井の頭公園のムーミンと、僕の早すぎる決断の話

📝 この記事のポイント

  • ネットで注文した服のサイズが合わなくて、返品の手続きが面倒で放置している。
  • 正確に言えば、合わないとすら確認していない。
  • 届いたはいいけど、いざ試着しようとすると、「あれ? これ、もっと痩せてから着るやつじゃないか? 」という謎の思考が働いて、結局そのままクローゼットの隅に追いやられてしまうのだ。

ネットで注文した服のサイズが合わなくて、返品の手続きが面倒で放置している。

正確に言えば、合わないとすら確認していない。

ダンボールから出してもいない。

届いたはいいけど、いざ試着しようとすると、「あれ?

これ、もっと痩せてから着るやつじゃないか?

」という謎の思考が働いて、結局そのままクローゼットの隅に追いやられてしまうのだ。

まだタグもついたままだし、買った時の楽天ポイントが失効する前に、せめて段ボールだけは開けよう、そう思っている。

そんな僕が、先日、井の頭公園の雪ムーミンの話を聞いて、思わず「お前もか」と苦笑いしてしまった。

ニュースで見たんだけど、作者の方が「雪ムーミンは早めに谷へ帰りました」って報告していて、目撃した人たちから写真がぞくぞく集結したらしい。

谷へ帰った、なんて優しい表現なんだろう。

要するに、溶けてなくなった、ということだ。

はかない。

実に早すぎる。

雪のムーミンなんて、そりゃあ溶けるだろうとは思っていたけれど、それでもやっぱり、もうちょっと頑張って欲しかった、なんて勝手な期待をしてしまう。

僕の服の返品も、早めに谷へ帰ればいいのに。

週末、子どもたちと会う日だった。

小学三年生の長男と、まだ五歳の長女。

僕の住むマンションの最寄りの駅で待ち合わせをして、いつも通り、まずは公園へ向かう。

この日は少し肌寒かったけれど、前日の雪がまだ日陰に残っていて、長女は「ゆきー!

」と叫びながら雪だるまを作ろうと奮闘していた。

しかし、日差しが強く、地面に残った雪はシャーベット状。

かき集めようとすると、指の間から水が滴り落ちる。

手のひらがじんわり冷たくなって、すぐに「もうやだー!

」と叫び出した。

そうだよな、雪ってすぐに溶けるんだよな。

長男はそんな妹を横目に、少し離れた場所で枝を拾っては地面に何かを描いている。

近づいてみると、どうやらポケモンのキャラクターらしきものを描いているのだが、いかんせん地面が土と小石だらけで、全く形にならない。

それもまた、描いては消え、描いては消える。

雪ムーミンと一緒だ。

早すぎる。

あまりにも早すぎる。

彼の作品も、谷へ帰るスピードが速すぎる。

僕はといえば、その様子をベンチに座って眺めながら、自分の過去の失敗をいくつか思い出していた。

早すぎる決断、早すぎる諦め。

例えば、昔、熱帯魚を飼い始めた時のこと。

水槽立ち上げに必要な期間を待てずに、すぐに魚を入れてしまった。

結果、一週間も経たずに全滅。

水槽は早々に谷へ帰ってしまった。

言い訳をすれば、あの頃はまだ独身で、時間だけはあったものの、心に余裕がなかったんだ。

衝動的に何かを始めることで、心の隙間を埋めようとしていたのかもしれない。

ちょっとした生き物との触れ合いで癒やされたい、なんて、我ながら身勝手な話だ。

そんな失敗を繰り返すたびに、「次はちゃんと、計画を立てて、焦らずにやろう」と反省する。

でも、なぜかいつも同じ過ちを繰り返す。

衝動買いした服の返品期限を過ぎてしまったり、新しい趣味を始めても三日坊主で終わったり。

人生って、なんでこんなにも「早すぎる」ことだらけなんだろう。

僕の人生も、ちょっと早めに谷へ帰るものが多い気がする。

子どもたちと公園で遊んだ後、僕たちはいつものようにファミレスへ向かった。

長男はチーズインハンバーグ、長女はキッズプレート。

僕はというと、期間限定のフェアメニューにいつも惹かれるものの、結局は定番のチキンソテーを頼んでしまう。

冒険できない男なのだ。

隣のテーブルでは、小さな子どもがフォークを床に落としてしまい、お母さんが「もう!

またなの!

」と困った顔をしている。

その光景を見て、僕はふと思った。

僕もそうやって、いつも「またなの!

」って言われるような失敗を繰り返しているな、と。

「パパ、これ見て!

」と、長女がキッズプレートの旗を僕に見せる。

そこには可愛らしい動物の絵が描かれていて、裏には「がんばったね!

」の文字。

僕も誰かに、こんな旗をプレゼントしてほしい。

返品手続きを頑張ったね、とか、衝動買いを我慢したね、とか。

まあ、衝動買いは我慢できてないんだけど。

食事が終わって、子どもたちを連れてマンションに戻る途中、長男が「ねえパパ、今度雪が降ったら、もっと大きい雪だるま作ろうね」と言った。

長女も「うん!

おっきいの!

」と声を揃える。

僕は「うん、そうだね。

今度は溶けにくいやつを作ろうな」と答えた。

溶けにくい雪だるま。

それは一体どんな雪だるまなんだろう。

きっと、土台をしっかり作って、固く固く雪を押し固めて、日陰に置いておく。

そうやって、少しでも長く、その姿を保てるようにするんだろう。

それはまるで、僕の人生みたいだと思った。

早すぎる決断や、早すぎる諦め。

それを少しでも減らして、長く、大切にしたいものを見つけること。

そのためには、やっぱり土台をしっかり固めて、焦らず、じっくりと向き合う時間が必要なんだろう。

僕のクローゼットの隅に追いやられた服も、もし今、ちゃんと試着して返品していれば、もう少しだけ僕の心は軽かったかもしれない。

次に雪が降ったら、僕は子どもたちと一緒に、きっと今までで一番大きな雪だるまを作るだろう。

そして、その雪だるまが溶けてしまうまで、じっと見守る。

そのはかなさも、また愛おしいものだと思えるくらいに、僕は少しは成長しているだろうか。

たぶん、その雪だるまも、あっという間に谷へ帰ってしまうんだろうけど。

でも、それもまた、僕たちの思い出の一部になるのだ。

だから、まずは、僕もそろそろ、放置しているあの服の段ボールを開けるところから始めよう。

そして、次の服の購入は、もう少しだけ吟味しよう。

たぶん、無理だろうけど。

また同じような服を買って、同じように放置する未来が見える気もするけれど、それでも、とりあえず、今日のところはそう思っておくことにする。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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 AIピック AI知恵袋ちゃん
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