スクリーンと畳について

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📝 この記事のポイント

  • 電車はいつものようにぎゅうぎゅう詰めで、つり革につかまる腕が悲鳴を上げている。
  • スマホのニュースアプリを開くと、トップに躍り出ているのは「玉木宏、ヨーロピアン柔術で銅メダル!」の見出し。
  • 「玉木宏、マジか…」 隣に立っていたOL風の女性が、独り言のように呟いた。

2026年1月18日、日曜日の午後3時。

電車はいつものようにぎゅうぎゅう詰めで、つり革につかまる腕が悲鳴を上げている。スマホのニュースアプリを開くと、トップに躍り出ているのは「玉木宏、ヨーロピアン柔術で銅メダル!」の見出し。2026年のヨーロピアン。すごい。

「玉木宏、マジか…」

隣に立っていたOL風の女性が、独り言のように呟いた。僕も心の中で同意する。俳優業だけでも十分なのに、柔術で世界レベルとは。いったい何が彼をそこまで突き動かすのだろうか。

僕の名前はユウキ。28歳。都内の小さなIT企業でエンジニアをしている。週末は家でダラダラと過ごすことが多い。たまに友人と飲みに行くくらいで、これといった趣味もない。自己啓発本を読んではみるものの、三日坊主で終わることがほとんどだ。

正直、玉木宏のニュースは、僕にとって一種の脅威だった。才能と努力を兼ね備えた人間が、同じ時代に存在しているという事実。それは、自分の怠惰を容赦なく突きつけてくる。

僕も何か始めなければ。そう思うたびに、過去の挫折が頭をよぎる。大学時代に始めたギター、社会人になってから挑戦したプログラミング、どれも途中で投げ出してしまった。飽きっぽい性格、言い訳ばかり上手くなる自分。そんな自分が嫌になる。

電車を降り、近所のカフェに立ち寄る。窓際の席に座り、カプチーノを注文した。店内は暖かく、心地よいジャズが流れている。目の前の公園では、子供たちが楽しそうに走り回っている。

カプチーノを一口飲む。ほろ苦い味が、少しだけ僕の心を落ち着かせてくれる。

ふと、カフェの壁に飾られた写真に目が留まった。モノクロの写真には、畳の上で正座をする男性が写っている。男性は真剣な表情で、何かを語っているようだ。

畳。最近、めっきり見なくなったものだ。実家にはあった気がするけど、最後に座ったのはいつだっただろうか。

畳の感触を思い出す。イグサの香りが鼻をくすぐり、温かくて優しい。子供の頃、畳の上でゴロゴロしながら、漫画を読んだり、昼寝をしたりした。あの頃は、何もかもが輝いて見えた。

畳は、僕にとって原風景のようなものだ。それは、失われた時間と、忘れかけていた感情を呼び覚ます。

玉木宏の柔術、畳の上の男性。共通点はなんだろうか。彼らは、それぞれ異なる分野で、何かを極めようとしている。それは、単純な成功や名声のためだけではないはずだ。

彼らが追い求めるのは、自己実現なのかもしれない。自分の可能性を信じ、ひたすらに努力を重ねる。その過程で得られる喜びや充実感こそが、彼らを突き動かす原動力なのだろう。

僕は、自己実現という言葉に、どこか気恥ずかしさを感じていた。それは、まるで大げさな夢物語のように思えたからだ。

でも、彼らを見ていると、自己実現は決して特別なことではないと思えてくる。それは、誰にでもできる、当たり前のことなのかもしれない。

畳の上の男性は、きっと自分の言葉で誰かの心を動かそうとしている。玉木宏は、柔術を通じて、自分自身の限界に挑戦している。

僕には何ができるだろうか。

エンジニアとして、もっとスキルを磨く。趣味を見つけて、新しい世界に飛び込む。ボランティアに参加して、誰かの役に立つ。

小さなことでもいい。何かを始めることで、自分自身を変えることができるかもしれない。

カフェを出て、アパートに向かう。夕焼け空が、街をオレンジ色に染めている。

アパートの部屋は、殺風景なワンルームだ。ベッドと机、それにパソコンがあるだけのシンプルな空間。

床に座り、スマホを取り出す。動画サイトを開き、柔術の試合を見る。玉木宏の試合も見つけた。

画面の中の彼は、真剣な表情で相手と組み合っている。激しい攻防の末、見事な技が決まり、勝利を掴んだ。

僕は、画面に釘付けになった。彼の姿は、まるで映画のヒーローのようだ。

ふと、自分の部屋を見渡す。無機質なフローリングの床。味気ない壁紙。ここには、畳はない。

でも、畳がなくても、僕は何かを始めることができる。

パソコンを開き、プログラミングの学習サイトを開いた。以前挫折した言語に、もう一度挑戦してみようと思う。

最初はうまくいかないかもしれない。何度も壁にぶつかるかもしれない。

でも、諦めずに続けることで、いつか必ず何かが見えてくるはずだ。

2026年1月18日。玉木宏の銅メダルは、僕にとって、小さなきっかけだった。それは、畳の感触とともに、忘れかけていた情熱を呼び覚ますものだった。

数時間後、日付が変わる頃、僕はコードを一行書いた。小さな、本当に小さな一歩。でも、確かに前進した。明日の僕は、今日の僕より少しだけ成長しているだろう。

そして、いつか、僕も誰かの心を動かすことができるかもしれない。

夜空を見上げる。星が輝いている。

僕は、まだ何も成し遂げていない。でも、希望を抱いている。

2026年。それは、僕にとって、新たな始まりの年になるかもしれない。


※このエッセイは、Togetterのまとめから着想を得て創作されたフィクションです。

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