📝 この記事のポイント
- 都心行きの電車は、いつものように鮨詰めの缶詰状態だった。
- 私は窓際に押し込まれ、息苦しさを感じながらスマートフォンを取り出した。
- SNSのタイムラインは、相変わらず情報過多で、キラキラした日常を切り取った写真と、社会に対する不満や不安を吐露する言葉が洪水のように押し寄せてくる。
2026年1月9日。都心行きの電車は、いつものように鮨詰めの缶詰状態だった。私は窓際に押し込まれ、息苦しさを感じながらスマートフォンを取り出した。SNSのタイムラインは、相変わらず情報過多で、キラキラした日常を切り取った写真と、社会に対する不満や不安を吐露する言葉が洪水のように押し寄せてくる。
そんな情報の濁流を眺めていると、ふと、昨夜の出来事が頭をよぎった。
昨夜、私はキッチンで夕食の支度をしていた。一人暮らしの狭いキッチンは、生活感に溢れていて、決して洒落た空間とは言えない。そんな場所に、突然、黒い影が忍び寄ってきた。
それは、うちの愛猫、クロだった。
クロは、キジトラ柄の雑種猫で、普段は大人しくて甘えん坊だが、時々、いたずら心が顔を出す。特に、私がキッチンに立つと、何か美味しいものが貰えるのではないかと期待して、そわそわし始める。
昨夜のクロは、いつも以上に積極的だった。まな板の上の鶏肉に手を伸ばそうとしたり、シンクに飛び乗って排水口の匂いを嗅いだり、やりたい放題だ。
「クロ、ダメだよ」
私は何度も注意したが、クロは全く聞く耳を持たない。それどころか、私の足元にスリスリと擦り寄ってきて、甘えた声で鳴き始めた。
「もう、しょうがないな」
私はため息をつきながら、クロを抱き上げた。クロは、私の腕の中で大人しくなったが、その表情は、明らかに不満げだった。大きな瞳は潤んでいて、まるで「どうして邪魔するんだ」と訴えているようだった。
その時のクロの顔が、SNSでバズっていた猫の画像と重なった。キッチンで悪さをしようとして、飼い主に捕まって運ばれていく猫の、何とも言えない悲しげな表情。その画像を見た時、私は笑ってしまったのだが、今、自分が同じ状況になっていることに気づき、複雑な気持ちになった。
電車は、次の駅に到着した。ドアが開くと、新鮮な空気が流れ込んできた。私は、深呼吸をして、再びスマートフォンに目を向けた。
現代社会は、常に情報が更新され、変化し続けている。SNSは、私たちの生活の一部となり、世界中の人々と繋がることを可能にした。しかし、その一方で、私たちは常に他人と比較され、評価されることに晒されている。
「いいね」の数やフォロワー数に一喜一憂し、他人からの承認を求めることに疲弊していく。そんな現代社会において、私たちは、一体何を大切にすれば良いのだろうか。
私は、カフェでコーヒーを飲みながら、そんなことを考えていた。窓の外を眺めていると、一匹の野良猫が、日向ぼっこをしているのが見えた。その猫は、誰に媚びることもなく、ただひたすら太陽の光を浴びている。その姿は、どこか自由で、羨ましかった。
私は、スマートフォンを閉じた。そして、目の前のコーヒーを一口飲んだ。コーヒーの苦味が、心地よく口の中に広がった。
その日の午後、私はオフィスで仕事に追われていた。企画書の作成、会議の準備、メールの返信。やるべきことが山積みで、息つく暇もない。
ふと、窓の外を見ると、夕焼け空が広がっていた。空は、オレンジ色や紫色、ピンク色など、様々な色が混ざり合い、まるで絵画のようだった。
私は、仕事の手を止めて、しばらくの間、空を眺めていた。夕焼け空は、私たちに、一日の終わりを告げると同時に、明日への希望を与えてくれる。
その時、私は、ふと、あることに気づいた。
私たちは、常に何かを追い求めている。成功、お金、名誉、愛情。しかし、本当に大切なものは、そういったものではないのかもしれない。
本当に大切なものは、日常の中に隠されている。家族や友人との温かい時間、美味しい食事、美しい景色。そういった、些細なことにこそ、幸せは宿っているのではないだろうか。
私は、スマートフォンを取り出し、クロの写真を見た。写真の中のクロは、不満そうな顔をしていたが、どこか愛らしく、憎めない。
私は、クロに会いたくなった。そして、仕事が終わったら、クロを抱きしめて、たくさん遊んであげようと思った。
夜、私は家に帰り、クロを抱きしめた。クロは、私の腕の中でゴロゴロと喉を鳴らした。その音は、まるで子守唄のように、私の心を癒してくれた。
私は、クロの頭を撫でながら、今日の出来事を思い返していた。電車の中での息苦しさ、SNSの情報過多、カフェでのコーヒー、オフィスでの夕焼け空。
そして、私は、一つの結論に辿り着いた。
私たちは、もっとシンプルに生きるべきだ。他人と比較することをやめ、自分自身の価値観を大切にし、日常の中に隠された幸せを見つけること。それが、私たちが、現代社会を生き抜くための、唯一の方法なのかもしれない。
私は、クロを抱きしめながら、窓の外を見た。夜空には、星が輝いていた。その光は、微かで、儚いけれど、確かにそこに存在している。
現代社会は、複雑で、変化し続けている。しかし、その中で、私たちは、自分自身の光を見つけ、輝き続けることができる。
明日も、また新しい一日が始まる。私は、クロと一緒に、その一日を、精一杯生きようと思った。
そして、いつか、クロがキッチンで悪さをしようとしても、私は、笑って許してあげようと思った。なぜなら、クロは、私にとって、かけがえのない存在だからだ。そして、クロとの何気ない日常こそが、私の幸せだからだ。
窓際の猫は、今日も変わらず、そこにいる。そして、その存在こそが、私にとっての、希望の光なのだ。
※このエッセイは、Togetterのまとめから着想を得て創作されたフィクションです。
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