📝 この記事のポイント
- 都心行きの電車は、相変わらずの満員御礼だった。
- 押しつぶされそうになりながら、僕はスマホを取り出してニュースアプリを開いた。
- 今日のトップニュースは、依然として生成AIの進化に関するものばかり。
2026年1月23日。
都心行きの電車は、相変わらずの満員御礼だった。押しつぶされそうになりながら、僕はスマホを取り出してニュースアプリを開いた。今日のトップニュースは、依然として生成AIの進化に関するものばかり。去年あたりから、まるでSF映画のような世界が現実味を帯びてきて、正直、少しばかり不安を感じている。
「次は、渋谷、渋谷。お出口は左側です。」
アナウンスが響き、僕はリュックを抱え直した。渋谷駅は、いつも人の波が激しい。若者たちのエネルギーが渦巻いているようで、たまに圧倒される。僕は、そんなエネルギーを横目に、いつものカフェへと足を運んだ。
カフェの窓際の席に座り、エスプレッソを注文した。湯気が立ち上るコーヒーを一口飲むと、少しだけ心が落ち着いた。目の前には、スクランブル交差点が見える。無数の人々が、それぞれの目的地を目指して足早に歩いている。
僕の名前は、ユウタ。28歳。都内のIT企業でシステムエンジニアとして働いている。仕事は、正直言って、それほど面白いとは思えない。毎日、同じようなコードを書き、同じような会議に出席する。でも、給料はそこそこ良いし、残業も少ない。だから、まあ、悪くはないと思っている。
最近、会社で支給されたキーボードが、薄型になった。まるでノートパソコンのキーボードみたいに、ペタペタとした感触で、全然打ち心地が良くない。前のキーボードは、もっとしっかりとした打鍵感があって、タイプするたびに「カチャカチャ」と心地良い音がした。あの音が、僕の仕事のモチベーションを保ってくれていたと言っても過言ではない。
「自腹でキーボード買っちゃおうかな…」
僕は、心の中で呟いた。でも、冷静に考えると、別に我慢できないほどではない。それに、今の会社のキーボードは、一応、人間工学に基づいて設計されているらしい。肩こりとか、腱鞘炎とか、そういうのを予防する効果があるらしい。
「健康のためなら、仕方ないか…」
僕は、そう言い聞かせて、スマホを閉じた。カフェには、僕と同じように、パソコンを開いて仕事をしている人が何人かいる。みんな、真剣な表情で画面を見つめている。
「あの人たちも、きっと、いろいろと悩みながら生きているんだろうな…」
僕は、ぼんやりとそう思った。
会社に着くと、早速、薄型キーボードと向き合うことになった。やっぱり、打ちにくい。キーのストロークが浅すぎて、タイプしている感覚がない。まるで、画面を撫でているみたいだ。
「あー、イライラする…」
僕は、小さく舌打ちをした。
隣の席に座っているのは、入社3年目の後輩、ミサキだ。彼女は、いつも明るくて元気で、僕の部署のマスコット的な存在だ。
「ユウタさん、おはようございます!」
彼女は、僕に笑顔で挨拶をした。
「おはよう、ミサキ。今日も元気だね。」
僕は、彼女に笑顔で返した。
「当たり前じゃないですか! 今日も一日、頑張りましょうね!」
彼女は、そう言って、自分のパソコンに向かった。
ミサキは、SNSが大好きで、いつも会社のことを発信している。新商品の情報とか、イベントの告知とか、そういうのを、積極的に拡散している。彼女のSNSは、フォロワーがたくさんいて、影響力も大きい。
ある日、ミサキが、僕にこんなことを言ってきた。
「ユウタさん、もっとSNS活用したらどうですか? ユウタさんの知識とか経験とか、絶対、たくさんの人の役に立つと思いますよ!」
僕は、少し戸惑った。SNSは、あまり得意ではない。それに、自分のプライベートな情報を公開することに、抵抗がある。
「いや、でも、SNSはちょっと…」
僕は、曖昧な返事をした。
「もったいないですよ! ユウタさんのような優秀な人が、SNSで発信しないなんて! 承認欲求を満たすためじゃないんですよ。世のため人のためになるんですよ!」
彼女は、熱心に僕を説得してきた。
「うーん…、考えておくよ。」
僕は、そう言って、話を濁した。
ミサキの言うことは、一理あると思った。自分の知識や経験を共有することで、誰かの役に立つかもしれない。それに、SNSで発信することで、新しい出会いがあるかもしれない。
でも、やっぱり、SNSには抵抗がある。
僕は、自分の投稿に「いいね!」がたくさん付くことを期待してしまう自分が嫌いだ。誰かに認められたい、褒められたい、という気持ちが、透けて見えるのが恥ずかしい。承認欲求を満たすために、SNSを利用していると思われたくない。
その日の夜、僕は、一人暮らしのアパートで、晩酌をしていた。缶ビールを飲みながら、テレビを見ていると、ニュース番組で、SNSに関する特集が放送されていた。
番組では、SNSのメリットとデメリットについて、様々な専門家が意見を述べていた。SNSは、情報収集やコミュニケーションの手段として、非常に有用である。しかし、一方で、誹謗中傷や個人情報の流出といった問題も存在する。
番組を見ていて、僕は、改めて、SNSの難しさを感じた。SNSは、使い方によっては、人を幸せにも不幸にもする。
「結局、自分はどうしたいんだろう…」
僕は、そう呟いて、缶ビールを飲み干した。
数日後、僕は、ミサキに、SNSを始めることにしたと伝えた。
「えっ、本当ですか!? すごい! 嬉しいです!」
ミサキは、飛び上がって喜んだ。
「でも、最初は、匿名で始めるつもりだよ。それに、あまりプライベートな情報は公開しないつもり。」
僕は、そう付け加えた。
「全然OKです! まずは、一歩踏み出すことが大切ですよ!」
彼女は、笑顔でそう言った。
僕は、SNSのアカウントを作成し、プロフィールを設定した。ハンドルネームは、「カチャカチャ」にした。薄型キーボードへのささやかな抵抗と、昔使っていたキーボードへの愛着を込めて。
最初の投稿は、会社の新しいプロジェクトに関するものにした。プロジェクトの概要と、自分が担当している部分について、簡単に説明した。
投稿して数時間後、僕は、ドキドキしながら、自分の投稿を確認した。
「いいね!」が、3つ付いていた。
そのうちの1つは、ミサキからのものだった。
僕は、少しだけ、嬉しかった。
それから、僕は、少しずつ、SNSに投稿するようになった。仕事に関する情報だけでなく、趣味のことや、日常の出来事も投稿した。
予想以上に、たくさんの人が、僕の投稿に興味を持ってくれた。コメントを送ってくれる人もいた。
僕は、SNSを通じて、新しい出会いを経験した。同じ趣味を持つ人たちと知り合ったり、仕事で協力できる人たちと知り合ったりした。
SNSを始めてから、僕は、少しだけ、世界が広がったように感じた。
でも、SNSのデメリットも、徐々に実感するようになった。
自分の投稿に、批判的なコメントが付くこともあった。見ず知らずの人から、誹謗中傷を受けることもあった。
最初は、落ち込んだり、腹を立てたりしたが、徐々に、慣れてきた。
批判的なコメントは、真摯に受け止め、改善点を探すようにした。誹謗中傷は、無視するようにした。
SNSは、あくまでも、コミュニケーションの手段の一つに過ぎない。SNSで評価されることが、自分の価値を決めるわけではない。
そう考えることで、僕は、SNSとの適切な距離感を保てるようになった。
ある日、僕は、カフェでコーヒーを飲んでいると、隣の席に座っている女性が、僕のSNSの投稿を見ていた。
「あっ、この人、カチャカチャさんだ!」
彼女は、そう呟いた。
僕は、少し驚いた。
「もしかして、いつも私の投稿を見てくださってるんですか?」
僕は、彼女に話しかけた。
「はい! いつも参考にさせていただいてます! 特に、システム開発に関する投稿は、とても勉強になります。」
彼女は、笑顔でそう言った。
「そうですか。ありがとうございます。」
僕は、少し照れながら、そう言った。
「あの、もしよろしければ、少しお話しませんか? 私も、システムエンジニアなんです。」
彼女は、そう提案してきた。
僕は、快く承諾した。
彼女の名前は、アヤカ。僕よりも少し年下で、同じように、都内のIT企業で働いている。
アヤカとは、すぐに意気投合した。システム開発の苦労話や、最新技術の情報交換など、話が尽きなかった。
カフェを出た後、僕たちは、一緒に夕食を食べに行った。
その夜、僕は、アヤカと連絡先を交換し、また会う約束をした。
SNSが、僕に、素敵な出会いをもたらしてくれた。
数週間後、僕は、アヤカと一緒に、新しいキーボードを探しに、秋葉原の電気街へと出かけた。
アヤカは、僕に、様々なキーボードを紹介してくれた。メカニカルキーボード、静電容量無接点方式キーボード、エルゴノミクスキーボード…。
僕は、それぞれのキーボードを試し打ちしてみた。
どれも、薄型キーボードとは比べ物にならないほど、打ち心地が良かった。
迷いに迷った結果、僕は、メカニカルキーボードを購入することにした。キーのストロークが深く、タイプするたびに「カチャカチャ」と心地良い音がする、昔使っていたキーボードに似たものを選んだ。
家に帰って、早速、新しいキーボードをパソコンに接続した。
キーボードをタイプしてみると、想像以上に、快適だった。まるで、自分の指が、踊っているみたいだ。
僕は、嬉しくて、思わず、SNSに投稿した。
「ついに、新しいキーボードを買っちゃった! やっぱり、キーボードは、打ち心地が大事だよね! #メカニカルキーボード #カチャカチャ #最高」
投稿して数分後、「いいね!」が、たくさん付いた。
ミサキからも、コメントが届いた。
「ユウタさん、おめでとうございます! やっぱり、自分の好きなものを使うのが一番ですよね!」
僕は、ミサキに、感謝のメッセージを送った。
その夜、僕は、新しいキーボードを使って、久しぶりに、集中して仕事をした。
薄型キーボードのストレスから解放された僕は、以前よりも、仕事が楽しくなった。
そして、何よりも、SNSを通じて、アヤカという素敵なパートナーに出会えたことが、僕の人生を大きく変えた。
2026年1月23日。あの時、満員電車の中で感じた不安は、今では、希望に変わっている。
薄型キーボードは、僕にとって、承認欲求と向き合い、自分自身を見つめ直すきっかけになった。
カチャカチャと音を立てるメカニカルキーボードを叩きながら、僕は、これからも、自分らしく生きていこうと決意した。
そして、いつか、アヤカと一緒に、宇宙旅行に行きたいという、密かな夢を抱きながら。
※このエッセイは、Togetterのまとめから着想を得て創作されたフィクションです。
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