📝 この記事のポイント
- 2026年1月22日、東京は珍しく、雲一つない青空だった。
- 実際は、時間に追われるように、早足で、いや、駆け足で進んでいた。
- 満員電車に揺られ、押しつぶされ、ようやく解放されたと思ったら、今度は時間に追いかけられる。
2026年1月22日、東京は珍しく、雲一つない青空だった。僕は日本橋のオフィス街を歩いていた。正確に言うと、歩いているつもりだった。実際は、時間に追われるように、早足で、いや、駆け足で進んでいた。
起
朝8時52分。始業まであと8分。いつものように、ギリギリだ。満員電車に揺られ、押しつぶされ、ようやく解放されたと思ったら、今度は時間に追いかけられる。まるで人生の縮図みたいだ、と自嘲気味に思った。
日本橋のオフィス街は、まだ眠りから覚めたばかりのようで、静寂に包まれていた。路地裏の喫茶店からは、コーヒーの香りが漂ってくる。ああ、せめて一杯だけでも、ゆっくりと味わう時間があれば、と、心の奥底で呟いた。
その時だった。
突如、視界の端に、黒い影がよぎった。何だろう、と思って顔を上げると、そこには、信じられない光景が広がっていた。
無数の鳩が、一斉に飛び立ち、僕に向かって突進してくるではないか。
最初は、何が起こったのか理解できなかった。鳩たちは、まるで僕を敵とみなしているかのように、けたたましい鳴き声を上げながら、僕の頭上を旋回した。
僕は、思わず立ち止まり、鳩たちの動きを呆然と見つめていた。一体、何が僕をこんな目に遭わせているのだろうか?何か悪いことでもしただろうか?
鳩たちは、僕の周りを飛び回り、羽ばたく風圧が肌を撫でる。恐怖と混乱が入り混じった感情が、僕の心を支配した。
その時、一羽の鳩が、僕のすぐ目の前に舞い降りた。その鳩は、僕の目をじっと見つめ、何かを訴えかけるような表情をしていた。
僕は、その鳩の目に、深い悲しみを見たような気がした。
承
会社に着くと、案の定、遅刻だった。上司の小言は、もはや日常茶飯事。心の中で「はいはい」と相槌を打ちながら、自分の席へと向かった。
僕の席は、窓際の一番奥。目の前には、高層ビルが立ち並び、その間を縫うように、無数の車が走っている。
僕は、パソコンを立ち上げ、メールをチェックした。未読メールの数は、今日も3桁を超えていた。ため息をつきながら、僕は、目の前の仕事に取り掛かった。
僕の仕事は、IT企業のシステムエンジニア。クライアントの要望に応じて、システムを設計・開発する。毎日、膨大な量のコードと向き合い、納期に追われる日々だ。
仕事は、決して嫌いではない。むしろ、自分の作ったシステムが、誰かの役に立つことを考えると、やりがいを感じる。
しかし、最近、どうも心の底から楽しむことができない。
毎日のように繰り返される会議、終わりの見えないタスク、そして、常に時間に追われる焦燥感。
僕は、いつの間にか、自分の人生を、システムの一部として捉えるようになってしまったのかもしれない。
ふと、午前中に遭遇した鳩たちのことを思い出した。
彼らは、一体何のために、あんなにも必死に飛び回っていたのだろうか?
食料を求めて?縄張りを守るため?それとも、ただ、自由を求めて?
僕は、彼らの姿に、自分の姿を重ね合わせた。
僕もまた、何かを求めて、必死に生きている。
しかし、一体、何を求めているのだろうか?
お金?地位?名誉?
それとも、もっと、別の何か?
転
昼休憩、僕はいつものように、会社の近くのカフェに行った。
カフェのテラス席に座り、サンドイッチとコーヒーを注文した。
目の前には、公園が広がっており、子供たちが楽しそうに遊んでいる。
その光景を眺めていると、心が少しだけ安らいだ。
隣の席には、若い女性が座っていた。彼女は、ノートパソコンを開き、何やら熱心に作業をしている。
僕は、ふと、彼女のパソコンの画面に目が留まった。
それは、プログラミングのコードだった。
僕は、思わず彼女に声をかけた。
「すみません、プログラミングをされているんですか?」
彼女は、少し驚いた様子で、僕の方を向いた。
「ええ、そうです。実は、私もシステムエンジニアなんです」
僕は、彼女と、少しだけ話をした。
彼女は、僕よりも少し年下だったが、とても優秀なエンジニアだった。
彼女の話を聞いていると、僕は、自分の仕事に対する情熱を、少しだけ思い出した。
彼女は、仕事に対して、とても前向きで、楽しそうだった。
「私は、自分の作ったシステムが、誰かの役に立つことが、本当に嬉しいんです」
彼女は、そう言って、笑顔を見せた。
僕は、彼女の笑顔を見て、ハッとした。
そうだ、僕は、自分の作ったシステムが、誰かの役に立つことが、本当に嬉しかったんだ。
いつの間にか、その気持ちを忘れてしまっていた。
僕は、自分の仕事に対する情熱を、再び取り戻さなければならない。
その時、カフェの窓から、一羽の鳩が飛び込んできた。
鳩は、僕のテーブルに舞い降り、クッキーのかけらを啄ばみ始めた。
僕は、その鳩を、じっと見つめた。
鳩は、僕の目をじっと見つめ返し、何かを訴えかけるような表情をしていた。
僕は、その鳩の目に、希望を見たような気がした。
結
会社に戻り、僕は、自分の仕事に対する取り組み方を変えることにした。
会議では、積極的に意見を出し、タスクを整理し、効率的に仕事を進めるように努めた。
そして、何よりも、自分の作ったシステムが、誰かの役に立つことを、常に意識するようにした。
すると、不思議なことに、仕事が楽しくなってきた。
以前は、ただ、こなすだけだった仕事が、今は、自分の創造性を発揮する場となった。
僕は、自分の仕事に対する情熱を、再び取り戻すことができた。
2026年12月31日。今年も、あと数時間で終わる。
僕は、自宅の窓から、街の夜景を眺めていた。
東京の夜空は、無数の光で彩られ、まるで、星空のようだった。
僕は、今年一年を振り返り、様々なことがあったことを思い出した。
仕事で壁にぶつかったり、人間関係で悩んだり、時には、自分の存在意義を見失いそうになったりもした。
しかし、そんな時、僕は、いつも、誰かの言葉や行動に救われた。
そして、何よりも、自分の仕事に対する情熱が、僕を支えてくれた。
僕は、来年も、自分の信じる道を、まっすぐに進んでいこうと決意した。
その時、窓の外に、一羽の鳩が飛んできた。
鳩は、僕の家のベランダに舞い降り、僕の顔をじっと見つめた。
僕は、その鳩の目に、感謝を見たような気がした。
鳩は、しばらくすると、再び飛び立ち、夜空へと消えていった。
僕は、鳩の姿を見送りながら、静かに微笑んだ。
鳩の群れに追いかけられたあの日から、僕は、少しだけ変わった。
そして、これからも、僕は、変わり続けるだろう。
加速する現代社会の中で、立ち止まらず、前へ、前へ。
鳩のように、自由に、そして力強く。
※このエッセイは、Togetterのまとめから着想を得て創作されたフィクションです。
📚 あわせて読みたい


コメント