📝 この記事のポイント
- 金曜日の夕方、僕は渋谷の喧騒に揉まれながら、カフェ・ラテ片手にスマホをスクロールしていた。
- 帰宅ラッシュのピークと、週末の解放感を求める人々の熱気が混ざり合い、スクランブル交差点はさながら巨大な人間洗濯機のようだった。
- カフェの窓際に陣取った僕は、目の前の雑踏を眺めながら、タイムラインをぼんやりと追いかけていた。
2026年1月17日。金曜日の夕方、僕は渋谷の喧騒に揉まれながら、カフェ・ラテ片手にスマホをスクロールしていた。帰宅ラッシュのピークと、週末の解放感を求める人々の熱気が混ざり合い、スクランブル交差点はさながら巨大な人間洗濯機のようだった。
カフェの窓際に陣取った僕は、目の前の雑踏を眺めながら、タイムラインをぼんやりと追いかけていた。インフルエンサーのキラキラした日常、友人の結婚報告、猫の動画、そして、ニュースサイトの記事の見出し。それは、現代社会の縮図そのものだった。
その時、目に飛び込んできたのは、「暴行動画拡散、中学生逮捕」という見出しだった。熊本県で起きた事件らしい。詳細を開くことはしなかったけれど、見出しだけで十分だった。胸の奥に、鉛のような重さが広がっていくのを感じた。
最近、こういうニュースを目にするたびに、僕はひどく疲れてしまう。匿名性の高いSNSが、人間の悪意を増幅させているような気がしてならない。顔の見えない相手を攻撃し、それを拡散することで、優越感を得ようとする。まるで、デジタル版のリンチだ。
僕はため息をつき、カフェ・ラテを一口飲んだ。苦味と甘みが、喉を通り過ぎていく。目の前のスクランブル交差点は、相変わらず人々でごった返していた。誰もが、何かを求めて、必死に生きている。その中で、なぜ、このような悲しい事件が起きてしまうのだろうか。
大学時代の友人、ユウキのことを思い出した。ユウキは、SNSでの誹謗中傷が原因で、心を病んでしまった。彼は、真面目で優しい男だった。誰かのために、一生懸命になれる人間だった。しかし、SNSの世界では、彼の優しさは、弱さと解釈されてしまった。
「お前は偽善者だ」「自己顕示欲の塊だ」
匿名の言葉の暴力が、ユウキの心を蝕んでいった。彼は、次第に人と会うことを恐れるようになり、大学にも来なくなった。僕は、何度も彼に電話をかけたけれど、彼は電話に出なかった。
数ヶ月後、ユウキから一通のメールが届いた。「ごめん。もう疲れた」という短いメッセージだった。僕は、すぐに彼の家に向かったけれど、彼はもういなかった。
ユウキの死は、僕の心に深い傷跡を残した。それ以来、僕はSNSの使い方に、慎重になった。必要以上に情報を発信することはなくなったし、コメント欄もほとんど見なくなった。
「どうしたの?暗い顔してるね」
隣の席に座っていた女性が、僕に話しかけてきた。彼女は、僕がさっきからずっとため息をついていることに気づいていたらしい。
「ちょっと、嫌なニュースを見ちゃって」
僕は、正直に答えた。
「ああ、わかる。最近、そういうニュース多いよね。なんか、世の中、殺伐としてるっていうか…」
彼女は、そう言って、少し寂しそうな表情を浮かべた。
「うん。本当にそう思う。僕も、どうしたらいいのか、わからないんだ」
僕は、正直な気持ちを打ち明けた。
「私も、わからないよ。でもね、一つだけ言えるのは、自分だけは、そういう人間にならないようにしようって、いつも思ってる。誰かを傷つけるようなことは絶対にしない。できるだけ、優しく、誠実に生きていきたい」
彼女は、そう言って、微笑んだ。その笑顔は、まるで、希望の光のように、僕の心を照らしてくれた。
僕は、彼女の言葉に、深く感動した。そうだ。僕にできることは、ただ一つ。自分自身が、優しく、誠実に生きることだ。それしかない。
僕は、スマホを閉じ、カフェ・ラテを飲み干した。そして、立ち上がり、カフェを出た。外は、まだ少し雨が降っていたけれど、空は、さっきよりも明るくなっていた。
2026年1月17日の出来事。熊本で起きた暴行事件のニュースから始まった、この日の出来事は、僕にとって、忘れられない一日となった。
僕は、雨の中、傘をさして、家路を急いだ。タイムラインの雨模様は、まだ止みそうにないけれど、僕の心の中には、小さな希望の光が灯っていた。
これから、どんなことがあっても、僕は、ユウキの分まで、精一杯生きていこう。そして、誰かを傷つけるようなことは絶対にしない。優しく、誠実に生きていく。
それが、僕にできる、たった一つのことだから。
家に着くと、テレビでは、相変わらず、新型コロナウイルスの変異株のニュースが流れていた。パンデミックから数年が経ち、ようやく日常生活を取り戻しつつある今でも、社会は、様々な問題に直面している。
経済格差、環境問題、国際紛争…
挙げればきりがない。
しかし、どんなに困難な状況でも、僕たちは、希望を捨ててはいけない。信じることを諦めてはいけない。
そう、信じよう。
人間は、もっと優しくなれるはずだ。
人間は、もっと誠実になれるはずだ。
人間は、もっと愛し合えるはずだ。
少なくとも、僕はそう信じたい。
僕は、テレビを消し、窓を開けた。冷たい空気が、部屋の中に流れ込んでくる。雨の匂いが、鼻をくすぐる。
僕は、深呼吸をした。
そして、呟いた。
「明日も、頑張ろう」
その言葉は、誰に届くこともなく、夜の闇に溶けていった。しかし、僕の心の中には、確かに響いていた。
明日は、きっと、今日よりも良い日になる。
そう信じて、僕は、眠りについた。
翌朝、僕は、爽やかな目覚めを迎えた。カーテンを開けると、眩しい朝日が、部屋の中に差し込んでくる。
空は、完全に晴れ渡っていた。
僕は、コーヒーを淹れ、ベランダに出た。暖かい日差しが、僕の体を包み込む。
遠くには、東京スカイツリーが見えた。
僕は、深呼吸をした。
そして、呟いた。
「今日も、頑張ろう」
その言葉は、昨日よりも、力強く、希望に満ち溢れていた。
タイムラインの雨模様は、まだ、完全に晴れたわけではない。
しかし、少なくとも、僕の心の中の空は、晴れ渡っている。
そして、僕は、その青空の下で、力強く生きていく。
それが、ユウキとの約束だから。
それが、僕が、僕自身に誓ったことだから。
※このエッセイは、Togetterのまとめから着想を得て創作されたフィクションです。
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