その漫画、私も知りません。靴下片方紛失と漫画界の奥深い闇の話

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📝 この記事のポイント

  • どうやら我が家の洗濯機は、密かに靴下を食料としているらしい。
  • それも、よりによって私のお気に入りの、足の裏に滑り止めがついたスポーツソックスばかりだ。
  • きっと、洗濯槽の裏側には、食べ残された私の靴下たちの怨念が渦巻いているに違いない。

洗濯物を干していたら、靴下の片方がない。

これで今月3枚目である。

どうやら我が家の洗濯機は、密かに靴下を食料としているらしい。

それも、よりによって私のお気に入りの、足の裏に滑り止めがついたスポーツソックスばかりだ。

きっと、洗濯槽の裏側には、食べ残された私の靴下たちの怨念が渦巻いているに違いない。

「またやっちまったな」と、濡れたTシャツをパンパン叩きながら、空のハンガーを虚しく見つめる。

この靴下紛失事件、実は昔から私を悩ませている問題の一つだ。

妻に言わせれば「ちゃんとペアで洗濯かごに入れとけばいいのよ」の一言で終わる話なのだが、それがどうにも難しい。

脱ぎっぱなしの靴下を息子が蹴飛ばし、フローリングの隅に吸い込まれていく光景を何度目にしたことか。

あるいは、風呂上がりに「やべ、忘れた!

」と焦って放り込んだ洗濯かごの中で、他の洗濯物に紛れて行方不明になるパターン。

どれもこれも、私のずぼらさと家族のダイナミックな生活が織りなす、不可避の悲劇なのだ。

「きっと、どこかの異次元空間に吸い込まれてるんだよ。

で、いつかパラレルワールドの俺が、俺の靴下を履いてるんだ。

」と、かつて長男に力説したことがある。

長男は「ふーん」と生返事しながら、手に持った漫画に目を戻していた。

その漫画は、私が子供の頃に読んでいた『少年ジャンプ』系のバトル漫画とは明らかに違う、キラキラした絵柄の学園モノだった。

長男が夢中になっている漫画について、私はほとんど知識がない。

書店で平積みされている人気作を見て、「へえ、こんなのが売れてるんだ」と驚くばかりだ。

先日、家族でショッピングモールに行った時のこと。

長男が漫画コーナーで立ち止まり、「これ、欲しい!

」と指差したのが、表紙に可愛い動物がたくさん描かれた、何やら『癒やし系』っぽい漫画だった。

「へえ、これもジャンプの漫画?

」と聞くと、長男は「違うよ、これ『花とゆめ』だよ」と呆れた顔で教えてくれた。

『花とゆめ』。

ああ、少女漫画誌か。

昔、妹が読んでいた記憶がうっすらとある。

私の知っている『花とゆめ』は、セーラー服の女の子が王子様みたいな男の子と恋をする、みたいな話が多かった気がするが、どうやら今は動物がメインキャラの漫画も載っているらしい。

時代は変わるもんだな、と妙に感心してしまった。

そんな風に、自分が知らない漫画の世界が広がっていることに気づくたび、私はちょっとした浦島太郎状態になる。

つい最近も、本屋のレジに並んでいたら、前の女性客が何冊か漫画を買っていた。

ふと目に入ったその漫画のタイトルが『熟年離婚マニュアル』。

え?

漫画で?

しかも表紙には、険しい顔をした中年夫婦が描かれている。

一瞬、ビジネス書かと思ったが、どう見ても漫画だ。

思わず二度見してしまった。

まさか、学習漫画や実用漫画のジャンルに、ここまで攻めたテーマがあるとは。

しかも、その女性は真剣な顔つきでそれを抱えていたから、余計に衝撃が大きかった。

これはきっと、自分と同じか、少し上の世代の女性がターゲットなんだろう。

まさか、私が小学生の頃に読んでいた『ドラえもん』の学習漫画シリーズが、こんな進化を遂げているとは夢にも思わなかった。

その隣には、『今日から始める不倫のススメ』という、これまた刺激的なタイトルの漫画も並んでいた。

いや、タイトルは適当に言っただけだけど、そんなニュアンスの、昼ドラのようなドロドロした人間模様が描かれている漫画が、かなりの売れ行きを見せているらしい。

レジの奥で、店員さんが「〇〇先生の新刊、また品薄ですねー」と話しているのが聞こえてきた。

なるほど、私が知らないだけで、世の中にはとんでもない漫画がヒットしているんだな。

これって、例えるなら、自分はラーメンとカレーと焼き肉くらいしか知らなかったのに、突然目の前に「ガレット」とか「タルト・フランベ」とかいう料理が出てきて、「え、これもご飯なの!

」ってなっている感覚に近い。

いや、例えが絶妙に分かりにくいな。

つまりは、自分の『漫画』の概念を遥かに超えたものが、当たり前のように売れているという事実に、軽いめまいを覚えたのだ。

家に帰ってその話を妻にしたら、「あら、それ、ネットの広告でよく見るわよ。

結構面白いって評判みたいよ?

」とあっさり言われて、さらに驚いた。

私が見ていないところで、妻は着実に情報を取り入れているらしい。

彼女は言う。

「漫画って、もう子供が読むものだけじゃないのよ。

大人が現実逃避したり、共感したり、勉強したりするものなの。


なるほど、現実逃避。

それは分かる。

疲れた一日の終わりに、何も考えずにページをめくる心地よさ。

私にとっては、それが昔ながらのバトル漫画だったりするのだけど、妻にとっては、もしかしたら『熟年離婚マニュアル』なのかもしれない。

いや、まさか。

うちの夫婦仲は良好なはずだ、と、一瞬冷や汗をかいてしまった。

そういえば、先日も娘が図書館で借りてきた漫画を読んでいたのだが、それが『小学生のための生き方図鑑』みたいなタイトルだった。

中身を覗き見ると、いじめ問題や友達との付き合い方、SNS(いや、これはダメだったな)でのマナーについて、登場人物たちが物語形式で学んでいく内容だった。

娘はそれを真剣な顔で読んでいて、「パパ、これってどう思う?

」と、漫画に出てくる倫理的な問題について意見を求めてきたこともある。

私は「う、うーん、そうだね、難しい問題だね」としか答えられず、内心では「こんな難しいことを小学生の漫画で扱ってるのか!

」と驚いていた。

私の小学生時代は、『キン肉マン』で友情パワーに感動したり、『ドクタースランプ』でアラレちゃんのうんち棒に爆笑したりするくらいが関の山だったのに。

漫画の世界は、私が想像するよりもはるかに奥深く、多様性に富んでいる。

それはまるで、靴下の片方が行方不明になる謎のように、不可解で、しかし確かな現実として存在しているのだ。

私が知っている漫画の世界は、あの靴下の片方のように、全体の一部に過ぎなかったのだと痛感する。

もしかしたら、洗濯機の向こう側には、私が知らないだけで、洗濯機専門の漫画や、靴下探偵の漫画が売れているのかもしれない。

そしてその漫画を、私と同じように靴下の片方をなくしたお父さんたちが、必死の形相で読んでいるのかもしれない。

そんなことを考えながら、今日も私は、洗濯機から出てきた無残な片方だけの靴下を眺める。

さすがに今度こそ、洗濯物を入れる前にペアを確認しよう。

いや、無理かもしれない。

だって、私の靴下を食料にしている洗濯機と、それを蹴飛ばす子どもたち、そして片付けられない私の三位一体の連携プレーは、あまりにも強固だからだ。

結局、私は今日も、自分が知らない漫画の世界と、片方だけの靴下に思いを馳せながら、もう片方の靴下を探す旅に出るのだ。

きっと、その旅の途中で、また新たな未知の漫画と出会い、そしてまた驚愕することになるのだろう。

そんな私の日常は、今日も、どこかユーモラスで、少しばかり物悲しい。

だが、それこそが、この退屈なようでいて、決して飽きさせない日々の醍醐味なのかもしれない。


💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。

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