📝 この記事のポイント
- 都内の混雑した通勤電車は、今日も乗客たちの気だるさを詰め込んで走っている。
- 私は窓に額を押し付け、ぼんやりと流れる景色を眺めていた。
- 手には、昨日予約開始となった人気ソシャゲの新作グッズの画像を握りしめている。
2026年1月6日。都内の混雑した通勤電車は、今日も乗客たちの気だるさを詰め込んで走っている。私は窓に額を押し付け、ぼんやりと流れる景色を眺めていた。手には、昨日予約開始となった人気ソシャゲの新作グッズの画像を握りしめている。
(ああ、可愛い。絶対欲しい。でも、またか…)
昨年末のボーナスで少しだけ潤ったはずの預金残高は、すでに危機的状況だ。いや、正確に言うと、ボーナスが入った時点で、そのほとんどの使い道は決まっていた。ライブチケット、新作グッズ、コラボカフェ、そして、推しの誕生日を祝うためのささやかな遠征旅行。
電車の揺れに合わせて、私の心も揺れる。
「推し活」という言葉が市民権を得て久しい。私もその恩恵を受け、堂々と「推し」を語り、グッズを身につけ、イベントに参加できるようになった。SNSを開けば、同じ熱量を持つ仲間たちがいて、共感し、励まし合い、時には情報交換もする。
しかし、その裏で、ひっそりと、そして確実に、私の財布は痩せ細っていく。
会社に着き、いつものようにカフェラテを片手にパソコンに向かう。隣の席の同僚、ミサキさんが、楽しそうにスマホを操作している。
「ねえ、知ってる? 今週末から始まる、あのアーティストの展覧会!」
ミサキさんは、最近推し始めたというバンドについて、目を輝かせながら語り始めた。彼女もまた、「推し活」に青春を捧げる現代っ子の一人だ。
「へえ、そうなんだ。行ってみようかな」
私は、心にもない返事をした。本当は、今週末は別の推しのイベントが控えている。展覧会に行っている余裕など、どこにもない。
ミサキさんの話を聞きながら、私はふと、大学時代の友人、ユウキのことを思い出した。ユウキは、学生時代から同人活動に情熱を注いでいた。コミックマーケット(通称コミケ)にも何度も参加し、自分の描いた漫画を販売していた。
数年前、ユウキの家に行った時、彼女は大量の印刷物を前に、頭を抱えていた。
「見てよ、これ。今回の印刷費、マジでエグいんだよね。ぜ、ゼロが一つ多いんじゃないかって思ったもん」
ユウキは、そう言って苦笑いしていた。彼女の作品は、クオリティが高く、ファンも多かった。しかし、その分、印刷費もかさむ。紙質、インク、部数…全てにこだわり抜いた結果、彼女の貯金はあっという間に底をついたという。
「同人活動って、マジでお金かかるんだよ。でも、やめられないんだよね。だって、自分の作品をたくさんの人に読んでもらいたいじゃん?」
ユウキの言葉が、今になって、深く胸に突き刺さる。私も、彼女と同じだ。推しを応援したい、その気持ちだけで、気づけば預金残高が溶けていく。
昼休憩。私は、会社の近くの公園で、一人ベンチに座って、おにぎりを頬張る。青空の下、子供たちが楽しそうに遊んでいる。その姿を見て、私はふと、自分の将来について考えた。
(このまま、推し活に全力を注いでいて、本当にいいんだろうか?)
結婚、出産、マイホーム…そんな言葉が、頭をよぎる。もちろん、それらは全て、お金がかかる。今のままでは、到底実現不可能だ。
しかし、推し活をやめることなんて、考えられない。推しは、私の生きる希望であり、心の支えなのだから。
(どうすれば、両立できるんだろう?)
私は、スマホを取り出し、家計簿アプリを開いた。そこに記録されているのは、毎月、推しのために消えていく、膨大な金額。
(うわぁ…これは、マジでやばい)
私は、ため息をついた。
その日の夜。私は、SNSで、推し活仲間たちに、自分の悩みを打ち明けてみた。
「ねえ、みんな、推し活費、どうしてる?」
すぐに、たくさんのコメントが寄せられた。
「わかる! 私も、毎月カツカツだよ!」
「私は、推し活用の貯金口座を作ってる!」
「私は、副業で稼いでる!」
「私は、諦める推しを選んでる…」
様々な意見があった。その中で、一番多かったのは、「推し活用の貯金口座を作る」というものだった。
(なるほど…それなら、私もできるかも)
私は、早速、ネット銀行で、新しい口座を開設した。そして、毎月、給料から一定額を、その口座に積み立てることにした。
もちろん、それだけで、全てが解決するわけではない。グッズを厳選したり、イベント参加を減らしたり、節約できるところは、徹底的に節約する必要がある。
しかし、それでも、少しずつ、私の心は軽くなった。
(これなら、なんとか、推し活と貯金を両立できるかもしれない)
2026年1月6日。世界は、今日も目まぐるしく変化している。AI技術はますます進化し、宇宙旅行は夢ではなくなりつつある。しかし、人々の心は、いつの時代も、変わらない。
喜び、悲しみ、怒り、そして、愛。
私たちは、愛するものを応援し、その存在に勇気づけられ、生きている。
推し活は、単なる趣味ではない。それは、私たちにとって、生きる活力であり、心の栄養剤なのだ。
だから、私は、これからも、推しを応援し続けるだろう。
ただし、預金残高と相談しながら。
数日後。私は、ミサキさんと一緒に、彼女が推しているバンドの展覧会に行くことになった。会場には、多くのファンが集まっており、熱気に満ち溢れていた。
ミサキさんは、興奮した様子で、展示物を一つ一つ丁寧に見て回っている。その姿を見て、私は、なんだか嬉しくなった。
「やっぱり、来てよかった。ありがとうね」
ミサキさんは、そう言って、笑顔を見せた。
その笑顔を見て、私は、改めて、推し活の素晴らしさを実感した。
推し活は、お金がかかる趣味かもしれない。しかし、それ以上に、私たちに与えてくれるものは、大きい。
感動、興奮、友情、そして、生きる希望。
私は、これからも、推し活を続けるだろう。
そして、いつか、自分の推しを、胸を張って「私の推しです!」と言えるように、自分自身も、輝いていたい。
展覧会を後にして、私たちは、近くのカフェに入った。カフェラテを飲みながら、ミサキさんと、推しの話で盛り上がった。
「ねえ、今度、一緒にライブに行こうよ!」
ミサキさんは、そう言って、私を誘った。
「うん、行こう! 絶対行こう!」
私は、迷うことなく、そう答えた。
そして、その時、私の心の中に、小さな光が灯った。
推し活は、私を、一人ぼっちの孤独から救い出してくれた。そして、新しい出会いと、友情を、与えてくれた。
私は、推しに、そして、推し活を通して出会った全ての人々に、感謝したい。
ありがとう。
これからも、一緒に、推しを応援していこうね。
カフェを出て、私たちは、それぞれの家路についた。空には、夕焼けが広がっていた。
私は、空を見上げながら、深呼吸をした。
そして、心の中で、こう呟いた。
(明日も、頑張ろう)
2026年1月6日。私の日常は、今日も、変わらずに続いていく。
しかし、私の心は、少しだけ、軽くなった。
推し活と、預金残高。
その二つの間で、揺れ動きながら、私は、これからも、生きていく。
そして、いつか、理想の未来を、手に入れたい。
そのために、私は、今日も、一歩ずつ、前に進む。
空には、満月が輝いていた。
月明かりの下、私は、ゆっくりと、家路を急いだ。
そして、明日も、また、新しい一日が始まる。
推しと共に。
※このエッセイは、Togetterのまとめから着想を得て創作されたフィクションです。
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