プリキュアと間違えられた俺の会計、あるいはレシートの謎

📝 この記事のポイント

  • ネットで注文した服のサイズが合わなくて、返品の手続きが面倒で放置している。
  • クローゼットの隅で、一度も袖を通されることなく、畳んだままのその服を見るたびに、僕の「後回し癖」がまた一つ記録を更新したような気分になる。
  • たぶん、このまま着ることも返品することもなく、数年後に「何これ? 」と首を傾げることになるんだろう。

ネットで注文した服のサイズが合わなくて、返品の手続きが面倒で放置している。

買ったのはもう二ヶ月も前の話。

クローゼットの隅で、一度も袖を通されることなく、畳んだままのその服を見るたびに、僕の「後回し癖」がまた一つ記録を更新したような気分になる。

たぶん、このまま着ることも返品することもなく、数年後に「何これ?

」と首を傾げることになるんだろう。

そんな僕が先日、スーパー銭湯でとんでもない会計間違いに遭遇した。

いや、間違いというよりは、僕自身が巻き起こした「誤解」というべきか。

週末の面会日、娘のサキと息子のアキラを連れて、僕たちはいつものスーパー銭湯へ向かった。

離婚してからというもの、週末だけ会える子どもたちとの時間は、僕にとって何よりも大切なものだ。

普段は仕事でいっぱいいっぱいだけど、この日ばかりは「パパ」モード全開。

子どもたちが喜んでくれるなら、少々無理な注文でも聞いてやる覚悟で臨む。

それが、僕なりの償いのようなものかもしれない。

サキは小学二年生、アキラは幼稚園の年長さん。

二人ともお風呂が大好きで、特に湯上がりのソフトクリームを楽しみにしている。

銭湯に着くと、まずは受付でリストバンドを受け取る。

最近のスーパー銭湯は、精算システムがすごく便利になった。

リストバンドをピッとかざせば、館内での飲食やマッサージ、ゲームコーナーの料金まで全て記録される。

おかげで財布をロッカーに置いて手ぶらで館内を移動できるし、お風呂上がりにお金を触らなくて済むから衛生的でいい。

僕はいつも「便利になったなぁ」と感心しつつ、一方で「これはこれで使いすぎちゃうんじゃないか」という一抹の不安を抱えている。

案の定、お風呂から上がって休憩スペースに直行した僕たちは、メニューを前にして目を輝かせた。

「パパ、これ食べたい!

」「僕もこれ!

」と、サキとアキラが指差したのは、期間限定の「プリキュアコラボメニュー」だった。

カラフルなゼリーソーダに、星形ライスが乗ったお子様ランチ。

普段はキャラクターものにそこまで執着しない二人なのに、こういう場所に来るとテンションが上がるらしい。

僕も「まあ、たまにはいいか」と、二人の要望をあっさり受け入れた。

だって、子どもたちの笑顔が一番だもの。

僕はハンバーグ定食、サキはプリキュアゼリーソーダとプリキュアお子様ランチ、アキラはプリキュアお子様ランチとプリキュアパンケーキを注文した。

念のため、店員さんに「プリキュアコラボメニューはまだありますか?

」と確認すると、「はい、まだございます!

」と元気な返事。

僕はリストバンドを差し出し、ピッ。

注文は無事に完了した。

料理が運ばれてくると、子どもたちは大喜びで写真を撮らせてくれとせがんだ。

サキはゼリーソーダのグラデーションにうっとりし、アキラはパンケーキのキャラクターチョコを「わー!

」と叫びながら指差す。

その姿を見ていると、僕の心にも温かいものがじんわりと広がる。

僕が頼んだハンバーグ定食は、ごく普通の、どこにでもあるようなハンバーグだったけれど、子どもたちの楽しそうな声を聞きながら食べるご飯は、どんな高級レストランの料理よりも美味しく感じられた。

食べ終わって、子どもたちが「パパ、ゲームコーナー行きたい!

」と言い出す。

僕は「よし、わかった。

じゃあ会計を済ませてからにしようか」と、リストバンドを持ってレジに向かった。

レジに到着し、リストバンドを店員さんに渡すと、店員さんは慣れた手つきでピッとかざした。

モニターに表示された合計金額を見て、僕は一瞬、目を疑った。

いや、正確には、合計金額よりも、その内訳に驚愕したのだ。

「プリキュアゼリーソーダ…2個」「プリキュアお子様ランチ…3個」「プリキュアパンケーキ…1個」「プリキュアキーホルダー…1個」「プリキュアミニタオル…1個」。

そこに僕が頼んだはずの「ハンバーグ定食」の文字はどこにもない。

合計金額はそこまで高額ではなかったものの、僕が頼んだ覚えのない「プリキュアキーホルダー」や「プリキュアミニタオル」まで計上されている。

僕は思わず、二度見どころか三度見してしまった。

「え、あの…僕、ハンバーグ定食を頼んだんですけど…」と、恐る恐る店員さんに声をかけると、店員さんはにこやかに答えた。

「かしこまりました!

お客様はプリキュアコラボメニューを沢山ご注文されていらっしゃいましたので、てっきり他のお客様の注文かと思いまして、今お連れ様のお会計を調べておりました!

」「え?

」僕は思わず間抜けな声を出してしまった。

どうやら、僕がプリキュアコラボメニューを大量に注文したせいで、店員さんは僕を「プリキュアコラボメニューしか頼んでいない客」と勘違いしていたらしい。

そして、レジに表示された僕のリストバンドの注文履歴を見たとき、「プリキュアメニューしかない」という事実に直面し、それを僕の「連れ」である子どもたちの注文だと判断。

僕自身のハンバーグ定食は「どこか他のリストバンドの注文」だと決めつけ、わざわざ僕の分のハンバーグ定食を探してくれていたのだ。

まさか、プリキュアコラボメニューを頼んだのが「僕の分」だと店員さんが微塵も疑っていなかったなんて。

僕は自分の耳を疑った。

「あの、すみません。

プリキュアコラボメニュー、全部僕のリストバンドで注文しました。

ハンバーグ定食も、僕のです」と正直に白状すると、店員さんは「えっ!

」と、目を見開いて固まった。

その顔には、驚きと、ほんの少しの困惑が浮かんでいた。

そりゃそうだ。

30代半ばの、バツイチおじさんが、子どもたちの分に加えて自分の分までプリキュアメニューを頼んでいるなんて、誰も思わないだろう。

しかも、キーホルダーとミニタオルまで。

いや、キーホルダーとミニタオルは本当に頼んでないんだけど。

店員さんはすぐに操作し直し、無事に僕のハンバーグ定食も合算された。

結局、キーホルダーとミニタオルは別の客の注文だったらしく、僕の会計からはちゃんと消去された。

あの時、僕の頼んだハンバーグ定食がプリキュアコラボメニューの中に紛れていなかったら、あるいは、キーホルダーやミニタオルが「プリキュアグッズ」という点で見過ごされていたら、僕は一体いくら支払っていたんだろう。

考えるだけで背筋が寒くなる。

それにしても、店員さんが僕のことを全く疑わずに「他のお客様の注文」だと判断したのには、ちょっとしたショックを受けた。

いや、ショックというよりは、むしろ「そうだよな」という諦めにも似た納得だったかもしれない。

だって、僕だって、もしレジの店員だったら、あの注文履歴を見て同じように思うだろう。

30代のおじさんが、プリキュアのお子様ランチを「自分の分」として頼むなんて、どう考えても不自然だ。

僕の言い訳としては、子どもたちが喜ぶ顔を見たくて、つい勢いで頼んでしまったというのがある。

いや、パンケーキはアキラの分で、僕はハンバーグ定食を頼んだんだ、と心の中で強く言い聞かせる。

でも、その言い訳も、プリキュアゼリーソーダが僕の分だったことを考えると、説得力に欠ける。

あれは、サキが「パパも飲んでいいよ!

」と言ってくれたから、一口だけ、ほんの一口だけもらったんだ。

いや、一口だけって言うには、結構な量を飲んだ気がする。

あのカラフルな見た目に、ちょっと心が惹かれたのも事実だ。

結局、僕は子どもたちのためにプリキュアメニューを頼んだ、という体裁を保ちたかっただけなのかもしれない。

自分の欲望を、子どもたちをダシにして満たそうとした、情けない大人。

そんな自虐的な思いが、僕の胸を締め付ける。

会計を終え、子どもたちとゲームコーナーへ向かう道すがら、僕はサキにそっと尋ねてみた。

「あのさ、パパがプリキュアゼリーソーダ飲んでたの、変だったかな?

」「うん?

別に変じゃないよ?

パパもプリキュア好きなんだね!

」サキの無邪気な一言に、僕はなんだか救われたような、いや、むしろ深淵に突き落とされたような、複雑な気持ちになった。

好きなんだね、って。

いや、別に、そこまでじゃないんだけど。

でも、否定するのもなんだか違う気がして、「まあね」と曖昧に答えてしまった。

アキラは僕の返事を聞いて、「パパもプリキュア!

」と叫びながら、僕の腕にしがみついてきた。

その小さな手の温かさに、僕はなんだか全てがどうでもよくなった。

今回の件で、僕は一つ学んだ。

いや、学んだというよりは、改めて認識した、というべきか。

それは、「人は見かけによらない、そして、人は思い込みで判断しがち」ということ。

僕自身も、普段の生活の中で、無意識のうちに誰かをステレオタイプに当てはめて見てしまっていることがあるかもしれない。

反省。

でも、プリキュアメニューの味は、意外と悪くなかった。

特に、あの星形ライス。

僕はもう一度、頼んでしまうかもしれない。

子どもたちに「パパも食べる?

」と聞かれたら、今度こそ、「うん、食べる!

」と胸を張って答えてやる。

そして、会計の時に店員さんが目を丸くしたら、「ええ、僕の分ですけど、何か?

」と、ちょっと得意げに言ってやるのだ。

もちろん、心の中では汗だくだけど。

たぶん、いや、きっと、僕はまた同じような失敗を繰り返すだろう。

返品手続きを放置した服のように。

だって、そういう人間なんだもの。

それでも、子どもたちの笑顔が見られるなら、プリキュアコラボメニューだって、まあ、悪くないかな。

次は、プリキュアのミニタオルも買ってみようか。

いや、それはやりすぎか。

でも、もしも子どもたちが欲しがったら、僕はきっと買ってあげるだろう。

そして、僕もこっそり使うかもしれない。

クローゼットの隅に、プリキュアのミニタオルがひっそりと仲間入りする日も、そう遠くないのかもしれない。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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