📝 この記事のポイント
- まさか自分が、キーボードを打てなくなるなんて。
- そんなこと、人生で一度も想像したことがありませんでした。
- 右手の人差し指と中指、そして手首にピリッと走る不快感。
まさか自分が、キーボードを打てなくなるなんて。そんなこと、人生で一度も想像したことがありませんでした。右手の人差し指と中指、そして手首にピリッと走る不快感。最初は気のせいかと思ったんです。でも、日が経つにつれて痛みは増し、ついにキーボードを打つたびに激痛が走るようになりました。腱鞘炎。医師からそう告げられたとき、目の前が真っ暗になりました。仕事柄、毎日何時間もキーボードと向き合っている私にとって、それは利き腕を奪われるようなもの。今まで空気を吸うように「当たり前」にできていた文字入力が、突然できなくなったんです。そこで初めて気づきました。私が毎日行っていた何気ない動作が、どれほどの「奇跡」の上に成り立っていたのかを。
最初の印象
キーボードが使えない。でも仕事は待ってくれない。藁にもすがる思いで、代替の入力方法を模索しました。まず思い浮かんだのが「音声入力」です。今まではスマホでちょっとした検索に使う程度で、本格的な文章作成に使うなんて考えたこともありませんでした。「いちいち口に出して話すのって疲れるんじゃない?」「ちゃんと変換してくれるのかな?」と不安ばかり。
もう一つは「フリック入力」。スマホでは慣れていますが、パソコンでの長文入力に耐えられるのか?これも疑問だらけです。今までは「どうせキーボードには敵わない」と決めつけていた技術たち。それが突然、私の「メインウェポン」として立ちはだかったのです。正直、最初は「これで本当に仕事になるんだろうか…」と半信半疑でした。
実際に使ってみて
まずは音声入力から試してみました。ヘッドセットを装着し、画面に向かって独り言のように話し始める。これがもう、最初のうちは恥ずかしくてたまりません。でも、驚いたのはその認識精度の高さでした。はっきりと話せば、私の言葉をほぼ完璧にテキスト化してくれます。「句読点も言ってください」という指示に従って「、」や「。」も発すると、ちゃんと文字として反映されるんです。
一方、フリック入力は、スマホアプリを使ってパソコンに接続して試しました。最初はキーボードの感覚が抜けず、指が迷子になることもしばしば。でも、スマホで培った“忍者タイピング”の要領で練習を重ねると、次第にスピードが上がっていきました。思った以上にスムーズに入力できる自分に驚きです。ただ、やはり長文となると、スマホの画面を見つめ続ける目の疲労と、親指の酷使が気になりました。
良かったところ
新しい入力方法を試す中で、いくつか素晴らしい発見がありました。
- 思考と入力の同期
音声入力は、頭で考えたことをそのまま声に出すだけなので、思考と入力のタイムラグがほとんどありません。アイデアを羅列したり、レポートの下書きをサッと書き上げたりするのに最適でした。まるで誰かに話しかけるように文章が生まれていくのは、これまでにない体験です。
- 場所を選ばない気軽さ
フリック入力は、スマホさえあればどこでも手軽に文字を入力できます。カフェでふと思いついたアイデアをメモしたり、移動中にメールの返信をしたりと、場所を選ばない機動性はキーボードにはない魅力でした。
- 新たな視点の獲得
何よりも良かったのは、今まで「当たり前」すぎて意識していなかった日本語入力の奥深さに気づけたことです。ローマ字入力からかな漢字変換、予測変換、フリック入力まで、日本独自の進化を遂げてきた技術の凄さを、身をもって体験することができました。
気になったところ
もちろん、万能ではありません。使ってみていくつか気になる点もありました。
- 場所とプライバシーの制約
音声入力は、静かな環境でないと周囲に迷惑がかかりますし、プライベートな内容を話すには抵抗があります。周囲の目を気にしながら話すのは、想像以上にストレスでした。
- 変換精度の限界と疲労
フリック入力はスピードこそ出ますが、やはり長文になると漢字変換の候補を選ぶ手間が増えます。また、親指や手首への負担は少なからずあり、長時間使い続けると指が疲れてきます。専門用語や固有名詞の入力も、キーボードほどスムーズにはいきません。
どんな人に向いてる?
これらの新しい入力方法は、使い方次第で私たちの生活を豊かにしてくれます。
音声入力は、
- アイデアを素早く形にしたいクリエイター
- 手が不自由な方やキーボード入力に疲れている方
- 長文の下書きを一気に書き上げたい方
フリック入力は、
- 移動が多いビジネスパーソン
- スマホでのSNS投稿やメッセージのやり取りが多い方
- キーボードが使えない状況で、手軽に文字を入力したい方
それぞれが、従来のキーボード入力を補完し、より多様な働き方を可能にするツールだと感じました。
使い続けて数週間の今
指の痛みも徐々に和らぎ、キーボード入力も少しずつ再開できるようになりました。でも、もう以前のようにキーボード「だけ」に頼ることはありません。音声入力やフリック入力も、私の大切な「相棒」になっています。
今では、アイデアを出すときは音声入力で一気に言葉を吐き出し、その後キーボードで推敲する。移動中やちょっとした返信はフリック入力で済ませる。というように、状況に応じて最適な入力方法を選ぶようになりました。
以前は「あって当然」と思っていたキーボードが、今では「感謝すべき存在」に変わりました。そして、その裏側でどれほど多くのエンジニアや技術者が、私たちの「当たり前」を支えるために努力してきたのかを想像すると、頭が下がります。
私たちが毎日何気なく使っているもの、蛇口をひねれば出る水も、スイッチを押せばつく電気も、きっと同じように誰かの努力と情熱の結晶なのでしょう。
まとめ
私の腱鞘炎という個人的な不運は、結果として「当たり前」を疑う貴重な機会を与えてくれました。日常の中に隠された、数々の「奇跡」に気づくきっかけになったのです。
キーボードを打つたび、私は思います。この26個のキーから数万の漢字を呼び出せること。そして、それを可能にしてくれた見えない技術と、その開発に携わった人々の情熱に。
あなたの「当たり前」の中には、どんな奇跡が隠れているでしょうか。たまには立ち止まって、その裏側にある物語に耳を傾けてみるのも良いかもしれませんね。
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「当たり前」の奇跡について——日本語入力という技術
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