📝 この記事のポイント
- 記録的な暖冬だと言われていた今年の冬も、年明け早々、ようやく冬らしい寒さが顔を出した。
- 北風が吹く夕方のオフィス街、僕はいつものように丸の内駅を目指して歩いていた。
- 起 – 憂鬱な月曜日と透明な傘 週明けの月曜日。
2026年1月6日。記録的な暖冬だと言われていた今年の冬も、年明け早々、ようやく冬らしい寒さが顔を出した。北風が吹く夕方のオフィス街、僕はいつものように丸の内駅を目指して歩いていた。
起 – 憂鬱な月曜日と透明な傘
週明けの月曜日。いつもより少しだけ重く感じる足取りは、きっと万有引力のせいではない。隣を歩く同僚の田中さんは、スマホの画面を睨みつけながら、なにやらぶつぶつと呟いている。「また炎上案件ですか?」と声をかけると、「いや、違うんだ。うちの部署の飲み会、全員参加必須だってさ…マジ勘弁」とげんなりした顔で答えた。
僕は田中さんの気持ちが痛いほどわかる。会社の飲み会ほど、現代社会の縮図のようなものはない。上司の武勇伝、同僚の愚痴、そして、誰も聞いていないような未来への展望。形式ばった会話が延々と続き、終電間際にようやく解放される。まるで、義務教育の延長線上にあるような、そんな感覚だ。
そんなことを考えていると、空からポツリ、ポツリと冷たい雫が落ちてきた。慌てて鞄から折りたたみ傘を取り出すと、それはコンビニで買った、どこにでもある透明なビニール傘だった。
透明な傘は、僕の憂鬱な気分をさらに加速させた。まるで、自分の感情が丸見えになっているような、そんな気がしたのだ。周囲を見渡すと、同じように透明な傘をさしている人がたくさんいる。無個性で、没個性。まるで、社会に溶け込むために用意された、お揃いの制服みたいだ。
承 – 匿名性と可視性のはざまで
家に帰り、SNSを開くと、タイムラインは様々な意見で溢れかえっていた。政治、経済、社会問題。匿名のアカウントから発信される、過激な言葉の数々。顔の見えない誰かが、一方的に正義を振りかざし、誰かを攻撃する。
僕自身も、SNSで自分の意見を発信する事がある。しかし、それはいつも、どこか遠慮がちで、曖昧な表現に終始してしまう。炎上を恐れ、誰かを傷つけることを恐れる。結局、僕の言葉は、透明な傘のように、誰の心にも響かない、無力なものにしかならない。
ふと、以前読んだ記事を思い出した。ある著名人が、LGBTQに関する質問に対し、「俺からしたら人類は全員一緒」と答えたという記事だ。その言葉は、一見すると突き放しているように見えるかもしれない。しかし、そこには、すべての人を受け入れる、深い愛情が込められているように感じた。
僕には、そんな言葉を紡ぐことはできない。僕は、自分の意見を表明することを恐れ、誰かの顔色を窺いながら生きている。そんな自分が、なんだか情けなく感じた。
転 – カフェでの出会いと新しい視点
週末、近所のカフェでコーヒーを飲んでいると、隣の席に座った若い女性二人の会話が聞こえてきた。
「ねえ、知ってる?あのインフルエンサー、また炎上してるらしいよ」
「えー、マジ?今度は何やらかしたの?」
「なんでも、ジェンダーに関する発言が差別的だって。本人はそんなつもりなかったみたいだけど」
二人の会話を聞きながら、僕は複雑な気持ちになった。SNSでの炎上は、日常茶飯事だ。しかし、その裏には、言葉の選び方一つで、誰かを深く傷つけてしまう可能性があるという現実がある。
「難しいよね。正しいこと言おうとすればするほど、誰かを傷つけちゃうことってあるじゃん」
そう呟いたのは、ショートカットの女性だった。彼女の言葉には、SNS世代特有の葛藤が滲み出ていた。
「でも、何も言わないのも違うと思うんだ。黙ってたら、結局、何も変わらないし」
ロングヘアの女性は、少しだけ声を大きくして言った。その言葉には、静かな決意が込められているように感じた。
二人の会話を聞きながら、僕は、自分の考えが少しずつ変わっていくのを感じた。正しいことを言うこと、誰かを傷つけないこと。そのどちらも大切だけど、それ以上に大切なのは、自分の言葉で、自分の考えを伝えることなのではないか。
透明な傘の下で、誰かの顔色を窺いながら生きるのではなく、自分の言葉で、自分の世界を切り開いていく。そんな生き方もあるのかもしれない。
結 – 2026年の雨上がりの空に
カフェを出ると、雨はすっかり上がっていた。空には、大きな虹がかかっていた。2026年の雨上がりの空は、どこまでも澄み切っていて、まるで、新しい時代の幕開けを告げているようだった。
僕は、深呼吸をして、空を見上げた。透明な傘は、もう必要ない。自分の言葉で、自分の世界を彩っていく。そんな未来が、きっと待っている。
僕は、自分の足で、ゆっくりと歩き始めた。行く先はまだ決まっていない。でも、もう迷うことはない。なぜなら、僕には、自分の言葉があるから。透明な傘は、もう必要ない。
きっと、この雨上がりの空のように、僕の世界も、いつか、澄み切った青空になるはずだ。
※このエッセイは、Togetterのまとめから着想を得て創作されたフィクションです。
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