📝 この記事のポイント
- コードエディタを開く時間が、以前より少し楽しくなった。
- TypeScriptでバックエンドを書く仕事を始めて半年。
- 同僚が書いたコードを見ては「RepositoryとかServiceとか、なんとなくわかるけど、これで合ってるのか」と不安になる日々だった。
コードエディタを開く時間が、以前より少し楽しくなった。
TypeScriptでバックエンドを書く仕事を始めて半年。同僚が書いたコードを見ては「RepositoryとかServiceとか、なんとなくわかるけど、これで合ってるのか」と不安になる日々だった。
ドメイン駆動設計への理解・浸透が進み、Qiitaでは7千記事以上が投稿されている2026年1月、ちゃんと学ぼうと決めた。
TypeScriptで学べる本が、ほとんどなかった
Web で「ドメイン駆動設計 TypeScript」と検索していた。
個人ブログや Qiita の記事は見つかる。でも断片的で、「これで全体像が掴めるのか」と思った。成瀬允宣さんの『ドメイン駆動設計入門』は C# で書かれていて、エリック・エヴァンスの原著は2003年の本だ。
2026年1月21日に発売されたこの本は、タイトルに「TypeScript」と明記されている。
監修が増田亨さんだった。『現場で役立つシステム設計の原則』の著者だ。調べると、著者の山下祐也さんは Zenn で2,356の「Like」を獲得した記事を書いていて、この本はそれをベースに大幅加筆したものだという。
迷いはなかった。つくりながら学ぶ! ドメイン駆動設計 実践入門を購入することにした。
360ページは、思ったより軽かった
数日後、届いた本を手に取った。
360ページ。厚みはそれなりにある。でもエリック・エヴァンスの原著が560ページ以上であることを考えると、読み切れる気がした。
目次を眺める。Part 1が「招待」、Part 2が「ビジネス価値の発見」、Part 3が「実装」、Part 4が「ビジネス価値を守り続ける」。
構成が明快だった。
最初の Chapter 2 を読んだとき、「これは座学の本じゃない」と気づいた。ビジネス課題から入り、なぜドメイン駆動設計が必要なのかを説く。そして Chapter 3 からは「オンライン書店のカタログ管理」という具体的な題材が登場する。
イベントストーミング、UML、そして TypeScript の実装。
全部が一本の線でつながっていた。
3週間、毎晩30分ずつ読んだ
平日は仕事から帰って夕食を済ませた後、休日は午前中に読んだ。
最初の1週間は Part 1 と Part 2 に集中した。戦略的設計、業務知識の獲得、ドメインモデルの可視化。ここまでは理論中心だけれど、具体的な書店のシナリオがあるから想像しやすい。
2週間目は Part 3 の実装フェーズ。
値オブジェクト、エンティティ、集約、リポジトリ、アプリケーションサービス。それぞれの章に TypeScript のコードがある。GitHub リポジトリで各章のコードを確認しながら読み進めた。
これが助かった。
紙の本だとコードが読みづらいことがある。でもこの本は GitHub で完全なコードを提供していて、自分の環境で実際に動かせる。VSCode で開いて、型定義を追いながら「なるほど、こうやって書くのか」と納得した。
3週間目は Part 4 を読んだ。
イベント駆動アーキテクチャ、Outboxパターン、イベントソーシング。正直、まだ完全には理解していない部分もある。でも「こういう発展的な手法がある」と知れただけで収穫だった。
「なんとなく」が「確信」に変わった
読み終えて、最初に感じたのは安心感だった。
Repository の役割、Application Service と Domain Service の違い、集約の境界の決め方。これまで「なんとなく」やっていたことに、ちゃんと理由があった。
ドメイン駆動設計の本質は、ビジネスの中核となる領域を見極め、そこに開発リソースを集中させることだと書かれていた。技術のための技術じゃない。ビジネス価値を最大化するための設計手法だ。
実際のプロジェクトで試してみたくなった。
先週、新しい機能を実装する機会があった。いつもなら「とりあえず動けばいいか」と思う場面で、「これはどのドメインモデルに属するべきか」を考えた。
コードの見通しが、明らかに良くなった。
完璧ではない部分もある
正直に言うと、気になった点もある。
Part 2 のモデリング部分は、もう少し詳しく知りたかった。イベントストーミングの具体的な進め方や、ドメインエキスパートとの対話の実例がもっとあれば、現場で使いやすかったと思う。
あと、TypeScript 特有の話題がもっとあると嬉しかった。
たとえば、型ガードの活用方法や、Branded Types の使い方。これらは TypeScript でドメインモデルを実装するときに役立つテクニックだけど、本書では触れられていない。
それでも、360ページという分量を考えれば十分だ。
この本は「DDD の全て」を教えてくれるわけじゃない。でも「DDD を始めるための地図」としては最適だと思った。
エリック・エヴァンスと成瀬允宣、どちらを選ぶか
エリック・エヴァンスの『ドメイン駆動設計』は2003年に刊行された定番書で、多くの開発者がバイブルとして読んでいる。体系的で深い内容だけど、560ページ以上あり、抽象度も高い。
成瀬允宣さんの『ドメイン駆動設計入門』は、ボトムアップでわかりやすく、実装パターンから学べると評判だ。C# でのサンプルコードがあり、初学者に優しい構成になっている。
この『つくりながら学ぶ!』は、その中間に位置すると感じた。
TypeScript という現代的な言語を使い、オンライン書店という具体的な題材で、戦略的設計から戦術的設計まで一気通貫で学べる。ハンズオン形式だから、読むだけじゃなく「つくりながら」理解できる。
もしあなたが TypeScript を書いていて、「ちゃんとした設計を学びたい」と思っているなら、この本が一番近道だと思う。逆に、「DDD の哲学を深く知りたい」なら、エリック・エヴァンスの原著が合うだろう。
どの本を選ぶかは、今の自分に何が必要かによる。
コードレビューで、会話が変わった
今週のコードレビューで、先輩エンジニアとの会話が変わった。
「この処理、集約の境界を超えてない?」と聞かれたとき、すぐに意図が理解できた。以前なら「集約って何だっけ」と思っていたはずだ。
修正案を出して、「こうすればドメインの整合性が保てます」と説明した。
先輩が笑って「勉強したね」と言った。
そうだ、勉強した。3週間、毎晩30分ずつ。でもそれだけで、コードを書く自信が変わった。
TypeScript でバックエンドを書く人へ
この本は、万能ではない。
モデリングの詳細や、TypeScript 固有のテクニックを深く知りたい人には物足りないかもしれない。また、DDD の原理原則を哲学的に学びたい人には、エリック・エヴァンスの方が合うだろう。
でも、「TypeScript でちゃんとした設計を学びたい」と思っているなら、これ以上の選択肢は今のところ見当たらない。
2026年1月時点で、TypeScript でのドメイン駆動設計を体系的に学べる本は、本当に少ない。この本は、その貴重な一冊だ。
朝、VSCode を開く。
今日書くコードも、「なんとなく」じゃなく「意図を持って」書ける。それだけで、エンジニアとしての日々が少し変わった気がする。
商品情報
つくりながら学ぶ! ドメイン駆動設計 実践入門 / TypeScriptでのWeb APIサーバー構築・360ページ・GitHub特典付き / ¥3,729(税込)
※この記事は2026年1月時点の個人的な使用体験に基づいています。
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