コンビニのミネストローネについて

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📝 この記事のポイント

  • 僕は、いつものように満員電車に揺られていた。
  • 「本日も、遅延が発生しておりまして…」 うんざりするアナウンスが、さらに気分を重くする。
  • 窓ガラスに押し付けられた人々の顔は、まるで無表情のマネキンのよう。

2026年1月16日。僕は、いつものように満員電車に揺られていた。

「本日も、遅延が発生しておりまして…」

うんざりするアナウンスが、さらに気分を重くする。窓ガラスに押し付けられた人々の顔は、まるで無表情のマネキンのよう。僕もきっと、その一人なのだろう。

会社に着いて、デスクに座ると、まずはコンビニで買ったミネストローネを啜るのが日課だ。安っぽい紙製のカップに入ったそれは、インスタントながらも、冷え切った体にじんわりと染み渡る。特に、こういう日は。

今日のミネストローネは、いつもよりトマトの酸味が強い気がした。

「あー、疲れる」

隣の席のミサキさんが、大きなため息をついた。ミサキさんは、僕より少し年上の先輩で、いつも明るく、頼りになる存在だ。ただ、最近は明らかに疲れている。目の下のクマが、濃くなっているのがわかる。

「どうしたんですか、ミサキさん。顔色が悪いですよ」

「ああ、ちょっとね。最近、親戚の介護でバタバタしてて。人手不足で、なかなか休めないのよ」

ミサキさんの言葉に、僕は言葉を失った。介護。それは、今の日本社会が抱える大きな問題の一つだ。少子高齢化が進み、介護を必要とする人が増え続ける一方で、介護する側の負担は増すばかり。ミサキさんのような、働き盛りの世代が、その重荷を背負っているのだ。

「何か、僕にできることありますか?」

「ありがとう。気持ちだけで十分よ。でもね、たまにこうやって話を聞いてもらえるだけで、すごく楽になるの」

ミサキさんの言葉に、僕は深く頷いた。

その日の夕方、僕はいつものようにコンビニに立ち寄った。ミネストローネを買おうとした時、ふと、惣菜コーナーに目が留まった。そこには、色とりどりの野菜を使ったサラダや、バランスの取れた弁当が並んでいた。

「…そうか」

僕は、ハッとした。

連日報道されるニュースや、SNSで飛び交う情報に、僕たちはいつも圧倒されている。社会問題、環境問題、経済問題… 解決すべき課題は山積みで、僕たちは無力感に苛まれる。まるで、満員電車の窓ガラスに押し付けられた人々の顔のように、無表情になってしまう。

でも、本当にそうだろうか?

僕たちができることは、何もないのだろうか?

コンビニの惣菜コーナーを見ているうちに、僕は、ある記事を思い出した。それは、昨年、ある警察署に勾留されていた男性が、脚気を発症した疑いがあるというニュースだった。留置場の食事は、弁当やパン中心で、野菜が不足していたらしい。

僕は、その記事を読んだ時、「他人事」だと思っていた。留置場にいる人なんて、自分とは関係ない。そう思っていた。

でも、ミサキさんの話を聞いて、僕は考えが変わった。介護も、留置場の食事も、根っこは同じだ。それは、「誰かのためのケア」が、社会全体で不足しているということだ。

僕たちは、知らず知らずのうちに、誰かの犠牲の上に成り立っている社会で生きているのかもしれない。そして、その「誰か」は、いつか自分自身になる可能性だってある。

「…ミネストローネ、もう一個買おう」

僕は、ミネストローネを二つ手に取り、レジに向かった。

その夜、僕はミサキさんを誘って、近所の居酒屋に行った。

「今日は、僕がおごりますよ。ミサキさん、いつもお世話になってますし」

「あら、珍しい。どうしたの?」

「いや、ちょっと、色々考えちゃって。でも、ミサキさんと話せて、少し楽になりました」

僕たちは、仕事のこと、家族のこと、将来のこと、他愛もない話をした。ミサキさんは、いつものように明るく笑っていた。

帰り道、ミサキさんは、僕に深々と頭を下げた。

「今日は、本当にありがとう。おかげで、明日からまた頑張れそうよ」

「いえ、こちらこそ。ありがとうございました」

僕は、ミサキさんと別れて、一人、夜道を歩いた。

空には、満月が輝いていた。

僕は、深呼吸をした。

僕にできることは、まだたくさんある。

誰かのために、ほんの少しでもいいから、何かできることをする。

それは、コンビニでミネストローネをもう一個買うことかもしれない。

それは、誰かの話をじっくりと聞くことかもしれない。

それは、社会の問題に、少しでも関心を持つことかもしれない。

大切なのは、無関心にならないことだ。

無力感に苛まれて、無表情にならないことだ。

僕たちは、満員電車の窓ガラスに押し付けられたマネキンではない。

僕たちは、感情を持ち、思考し、行動する人間だ。

だから、できることから始めよう。

まずは、明日の朝、コンビニでミネストローネを買うことから。

そして、そのミネストローネを、誰かと一緒に味わうことから。

2026年1月16日。僕は、ミネストローネの温かさとともに、新たな決意を胸に抱いた。

未来は、きっと、少しずつ変わっていく。

僕たちの手で。


※このエッセイは、Togetterのまとめから着想を得て創作されたフィクションです。

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