
焼酎は白麹とか黄麹を使うことが多いから、ここが大きな違いらしい。
そして、製造方法も独特で、全麹仕込みっていう、米麹と水だけで発酵させるやり方が主流なんだとか。
へえ、知らなかったな。
さらに調べていくと、「古酒(クース)」っていう概念が出てきた。
3年以上貯蔵した泡盛は古酒って呼んでいいらしく、熟成させると味がまろやかになって、香りも豊かになるんだって。
これはもう、ウイスキーとかブランデーの世界じゃないか!
しかも、泡盛って、瓶の中で熟成が進むらしいんだよね。
だから、買ってきて寝かせておけば、自宅で古酒が育てられると。
え、それマジか。
なんかロマンを感じるじゃないか。
僕の狭いキッチンに、そんな壮大なロマンが持ち込めるなんて。
その日以来、僕はスーパーやコンビニで泡盛の棚を見る目が変わった。
今まではただ「強い酒だな」としか思ってなかったものが、急にキラキラして見え始めたんだ。
特に気になるのが、名前の横に小さく書かれた「三年古酒」とか「五年古酒」の文字。
いや、五年も寝かせてるって、すごいな。
どんな味がするんだろう。
でも、いい古酒はそれなりのお値段がするから、なかなか手が出せない。
単身赴任の貧乏自炊生活には、ちょっとした贅沢だ。
結局、僕の泡盛ライフは、いまだに25度くらいの初心者向けをたまに買ってきて、ちびちびやる程度に落ち着いている。
たまに奮発して30度のやつに挑戦したりもするんだけど、やっぱり飲み慣れてないせいか、途中で「うーん、今日はもういいかな」ってなっちゃうんだよね。
でも、いつか、僕も「酒人ストロング」を躊躇なく手に取り、40度以上の泡盛を「今日の晩酌はこれに限るぜ!
」とばかりに楽しんでみたい、という野望は密かに抱いている。
でも、まあ、無理はしない。
結局のところ、僕の自炊生活は相変わらずだ。
スーパーで半額になったお惣菜を探し、たまには奮発して刺身を買って、安い缶チューハイを一杯だけ飲む。
そして、休日の昼下がりには、先日買った郷土史の本をパラパラとめくりながら、沖縄の歴史に思いを馳せる。
沖縄の食堂で、地元のおじいおばあに混じってソーキそばを食べるのが、僕にとっての一番の贅沢かもしれない。
昨日も、スーパーのレジで並んでいたら、僕の前に並んでいたおばあが、小さな一合瓶の泡盛を複数買っていた。
しかも、結構な銘柄のやつ。
僕はつい、そのレジ袋の中をチラッと見てしまったんだけど、その中に「酒人ストロング」は見当たらなかった。
きっと、あの人は日常的に泡盛を楽しんでいるんだろうな。
僕もいつか、そんな自然な感じで、沖縄の酒を嗜めるようになりたい。
今はまだ、その道の入り口に立ったばかり。
まあ、焦ることはない。
僕の沖縄生活は、まだ始まったばかりなんだから。
ゆっくりと、でも着実に、この地の文化に染まっていければいいな、なんて、ちょっとだけセンチメンタルな気分になったりするのだった。
いや、センチメンタルって柄じゃないんだけどさ。
とりあえず、今日の晩酌は、冷蔵庫に残ってたシークワーサーサワーでいいか。
だって、明日は早いし。
たぶん。
💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

