📝 この記事のポイント
- ゴミ出しの日を間違えて、週末までゴミを抱えて暮らすことになった。
- 金曜の朝、意気揚々とゴミ袋を抱えて階段を降り、収集所へ向かったら、そこには何もない。
- あれ? 今日は燃えるゴミの日じゃないのか。
ゴミ出しの日を間違えて、週末までゴミを抱えて暮らすことになった。
金曜の朝、意気揚々とゴミ袋を抱えて階段を降り、収集所へ向かったら、そこには何もない。
あれ?
今日は燃えるゴミの日じゃないのか。
スマホのカレンダーアプリで確認すれば一発なんだけど、なぜかその時だけは「いや、私の記憶が正しいはず!
」という謎の自信が湧いてくる。
結果、私の記憶はいつも裏切られる。
呆然と立ち尽くす私を、リードの先の愛犬ハルが「ママ、何してるの?
早くお散歩行こうよ!
」とばかりにグイグイ引っ張る。
犬って、人間のこういう情けない場面には全く忖度してくれないのが清々しい。
むしろ「まだ?
いつまでこの変な袋持ってるの?
」くらいの視線を送ってくる。
仕方なく、またゴミ袋を抱えて家に戻り、週末までリビングの隅に鎮座する巨大なゴミの山と暮らす羽目になった。
いや、ゴミの山って言うと大げさだけど、透明のポリ袋から透けて見える食べ残しのカスとか、使い終わったティッシュとかが、妙に存在感を放つのだ。
特に、夏場の生ゴミの匂いは、ちょっとしたホラー。
「あら、ごめんねハル。
また間違えちゃったね」と謝ると、ハルは「別にいいけど、早くあの袋、どっかやってよ」とでも言いたげに、鼻を鳴らしてぷいと顔をそむける。
その態度、まさに思春期の娘。
いや、娘いないけど。
このゴミ出し問題、もう何年も解決しない私の永遠の課題だ。
昔は実家暮らしで、親がやってくれていたからなぁ、なんて言い訳が頭をよぎる。
でも、もう四十路だろ、いい加減にしろよ私。
とはいえ、この週末限定のゴミ屋敷状態も、なんだかんだで慣れてくるもので。
最初は「匂いが…」とか「見た目が…」とか言ってたのに、二日目にはもう背景の一部と化している。
ハルも最初は怪訝な顔でクンクン匂いを嗅いでいたけれど、今ではそのゴミ袋を枕にして昼寝をしたりしている。
いや、やめろよハル。
せめて頭はゴミじゃない方に向けてくれ。
そんなゴミ袋との奇妙な共同生活を送っていると、ふと昔、テレビで見た工場の朝礼風景を思い出した。
朝っぱらから、みんなでラジオ体操をしているアレだ。
工場だけじゃなくて、会社でも学校でも、色々な場所でやっているのを見るたびに、正直「え、まだやってるの?
」「なんかシュール…」なんて思っていた。
特に、大人たちが真剣な顔で「腕を前から上に、上げてぇー!
」とかやってるのを見ると、ちょっとフフッてなっちゃう自分がいた。
なんであんな真面目な顔で、あの音楽に合わせて体操するんだろうって。
でも、ある時、知り合いのフリーランスのデザイナーさんとの飲み会で、その人が昔、自動車部品の工場でアルバイトをしていた時の話を聞いた。
「あのラジオ体操な、最初はバカにしてたんだよ。
みんなで腕ブンブン振って、なんでこんなこと…って。
でも、あれ、意味あるんだぜ」って、熱弁してたのが妙に印象に残っている。
なんでも、工場で働く人たちって、同じ体勢で何時間も作業したり、重いものを持ったりするから、身体のどこかしらに負担がかかりやすいらしい。
特に、朝イチでいきなり作業を始めると、ぎっくり腰になったり、腱鞘炎になったりするリスクが高いんだと。
そこで、あのラジオ体操が役に立つ。
あれって、全身の関節をゆっくり動かして、筋肉を伸ばすように作られてるんだって。
「あれをやってから作業するのとしないのとじゃ、マジで身体の動きが全然違うから」って言ってた。
労災対策のため、って聞くと、途端にあのシュールな風景が、ものすごく理にかなった動きに見えてくるから不思議だ。
その話を聞いてから、私はちょっと反省した。
自分の身体をろくに労わらず、ただ「ゴミ出し間違えたー」とか「肩こりがー」とか言ってばかりの自分と、毎日ちゃんと身体を動かして仕事に臨む人たち。
あの体操、見た目以上にすごい効果があるんだなと、四十路になってようやく気づいた。
最近、私も朝起きると妙に関節がギシギシ言うことがある。
特に冬場は顕著で、布団から出る時なんか「うぐっ…」とか、変な声が出ちゃう。
猫背気味でパソコンに向かう時間が長いせいか、肩甲骨周りがいつもガチガチだ。
ハルを抱き上げようとして、「いててて!
」ってなることもしばしば。
ハルは体重8キロくらいなんだけど、昔はもっと軽々と抱っこできたのに、今はちょっと気合が必要だったりする。
これって、もしかして身体が固まってるってことだよな、絶対。
ある朝、ハルとの散歩中、近所の公園で、おじいちゃんおばあちゃんたちが集まってラジオ体操しているのを見かけた。
みんな、ものすごく楽しそうに、そして真剣に身体を動かしている。
音楽に合わせて、きっちり「伸びの運動」とか「胸を反らす運動」とかやってるのを見て、なんだか胸が熱くなった。
彼らにとっては、もはや日常の一部なんだろう。
そして、それが健康を維持する秘訣なんだろうな、と。
帰り道、私はゴミ袋を抱えながら、公園で見たおじいちゃんおばあちゃんたちの動きを真似てみた。
「腕を前から上に、上げてぇー!
」と心の中で叫びながら、ゴミ袋を持ったまま腕を上げてみる。
もちろん、ハルは私の変な動きに「またママ、変なことしてる…」とばかりに、半目で私を見上げている。
でも、なんとなく、肩周りが少しだけ軽くなったような気がしないでもない。
いや、プラシーボ効果かもしれないけど。
ゴミ出しを間違えた週末、私は決心した。
来週から、ゴミ出しの日を間違えないように、スマホのカレンダーにリマインダーを設定しよう。
そして、朝起きたら、まずラジオ体操をやってみよう。
完璧にじゃなくていい。
まずは「伸びの運動」だけでもいい。
四十路のギシギシ関節を、少しでもスムーズに動かせるように。
ハルが引くくらい、本気でやってみようかな。
…いや、でも、たぶん三日坊主で終わるんだろうな、私。
いつものことだ。
いや、今回は違う、と心に誓いつつ、リビングの隅のゴミ袋をチラリと見た。
ハルが、そのゴミ袋を枕にして、すやすやと寝息を立てている。
その無邪気な寝顔を見ていると、なんだかどうでもよくなってきた。
ま、いっか。
まずは、ゴミを出すことからだな。
ラジオ体操は、それからだ。
うん。
💡 このエッセイは、Togetterの話題から着想を得て、2026年の視点で書かれた創作記事です。
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