解像度とクリスピーポテトスティックのこと

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📝 この記事のポイント

  • 今日の東京は、まるでモノクロ映画のワンシーンみたいだった。
  • 鉛色の空からしとしとと降り続く雨が、アスファルトを濡らし、街の輪郭をぼやけさせている。
  • 傘をさしていても、どこか湿気を帯びた空気が肌にまとわりつき、思考回路まで鈍らせるようだった。

2026年1月12日。今日の東京は、まるでモノクロ映画のワンシーンみたいだった。鉛色の空からしとしとと降り続く雨が、アスファルトを濡らし、街の輪郭をぼやけさせている。傘をさしていても、どこか湿気を帯びた空気が肌にまとわりつき、思考回路まで鈍らせるようだった。

いつものように満員電車に揺られながら、私はぼんやりと窓の外を眺めていた。向かいに立っているサラリーマンは、疲れ切った顔でスマートフォンを操作している。その画面に映っているのは、おそらく業務連絡だろうか。ちらりと見えたエクセルシートの数字が、彼の肩にさらに重くのしかかっているように感じられた。

私はというと、今日は午後から始まるプレゼンの資料が頭から離れない。先週から徹夜続きで準備してきたプロジェクトだ。成功させなければ、というプレッシャーが、じわじわと私の心を締め付けていた。

ふと、電車の広告が目に留まった。鮮やかな色彩で彩られた海外旅行のポスター。白い砂浜、青い海、そして満面の笑みを浮かべる人々。そのあまりの現実とのギャップに、思わず苦笑してしまった。

「解像度が違うな…」

心の中で呟いた。まるで、自分の人生だけが解像度の低いビデオみたいだ。他の人たちはもっと鮮やかで、充実した毎日を送っているように見える。でも、それはきっと錯覚だ。誰もがそれぞれの場所で、それぞれの悩みを抱えながら生きている。そう言い聞かせても、心の奥底にある焦燥感はなかなか消えてくれない。

電車を降り、オフィスに向かう途中で、いつものカフェに立ち寄った。雨のせいで店内は少し混雑していたが、奥の席が一つ空いていた。私は迷わずそこに向かい、いつものカフェラテを注文した。

カフェラテを一口飲むと、ほんの少しだけ心が落ち着いた。温かい飲み物が、冷え切った体にじんわりと染み渡っていく。私はバッグからノートパソコンを取り出し、プレゼン資料の最終確認を始めた。

カフェの喧騒の中、私は資料に没頭していた。しかし、どうしても集中力が続かない。何度も同じ箇所を読み返しているうちに、ふと、無性にジャンクフードが食べたくなった。

「…クリスピーポテトスティック、食べたいな」

そう呟いた瞬間、私はある記憶を思い出した。

数年前のことだ。私は仕事で海外出張に行くことになり、少しばかり奮発して、とある高級ホテルに宿泊した。ロビーのシャンデリアは眩いばかりに輝き、ベルボーイの制服は隙がなく、全てが完璧だった。

その日の夕食は、ホテルのレストランで済ませることにした。メニューを開くと、見たこともないような料理名がずらりと並んでいる。私は迷った末に、「クリスピーポテトスティック」という、どこかユーモラスな名前の料理を注文した。

運ばれてきたのは、想像をはるかに超える高級感溢れる一品だった。細長くカットされたジャガイモは、丁寧に揚げられ、トリュフオイルで香り付けされている。皿には美しいソースアートが施され、まるで芸術作品のようだった。

しかし、一口食べてみると、それは紛れもなく「じゃがりこ」の味だった。あの独特のカリカリとした食感、そしてほんのりとした塩味が、私の舌を刺激した。

「…やあ😃」

心の中で、じゃがりこがそう囁いた気がした。

もちろん、高級ホテルのクリスピーポテトスティックは、普通のじゃがりことは全く違っていた。素材の質、調理法、盛り付け、全てにおいて洗練されていた。しかし、根本にあるのは、あの懐かしいじゃがりこの味だった。

私はその時、ふと思ったのだ。

「結局、人間が求めるものって、そんなに変わらないんじゃないか」

高級ホテルに泊まろうが、豪華な食事をしようが、最終的に心が満たされるのは、意外と身近なものだったりする。それは、幼い頃から慣れ親しんだ味だったり、家族や友人との温かい時間だったり、ささやかな成功体験だったりする。

私はカフェラテを飲み干し、ノートパソコンを閉じた。プレゼン資料は、もう一度見直す必要があるかもしれないが、今は少しだけ休憩したい気分だった。

カフェを出て、雨の中を歩き出した。空はまだどんよりと曇っていたが、心なしか、さっきよりも明るくなった気がした。

私はコンビニに立ち寄り、じゃがりこを買った。九州しょうゆ味は残念ながら置いていなかったので、チーズ味を選んだ。

オフィスに戻り、デスクに座って、じゃがりこの蓋を開けた。あの独特の香りが、鼻腔をくすぐる。一本取り出して口に入れると、カリカリとした食感と、濃厚なチーズの風味が広がった。

「…やっぱり、美味しい」

私はそう呟き、思わず笑みがこぼれた。

プレゼンのプレッシャーは、まだ完全には消えていない。でも、今は、このじゃがりこの味をゆっくりと味わいたい。そして、明日のプレゼンに向けて、もう一度、自分自身を奮い立たせよう。

2026年。世界は大きく変化している。AI技術はますます進化し、仮想現実の世界はよりリアルになっている。しかし、どんなに時代が変わろうとも、人間が求めるものは、きっと変わらない。

それは、温かい愛情だったり、ささやかな幸せだったり、そして、たまに無性に食べたくなる、あのクリスピーポテトスティックだったりするのだ。

私はじゃがりこを片手に、窓の外を眺めた。雨はまだ降り続いていたが、その雨粒の一つ一つが、まるで宝石のように輝いているように見えた。

そして、ふと思ったのだ。

人生という名のキャンバスに、どんな絵を描くかは、自分次第なのだと。

解像度の低い絵でも、鮮やかな絵でも、どちらでもいい。大切なのは、自分自身が納得できる絵を描くことだ。

私は深呼吸をして、ノートパソコンを開いた。そして、もう一度、プレゼン資料に向き合った。

今度は、さっきよりも集中できた。なぜなら、私はもう、迷っていないからだ。

私は、私自身の解像度で、私自身の人生を生きる。

そして、たまにはクリスピーポテトスティックを食べる。

それで、いいのだ。

窓の外では、雨が少し小降りになっていた。空の隙間から、ほんの少しだけ、太陽の光が差し込んできた。

それは、まるで、私自身の未来を照らしているようだった。

2026年1月12日。

私は、クリスピーポテトスティックの味と共に、この日のことを、きっと忘れないだろう。


※このエッセイは、Togetterのまとめから着想を得て創作されたフィクションです。

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